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第十四章 重なり合う心 (2)

 リョショウにもたれて、リキは目を閉じた。髪を撫でつける風が通り過ぎ、穏やかな川の流れが耳に心地よく届いてくる。頬に感じる温もりとゆっくりと刻まれる鼓動に、すべてを委ねてしまいたくなる。このまま西都にずっと居ることができたらとリキは思い始めていた。

 ひんやりとした乾いた風が、二人の傍を駆け抜けていく。


「寒くないか?」

「ありがとう、大丈夫」

「戻ろうか、今夜はお前にも来てほしいとシュセイ殿が言っていた」


 ぐっと肩を抱き寄せるリョショウの体に、リキはしがみつく。


「わかった。でも……もう少し、このままでもいい?」


 リョショウは答えるように黙って両腕を回して、ゆったりとリキの髪を撫でた。

 離れたくないという気持ちは、リョショウも同じだった。毎晩シュセイと現状について話しているが、最近は進展がない。最初は怪我や何も出来ない自分自身にもどかしささえ感じていたが、今では進展がないことに安心すら感じているのも事実だった。ここ数日は、シュセイが何も話し出さないことを祈るようになっていたほど。

 リキに申し訳ないと思いながらも、気持ちを抑えることができなくなっていた。


「ごめん、俺ももう少しここにいたい」

「私も……ごめんなさい、私もわかってるけど……皆が待ってる、早く帰らなきゃいけないとわかってるのに……私は、ここにいたいと思ってしまうの」


 同時に、二人の胸が大きく高鳴った。これまでお互いの気持ちを確かめ合ったことは無かったが、今ようやく確信した。リョショウの言った『ここ』というのは江の河原ではなく西都のことだと、リキにもはっきりと分かったのだから。北都から東都へ、東都から西都へ逃れてきた間に恐る恐る寄り添い合おうとしていた二人の気持ちが、ついに重なり合った瞬間だった。


 水面に映っていた朱の色は既に消え、闇に染まりつつある景色の中に抱き合う二人が溶け込んでいく。冷やりとした風が、二人を包み込みながら緩やかに吹き抜ける。

 リキとリョショウは互いの鼓動を感じながら、いつまでも寄り添い合った。




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