第十四章 重なり合う心 (7)
まもなくシュセイは部下を連れて燕へ向かった。燕にいる東都都督とハクランたちに直接会い、無事を確認したあと古い友人を訊ねて北都を奪還するための協力を要請した。
シュセイは晴々した顔で西都へ帰ってくると、都督府に皆を集めて報告とこれからのことを丁寧に話した。
「西都では大した軍は用意できませんので、燕の友人が全面的に協力してくれることを約束してくれました。まさか燕から攻め込まれるとは、カンエイも予想は出来ないでしょう。おそらく大きな衝突にはならずに済むはずです」
シュセイの自信に満ちた表情が、都督府に集まった皆を安堵させる。黙って一通り聞き終えたイキョウが満足げに頷く。
「シュセイ、御苦労だった。しかし、北都を奪還した後はどうするつもりかな? 敵は思ってた以上に手強いようだが」
「はい、北都さえ奪還すれば後は何とかなるでしょう……と、私は思っているのですがどうでしょう?」
くすっと笑って答えるシュセイを見て、安心したようにイキョウも微笑み返した。二人の会話を見ていた者たちは皆、シュセイに任せていたら絶対に上手くいくと信じて疑うことはない。必ず北都を取り戻すことができると固く決意するとともに、士気が高まっていくのを誰もが感じていた。
リキを期待を抱きながら、シュセイの情報収集の能力に感動するばかりだった。
北都の奪還に向けて、着々と準備が進んでいく。
しかし待ち望んでいたはずなのに、その日が近付くにつれてリキとリョショウの不安は増していく。それでも二人は絶対に不安を口には出すことなく、皆と共に準備に追われる毎日を過ごしていた。来るべき、その時に向けて。
「リキ、北都を取り戻したら……一緒に東都に行かないか」
力強い温もりの中、リキはリョショウの声に顔を上げた。窓から差し込む月明かりに露わになるリョショウの表情は、優しさに満ちている。
「もちろん、私も東都の敵を倒しに行くつもりよ」
「ありがとう、心強いよ。それと、すべてが終わったら俺と……東都で暮らさないか?」
「東都で?」
「俺と一緒になってほしいんだ、北都殿にはきちんと挨拶をしたい」
「リョショウ、ありがとう」
頬を寄せるリキをリョショウが大きく包み込む。二人は確かな未来を描きながら、眠りに就いた。