第十六章 闇を照らす光 (6)
宴が盛り上がりを見せてきた頃、シュセイがすっと立ち上がった。酒に呑まれた様子も無く、固く口を結んだ引き締まった表情は宴席の中にいる誰よりも凛々しく感じられる。
シュセイはゆっくりと蔡王の座る壇の下へと進み出た。
しかし宴席にいる人々は彼に気付かず、酒を酌み交わしながら賑わっている。シュセイに気付いているのはリョショウとカレン、蔡王の隣に座っている王太子ギョクソウだけだった。
ギョクソウを見上げたシュセイは、深々と礼をした。宴を妨げることに赦しを請い、今から大事なことを話すことを告げるように。
その申し出を承諾するように、ギョクソウが頷く。それを確かめたシュセイは蔡王に向き直り、大きく息を吸い込んだ。
「陛下、今回の件について御報告を申し上げます。この場にお揃いの皆様にも是非とも聞いていただきたいので、何卒お許し願います」
広間全体に響き渡るしっかりとした低い声。一瞬にして皆の視線がシュセイへと向けられる。
蔡王の手にした杯に酒を注いでいた丞相は眉間に皺を寄せ、シュセイを見据えた。蔡王も笑顔を引き攣らせて、シュセイを見降ろす。邪魔をされたと言いたげに不快感を露わにした表情で。
「陛下、申し訳ありません。この場にて御報告をさせていただきたく……」
「シュセイよ、今話さねばならぬことか? 私は東都殿らの帰還を祝うためにこの席を設けたのだ、東都殿らに感謝の気持ちを伝えるために。それを蒸し返しては、せっかくの酒がまずくなるだけだ。カンエイの一件については明日改めて報告してもらう、それでは不満だと言いたいのか?」
シュセイの言葉を遮る蔡王の語気は強く、明らかな不満が込められている。蔡王の表情を窺うように見上げる宴席の人々にも、緊張感が漂い始めた。
「シュセイ殿、今でなくともよろしいでしょう。陛下の仰る通り、明日でも構わないでしょう」
心配した東都都督がシュセイの元へと歩み寄り、席に戻るよう促す。それでもシュセイは答えず、壇上の蔡王をまっすぐ見上げて口を開いた。
「申し訳ありません、陛下には感謝しております。しかし東都殿が無事に帰還したにも関わらず、東都で留守を預かっていたはずの彼の部下の姿も見当たりません。これはいったいどういうことでしょうか」
蔡王は顔を引き攣らせた。その隣りで丞相も表情を曇らせる。