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第十五章 北都奪還 (11)

 北都にいたシュセイの部下が、西都のイキョウの元に北都奪還の知らせを届けた。イキョウはすぐにサイシの屋敷へと使者を向かわせ、吉報を聞いたサイシとリキは抱き合って喜んだ。


「よかった……ありがとう、姉さん、私は明日北都に帰ります、早く戻ってみんなに会いたい」


 リキは顔を綻ばせて言ったが、サイシは寂しげな顔をする。


「早く会いたい気持ちはわかるけど、もう少し落ち着いてからでもいいんじゃない? まだ混乱していて何が起こるか分からないわ、急いで帰ることないと思うの」

「ありがとう、姉さんと別れるのは寂しいけど早く皆に会いたいの、危険を冒して私を逃がしてくれた兄さんにも謝らなくちゃいけないし」


 涙を浮かべて縋るサイシに言い聞かせるように、リキは穏やかな声で言った。


「本当に寂しいし、それにあなたを二度と危険な目に遭わせたくないの。せめて、私の子に一目会ってほしい。それからでも遅くはないでしょう?」

「姉さん、ありがとう。ごめんなさい、私は帰らなきゃ……姉さんに子どもが生まれたら必ず、すぐに会いに駆け付けるわ、絶対に約束する」


 まっすぐに見つめるリキの目に、揺るぎない意志を感じたサイシは黙って頷いた。リキを止めることはできないと悟って。


 しかし、サイシは不安を拭えずにいた。

 まだ何か起こるかもしれないという直感、それは嫌な予感に似た感覚だった。急いで北都に戻ることが、リキにとって本当に幸せなこととは思えなかったのだ。北都に戻って落ち着いた生活を取り戻したとして、リキに待っているのは女としての幸せを歩む道だろう。


 東都から西都へ来たリキとリョショウの姿を、ずっと傍で見ていたサイシは二人の気持ちに気付いていた。かつてサイシが北都にいた頃、リキとハクランとの気持ちも見てきたから知っている。

 だからこそ、余計に不安を感じずにはいられない。


 西都に来てからのリキの気持ちの変化、それぞれの気持ちを考えるとサイシの胸は痛んだ。

 ただ不安はそればかりではなかった。リキが北都の都督の娘として、彼女の意志とは異なる道を歩まなければならない可能性もあるのだから。


 不安を胸に抱きながらも、サイシはリキとともに北都奪還を喜び合った。これからのリキの幸せを願いながら。




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