第十六章 闇を照らす光 (1)
日が昇って間もない青く澄んだ空の下、北都の都督府から東都に向けて旅立つ一団、北都都督とソシュクとハクランら北都軍の一部と東都都督とリョショウ、西都の宰相シュセイと部下たちだ。
留守を預かることになった北都都督の息子シュウイと北都の軍勢らが見守る中、東都都督らは東都へと帰って行く。
「リョショウ殿はどこか調子が悪いようですが……大丈夫なのですか? 無理をして帰らなくとも体調が良くなってから、遅れて帰ってもよかったでしょう」
重そうな足を引き摺るリョショウの姿を見て、シュウイの母が心配そうに言った。隣りで聞いていたシュウイは、ふっと笑う。
「大丈夫ですよ、二日酔いでしょう。昨夜はハクランにかなり飲まされて、潰されていたようですから」
「そう……辛そうね。リョショウ殿はあまりお酒が得意ではなかったのね、東都殿はとても強いのに不思議ね」
「知りませんでしたか?」
穏やかな会話を交わすシュウイと母の視線の先で、リョショウが躓いた。驚いた母が声を上げると同時に、ハクランがリョショウを支える。ほっとした表情の母とシュウイが無事を祈る中、一行は東都へと向かって旅立っていった。
北都の街を出てからかなりの距離を歩いた。東都まではあと半分ほどの距離だという頃、日が傾いた西の空の色は朱に染まっている。
北都と東都を結ぶ町に着いた一行は、今夜過ごすことになる宿に入った。それぞれが部屋へと入り寛ぎ始めていた中、まだだるそうに体を引き摺るリョショウを父が引き留めた。
「リョショウ、いつまでも情けない格好をするな、しっかりしないか」
リョショウが振り返ると、父が険しい表情で見据えている。これから東都へ戻り、すべての闇を暴こうという大事な時。二日酔いぐらいでくたばっている息子をたしなめる低い声。
「明日には東都に入るが大丈夫か、コウリョウがいない今、お前が私の後継者なのだからしっかりしなくてどうするか、酒ぐらいで醜態を晒すな」
「はい、すみません」
力なく答えるリョショウに眉をひそめて、東都都督は部屋へと入っていった。
「後継者、か……」
リョショウは大きく息を吐いた。何気に口に出した言葉に、これまで考えもしなかった重みと不安を感じる。自分は兄の代わりなのかと。
息苦しさに耐えられず、リョショウは羽織を脱ぎながら部屋へと入った。