表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/204

第十七章 失脚への道 (6)

 シュセイらは丞相に案内されて、大広間の傍にある控室に向かった。

 丞相が扉を叩いて部屋の中にいる侍女に向かって呼び掛けるが、いくら待っても返事はない。後ろで待つハクランが顔を曇らせ、今にも前に進み出しそうになる。彼を制止して、シュセイは丞相に訊ねた。


「丞相、本当にこちらの部屋でしょうか」

「はい、確かにこの部屋で間違いありません、入りましょう」


 丞相は振り返り、苛立ちを隠せない皆に向かって静かな声で告げた。


 ゆっくりと扉が開く。

 目に飛び込んだ部屋の様子に、皆は言葉を失った。


「これは、どういうことだ」


 丞相が声を震わせて駆け寄った先、ベッドの傍に侍女が横たわっている。ベッドの脚に両手を縛られ、猿轡を噛まされた侍女はぐったりとして動かない。

 ベッドの上にリョショウの姿はないが、乱れた布団からは確かにそこにいた痕跡が窺うことができる。

 部屋の様子から、皆に様々な不安と憶測が過る。


「リョショウ殿は、本当にここに居たのですか?」


 ハクランがベッドに駆け寄った。触れた布団は冷たいことから、リョショウが眠っていたとしても随分前だったと思われる。しかし部屋にリョショウの姿は見当たらず、状況から想像出来ることは決して良くないものだった。


「はい、確かにここに眠ってらっしゃいました。すぐに警護の者を呼んで捜索させます、皆様は広間にお戻りください、私は陛下にも報告してまいりますので」


 侍女を解き、丞相は振り返った。その声の力強さに、呆然とする皆の意識を呼び止める。

 皆が広間へと戻るのを見届けた丞相は、警護を手配して蔡王の元へと走った。


「シュセイ殿、どういうことでしょうか? リョショウ殿はどこへ?」


 ハクランが困惑した様子で訊ねる。口元に手を当てて、しばらく考え込んでいたシュセイは首を横に振った。


「やはり、昨夜連れ帰るべきでした。おそらく他の場所に移したのでしょう」

「他の場所とは? 無事なのでしょうか?」

「おそらく無事とは思いますが、あの状況からはリョショウ殿が自ら部屋を出て行った、あるいは何者かがリョショウ殿をさらった……様々な解釈が出来ます。そこが気掛かりですが……」

「では、早く探しに行きましょう」

「お待ちください、まずは東都の将を解放しましょう」


 シュセイは眉を顰めながらも、自信に満ちた表情で頷いた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ