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第十五章 北都奪還 (7)

 二人の視線が交わった瞬間、ようやく二人は互いに譲れない気持ちを秘めていることに気づいた。


「そうか……お前はリキを見てたのか」


 ハクランは悔しさを滲ませながらも笑みを浮かべた。

 次の瞬間、リョショウに飛び掛かる。掴み掛かろうとするハクランの腕を取り、リョショウは地面にねじ伏せた。固められまいと激しく抵抗するハクランの力は、リョショウが思っていた以上だった。互いの力がぶつかり合うとともに、もどかしさが絡み合う。


「お前に比べれば僅かな時間だが、俺は見てきた、リキがどんな気持ちだったのかわかったつもりだ」

「お前などに、リキがわかるものか!」


 押さえ込もうとするリョショウを一気に跳ね飛ばし、ハクランが再び間合いを詰める。

 これまで決して表に出すことのなかった気持ちが、二人の中で一気に溢れ出す。抑えきれなくなった気持ちをぶつけるように、ハクランはリョショウに殴りかかった。

 ひらりとかわしたリョショウはハクランの背後へと回ると、両脇に腕を差し入れて取り押さえた。ハクランは強く体を捩じり、腕を振り解こうと抵抗する。強烈な力に重心が揺らぎ、今にも振り払われそうになるのを押さえ込みながらリョショウは言った。


「もう、やめよう。お前とは争いたくない」


 ハクランは顔を強張らせ、僅かに動きを止めた。

 押さえ込んでいた腕の力を抜いた瞬間、体を捻ったハクランの肘がリョショウの鳩尾を勢いよく突き上げた。リョショウが苦痛に顔を歪めて崩れ落ちる。

 地面にうずくまって肩を震わせるリョショウを見降ろしたハクランは、勝ち誇ったような優越を含んだ表情。


「綺麗事を言うな、言いたいことがあるなら包み隠さず、はっきりと言ってしまえ」


 息も絶え絶えに見上げるリョショウと目が合うと、ふっと笑って手を伸ばした。差し伸べられた手を掴むことが出来ず朦朧とするリョショウを抱き起こし、壁に持たせかけて座らせる。


「俺はずっとリキの傍にいた、小さいときからずっと……お前よりもリキを知っているつもりだ」


 先ほどまでの荒々しさは感じられない穏やかな声。弱々しく息を吐くリョショウの隣りに腰を下ろし、空を仰いだハクランの表情は緩やかだが寂しげにも見える。ハクランはくしゃりと髪を掻き上げた。




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