第十六章 闇を照らす光 (12)
誰もが押し寄せる眠気と戦い始めた頃、ようやく宴は終わった。今にも閉じてしまいそうな目を擦りながら、蔡王が大きな欠伸をする。
「今宵は久しぶりに楽しく酒を飲むことができた。皆には心から感謝している、ゆっくりとやすんでくれ」
蔡王の言葉に東都都督らは深々と頭を下げた。すぐに顔を上げたハクランが何かを言おうとするのを察して、丞相が進み出た。
「東都殿、リョショウ殿は今夜はこちらにて休んでいただきましょう。先ほど様子を見て参りましたが、よくお休みになっておられます。体調が優れぬ様子も見受けられますが、こちらには医師が控えておりますので、何かあればすぐに対応できます。ご心配なさいませんよう」
「お気遣いありがとうございます。妻だけでなく、だらしない息子までも申し訳ない。今夜はよろしくお願いします」
「気になさいませんよう、当然のことをしたまでですから」
丞相は穏やかな笑みを浮かべた。
シュセイや北都都督らは宿舎を借りず、都督府の屋敷に宿泊することになった。
皆が寝静まったと思われた頃、ハクランは眠れずに縁側に出てきた。両手を挙げて伸び上がり、空を見上げるハクランは気配を感じて振り返る。
「ハクラン殿も眠れぬのですか?」
暗闇の中から柔らかな声とともに現れたのはシュセイだった。ほっとしたハクランは笑顔を見せた。
「ええ、酔いが覚めたら目が冴えてきました。それに、気になってしまって……」
「リョショウ殿のことですね、私もです。丞相殿にやられたかもしれません、無理にでも連れ帰るべきだったと少し後悔しているのですよ」
シュセイは至って穏やか話し方だが、神妙な表情で不安を隠せない。ハクランも抑えようとしていた不安が、込み上げてくるのを感じた。
「シュセイ殿、今からでも助けに……」
「いえ、すぐに危険が迫っているというわけではないと思います。奥様と同じ、大切な人質ですからね。北伐の件で、私たちの報告を妨害する盾にするつもりでしょう」
「妨害した後、真実を消しに掛かるのでは? 私たちも含めて……そうなれば真っ先にリョショウが危ないでしょう」
「ええ、体調の急変とこじ付けることもできますね。まずは明日の報告で丞相殿がどういう態度に出るか……ですね」
シュセイは星空を見上げて目を細めた。