※3(肇side)
「肇、聞いたよ。正体知られたんだってね?
君が身バレするなんてらしくないね」
それも消していないんだってね?
そう言って目の前に座るのはこの『アテル』の店長であり、俺が所属している殺し屋グループの長の椛さん。
「店の前に落としてた鍵を届けてくれたんだ。通報する素振りもなかったし、監視は続けているから問題ない」
俺はお店や彼女の前で使う『表の顔』とは違い、『素の顔』で彼と話す。
「ふーん、これまでは文様無用で消してきた肇が本当に珍しいね」
何、彼女に惚れたの?
そう彼は笑みを浮かべた。
そもそも自分は誰にもこのことを話していないはずなのに、どこから知ったのか。
この男は本当に侮れない男である。
椛と俺は同じ先生の元で学んだ弟子同士である。
彼は年齢不詳だが年上で、先生の1番弟子でもあるため俺の兄弟子にあたる。
普通は殺し屋同士が集まって仕事を受け持つようなことはないー。
しかし、彼が運営する殺し屋グループは皆同じ先生に殺しのスキルを教わった者がほとんどを占めているため先生教えの『兄弟同士争ってはならないよ』の言葉のもと今のところ問題なく運営が回っているのだ。
そもそも先生に拾われた子は孤児であったり、少し問題のある家系から出てきて拾われた子がほとんどで殺し屋業務の他にも生きる術を与えてくれた先生のことが大好きであり感謝の気持ちがあるため先生の教えを裏切るようなことはしないだろう。
先生は古くから殺し屋の事業を受け持っている一家の末裔なのだそう。
先生は独身のため弟子をとり事業を引き継がなければならなかったのだという。
もしくは事業を畳むという決断をしないといけなかったらしい。
そんな時孤児であり浮浪していた兄弟子を拾い、本人にも事情を確認した上で教育を施したのだとか。
その後も各地を周り浮浪孤児であったり、家に問題があり周りに頼れないような子を見つけては拾って同じように質問をし同じように教育を施していったらしい。
俺は家を出た後あてもなく、生きていくため裏の社会に足を踏みかけていた頃に師匠と椛さんに拾ってもらった。
両親は子を道具としか思っていないような奴らで、日常の生活から親の決めた道をずっと歩かされてきた。
意にそぐわない行動をした場合は容赦なく、殴ったり蹴ったりしてくる。
テレビで見たお菓子作りをやってみたいと思い、両親に内緒で始めたのだがこれがバレた時はものすごく怒られ1ヶ月ほど消えない痣ができてしまった。
今考えれば暴力であり、周りを頼ればよかったのだが…
当時は親の言うことが全てであったため、そこまで頭が回らなかった。
そしてあれは俺が14歳になる時のことだったかー。
何か両親の逆鱗に触れたのか、もしくは両親の機嫌が悪かったのか…
いつも以上に酷い暴力を受け、ついに殺される…とまで思ってしまった時のことである。
「きゃああああっ!!!」
俺は無意識のうちに手を挙げた母の手首を折っていた。
そして唖然とする父を横目に彼の持っていたナイフを奪い彼女の喉元を一突き、刺していた。
「あ…ああああああ…あああ…こっ、殺さないでくれ」
父の情けない声が耳に入るも、俺の手は既に父の心臓の上にあった。
「あっけないものだなぁ…」
俺は両親の動かなくなる姿を目にし、家をあとにしたー。




