第十三章 穏やかな夢 (7)
「信じて貰えないかもしれませんが、こう見えても私もあなたぐらいの年頃にはよく無茶をしていたんですよ。何度父に怒鳴られていたことか」
と言って、シュセイは肩を竦める。茶目っけのある表情に、リョショウはぷっと笑った。
「すみません、シュセイ殿が怒られるようなことをされるなんて信じられませんよ。私も父にはよく怒られました。兄は優等生だったので比較もされましたし……そう、男なら酒ぐらい飲めるようになれと何度も言われましたよ」
父と兄のことを口にしたリョショウの表情に、僅かな陰りを感じたシュセイは口を噤んで頷いた。
「事態を長引かせるつもりはありませんが、今回の件には大きな影が潜んでいると思われます。それを見極めたうえで慎重に行動しなければ、我々の身にも危険が及ぶということをご理解ください。その間に、あなたの怪我を完治させねばなりませんしね」
「心配には及びません。ヤツを倒すすべが見つかったなら、私はすぐにでも動きますよ。こんな怪我など気にしては居られませんから」
シュセイは、リョショウを包み込むような優しい顔をしている。
「あなたのそういうところが心配なんですよ。ところで図々しいついでにお願いがあるのですが、聞いていただけませんか?」
「私に出来ることであれば、仰ってください」
とリョショウは答えたものの、シュセイが何を言い出すのかと内心構えずにはいられない。
「ここに居る間、こうして私と話す機会を設けていただけませんか。今後の事以外にももっと話をしたいのです。こんな言い方は失礼でしょうが、私に父親をいうものを体験させてはもらえませんか」
それはリョショウにとって驚かされる言葉だったが、穏やかな笑みを浮かべながら発せられた言葉は温かい。
父とは考え方も何もかもが全く違うシュセイが、自分に何を求めているのだろう。リョショウは不思議に思いながらも、自分自身がシュセイから何かを得られるかもしれないと考えた。
「こんな私ですが、いろんな事を教えていただけると嬉しいです」
リョショウが返すと、シュセイは嬉しそうに顔を綻ばせた。