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あぶはちとらず改稿版 ~全員片思いのすれ違い群像劇~  作者: 井氷鹿
第3章 Grasp all , Lose all.2 1995年 夏 亘編

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27.草刈る山路が笛の音4 Every step you take my eyes follow.

「着替えないの?」

 そう言うと、紅緒はクッションを胸に抱えて床に寝そべり、リモコンでテレビを点けた。

 リモコンを受け取りカウチに座ったら、紅緒が絶妙な角度でこっちに背を向けている。

 というか脚バタバタするからキュロットの中の脚が丸見えなんだが。

 視線をそらしたら、崇直もクッションを持って紅緒の横に寝そべりやがった。

「着替えても良いんだが、スーツしかないんだよこれが」

 崇直まで同じ様に脚を曲げてバタつかせる。

 あれ、スポーツしてると脚って綺麗なんだな。

 膝を曲げた拍子に、パンツの裾が上がり崇直のふくらはぎが見えた。

「着替え置いてないの? しょっちゅう来てんじゃなかったの」

 そう思うよな、紅緒だって。

 そこまで頻繁じゃないが、着替え置いてけって言っても置いて行かなかったんだよな。 

「崇直、服貸すぞ」

「いいよ、帰るときまでこの格好で」

 バスケットボールすると下半身が鍛えられるって言うが、二人ともヒップが上向いて形が良いよなぁ。

 ちょっと自分のヒップラインが気になってきたぞ。

 帰国するまではクリケットとサッカーをしてはいたけど、バスケに比べてどうなんだろう。

 乗馬も下半身と体幹が鍛えられてるはずなんだけどな。

「司法なんとかって研修所、見に行きたいよねわーちゃん」

 は? 見に行きたいって、え? あ、崇直の勤務先か。

「最高裁判所の機関なんだろ。なんかすごく厳つい感じだよな」

「いいけど、中は入れないぞ」

「なんで」

「どうして」

「さぁ。最高裁判所の付属機関だからじゃね。機密性高いんだよ」 

 国会議員でも事前予約しないと入れないそうだ。

 司法修習生って、なんかパブリックスクールの寮生並みに囲われてんだな。

「駅からバスだし、周りに何もねーぞ」

 それでも、そんな厳しいところ見てみたいよ。

「入れないが、門から少しは中が見れるかもな」

「おお、見たい見たい」

 そりゃ見たいよな、紅緒だって。

 カウチから降りて、膝をつき崇直の隣に体を伸ばす。

「僕も見れるなら見たい」

 崇直が迷惑そうに眉根を寄せる。

「なぁ、いいだろ付いて行っても」

「しゃーないな。外からだけだぞ」    


 ということで、早速埼玉は和光市まで司法研修所を見に行くことになった。

 崇直の支度を待って、マンションを出る。

 やっぱり身だしなみ整えたら、オトコマエじゃないか崇直は。

 スーツも似合ってるし、ネクタイ外してても様になってる。

 先輩も若い頃ってこんなんだったのかな。

 イヤイヤ、あの人はお洒落だから服装はこだわってたはずだからこんなもんじゃないだろう。

 腹が立つが。

「なんだよ、人のことジロジロ見て」

「あ、平川先輩も新人の頃は崇直みたいだったのかなって」

「あー、それ分かる。トールちゃん、似てんのよね崇ちゃんというより直ちゃんに」

 え、先輩が直樹に似てる?

「崇ちゃんみたいに愛嬌振りまくわけじゃないけど、女性や子供に優しいところとか」

 そう言えばそうだ。

「相手に気を持たせない程度にな」

 と崇直まで。

「そうそう」

 崇直は愛想よく笑顔で相手をするのに対し、直樹は笑顔は作らなかったなそう言えば。


「池袋で時間潰していく? わーちゃんサンシャイン行けるよ」

 紅緒が路線図を見ながら訊いてきた。

「お、水族館。いいね、行こうぜ崇直」

 崇直の指示待ちで、僕は財布を片手に券売機へ向かう。

「新宿乗り換え、の池袋」

「うーっす」

 崇直の指示で切符を購入っと。

 三人分の金額を入れて、ポチッとな。

 ハイ、どーぞ。と切符を渡し、いざ改札へ。

 昔はここで待ち合わせて高校へ通ったよな。

 僕だけ別の高校だったけど。

 わずか二駅。

 宝物みたいな時間だったなぁ。 

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