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第十四章 重なり合う心 (8)

 まだ夜も明けきらない空の下、西都の都督府の広場がざわめいていた。数十人ほど兵士たちの前にはイキョウとシュセイが立っている。シュセイの隣りには、リョショウとリキが緊張した顔で、広場に集まる兵士たちを見つめていた。


「では、イキョウ殿、行ってまいります。状況は随時お知らせいたします」

「シュセイ、くれぐれもよろしく頼む。皆も、十分気をつけるように」


 シュセイが深々と頭を下げると、イキョウはその肩に手を載せて力強く言い聞かせた。さらに集まった兵士たちにも声を掛け、皆の無事を祈った。


「シュセイ殿、どうかよろしくお願いいたします」


 サイシがシュセイに歩み寄る。そのあとに続いて、リキも深く礼をする。

 リキは西都に残ることになり、シュセイとリョショウが北都の奪還へと向かうことになった。シュセイは燕の軍と示し合わせて、カンエイのいる北都都督府へと一気に攻め込むという。一緒に北都に連れて行ってほしいと頼むリキに、シュセイは北都が落ち着いてから戻りなさいと諭したのだ。


「心配いりません、必ず成功させて、いい知らせを持って帰ります」


 と、シュセイは二人に微笑んだ。

 ほっとしたリキは振り返り、リョショウの手を取った。


「気をつけて、無事に戻ってくるのを待っているから」

「ありがとう、必ず戻る。お前を迎えに来るために」


 力強く握り締めるリキの手を握り返して、リョショウは大きく頷く。自信と逞しさに溢れるリョショウを見上げて、リキも頷き返した。


 シュセイとリョショウらの出発を見送り、屋敷に戻ったリキとサイシは中庭を眺めることのできる部屋で朝食を摂り始めた。ようやく日が昇り、照らされた庭の木々を見つめながら。


「リキ、あのね……私、子供ができたの」


 恥ずかしそう言って、サイシは腹部に手を触れた。触れた腹部の膨らみは、まだ見た目には分からない。おそらく分かって間もないのだろう。

 驚いてリキが身を乗り出すと、サイシは手を放して腹部を見せた。


「私、西都に嫁いで本当に良かったと思ってるの。みんな優しい人ばかりだし、とても穏やかな街だし……ここに来て、本当に幸せだと毎日感じてる」

「私も姉さんには、ここが本当に合っていると思う。赤ちゃん、楽しみだね」


 にこりと微笑んだリキに、サイシは喜びに満ちた笑顔を返した。





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