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第十六章 闇を照らす光 (2)

 東都都督らを迎える東都の人々の表情は驚きと安堵に満ちていた。まさか生きていたとは思わなかったと言いたげに口を開けた人々は、馬上の東都都督とリョショウを見上げている。


「見てみろ、彼らの安堵の表情を。彼らのためにも、東都に蔓延る腐った輩は完全に取り除かねばならん。お前にもわかるだろう」


 東都都督は強く言い聞かせるような口調でリョショウに言った。その声には決意と謀った相手に対する怒りだけではなく、リョショウを奮い立たせようとする意思さえ感じ取れる。

 重く圧し掛かる父の思いに、リョショウは困惑しながらも頷いた。


 東都の城門を潜った一行は王城を目指して大通りを進む。いつしか歓声が湧き上がっている。

 リョショウは父から離れ、後ろの方からついて歩くようになっていた。大通りの景色を眺めながら思う のは、リキと東都に逃れてきた時のこと。賑やかな通りを目にしたリキの目を輝かせる姿が、つい先日のことのように思い出される。

 しかし父の言葉は重くリョショウの胸に圧し掛かっている。東都の街に戻った自分は、やがて別人になってしまうのではないかという恐怖が頭から離れない。


「どうした?まだ気分が優れないのか?」


 遅れて歩くリョショウに並んで、ハクランが尋ねた。

 リョショウが父親に何やらきつく言われる姿を見ていたハクランは、昨日リョショウの体調が優れなかったのは自分にも責任があると気にしていた。


「いや、そんなことない」

「そうか?顔色が良くないように見えたが、俺の気のせいか?」

「ああ、気のせいだろう。お前こそ、キョロキョロし過ぎだ、東都がそんなに珍しいか?」


 心配そうに顔を覗き込むハクランに言い返し、リョショウは笑みを浮かべる。意表を突く言葉に、ハクランはニヤッと笑った。


 やがて、東都の都督府に着いた一行を守衛らが阻んだ。

 リョショウがリキと来た時と同じ光景。槍を手にして断固とした態度の守衛らに、険しい表情の東都都督が悠々と歩み寄る。

 口を開こうとした瞬間、東都都督に向かって慌ただしく駆け寄る人影が映った。


「これは失礼を致しました。東都殿、よくぞ御無事でお戻りになられました。お待ち申し上げたおりました」


 東都都督の足元に跪き、深く頭を垂れた人物は丞相だった。




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