第3話:ボンドの形成
そいつは首を傾げ、大きな瞳で俺を見上げてまばたきをした。明らかに混乱している。
俺は躊躇した。
俺が言ったことを、一言でも理解しているのだろうか。
その時、ずっと前に師匠が言っていた言葉が頭の中で繋がった。
「スピリットは『意図』を理解する。言葉は二の次だ。正直に話せ。そうすれば伝わる」
俺はゆっくりと息を吐き、もっと近づけるようにしゃがみ込んだ。
「俺は別の領域……違う世界から来たんだ」と俺は言った。
スピリットは動かずにいた。
「あの世界は、この島よりもずっと広いんだ」
話しているうちに、俺の瞳が輝き出した。ただ説明しているだけじゃなかった。ずっと夢見てきた素晴らしい場所を想像していたからだ。
「雲を突き抜ける山々。時よりも古い森。何千もの種族が共に暮らす都市」
俺は一度言葉を切り、そして続けた。
「砂に埋もれた古代の遺跡。不死者たちが静寂の中に座す禁断の峰。星明かりのように輝く川。何千年も隠されてきた秘密」
言葉が口から漏れるたび、鮮明で馴染み深い光景が脳裏に浮かんできた。
地平線の先まで続く終わりのない道。
霧に包まれた浮遊する峰。
長い間、誰も触れていない場所。
「小さい頃から、そのすべてを見たいと思っていた」俺は静かに言った。「ただ眺めるだけじゃない。そこを歩いて、隠されたものを見つけ出したいんだ」
俺の声が和らいだ。
「でも、一人じゃできない。一緒に歩いてくれる誰かが必要なんだ。道を分かち合える誰かが」
俺はそいつの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「俺と一緒に来てくれないか? この島を出て、全部一緒に見て回ろう。二人とも見たことがないような絶景をさ」
そいつの触角がぴくりと動いた。
何かが変わった。それが肌で感じられた。
ああ、もし誰かがこの光景を外から見ていたら、きっと俺のことを狂っていると思うだろう。他の奴らより強そうにも見えないイモムシのようなスピリットに、こんな風に話しかけているのだから。
だが、理由は単純だった。
これがスピリット界における、俺の最初で最後のチャンスなんだ。
もしガーディアンなしでここを去れば、扉は永遠に閉ざされてしまう。それに、もし次があったとしても、どこに出るかなんて分かりゃしない。火山かもしれないし、虚無の中、あるいは怪物だらけの海の真ん中かもしれない。
この島は平和だが、スピリット界そのものはそうじゃない。
今、このスピリットが俺の唯一の選択肢だった。
それに正直なところ、最強のガーディアンなんて必要なかった。
最初の一歩を踏み出すのを助けてくれる相手がいれば、それでいいんだ。
スピリットは黙ってカイを見つめていた。
産まれた日から、そいつの人生は単純なものだった。
光る果実を食べる。
温かい草の中で眠る。
光の加減が良い時に遊ぶ。
時には他の奴らと遊び、時には走り回り、時にはさっきみたいに、繁殖期で攻撃的になった大きな奴に追いかけられたりもした。
だが、この島を出たことは一度もなかった。
他のことなんて、何も知らなかった。
けれど今、何かが芽生えた。
恐怖ではない。
空腹でもない。
好奇心だ。
スピリットは頭を上げ、浮遊島の端の方を眺めた。そこには雲が絶え間なく流れ、空は深く、未知に満ちているように感じられた。
それから、そいつは俺を振り返った。
喉の奥から小さく高い鳴き声が漏れ、そいつは頷いた。
たった一度。
ゆっくりと、明確に。
こらえきれずに、俺の顔に笑みが広がった。
「よかった」俺はそっと言った。「俺の名前はカイ・シェンだ。俺と一緒に来てくれるなら……今話した景色の全部を、絶対に見せてやる。一緒に、な」
そいつは「ちぃ……」と短く鳴いて、もう一度頷いた。
……
十分後、ようやく準備が整った。
待つのに飽きたらしい小さなスピリットは、いつの間にかどこかへ這っていき、再び気づいた時には何かをこちらへ引きずってきていた。
銀色の木から落ちた、小さな半透明の果実だ。
そいつは光る果実を、俺の足元にぽとんと落とした。
果実は小さく丸く、水晶のように透き通り、内側では淡い青から柔らかなピンクへと、かすかな光が移ろっていた。
俺はそれを拾い上げた。
スピリットは触角を振りながら、誇らしげに俺を見上げている。
俺は静かに笑った。「ありがとう」
果実を食べると、口の中で柔らかく弾け、甘く冷たい感覚が広がった。一口ごとに穏やかな温かさが体中に浸透し、深く沈み込んでいく。今まで食べた中で一番美味しかった。あまりにも豊潤で純粋な味に、俺は一瞬目を閉じ、その一滴一滴を堪能した。
その時の俺は、別の何かが変化していることに気づいていなかった。
一口食べるごとに、俺の魂はより鮮明に、より明るく、より確かな形へと成長していた。
これは俺の本当の体ではない。
ただの魂だ。
スピリット界に入れるのは魂だけだ。この場所の法則によって、魂が形を成すことができる。俺のような弱い魂でも形を保てるが、普通はぼんやりとしていて、かろうじて形を留めている程度だ。
知らなかったことだが、その果実は魂に直接栄養を与えていた。
もし知っていたら、もっと食べていただろう。もっと食べなかったことを、将来泣きながら後悔する羽目になるかもしれない。
╥﹏╥
スピリットは、俺の突然の後悔を不思議そうにするかのように、触角を揺らしながらじっと見守っていた。
それから、俺は立ち上がった。
地面に描かれた魔法陣を見下ろす。師匠に教わった通り、正確に描き終えたものだ。
間違いはない。線の欠落もない。
俺は中央を指さした。
スピリットは怖がることなく、その中に這い入っていった。
俺はゆっくりと息を吸い、呪文を唱え始めた。
「アルナ・ティエル。
ソラ・ヴェンカイ。
エリス・モール、エリス・バウンド。
シャエ・ルン、シャエン・コーラ」
空気が震えた。
魔法陣が輝きを放つ。
地面から光がゆっくりと立ち昇り、霧のように渦巻いてから内側へと折り重なっていく。ルーン文字が縮まり、一点の輝きへと凝縮された。
そして光が前へと滑り出した。
スピリットの中へ。
ちょうど、そいつの頭の上へと。
同時に、俺の手の甲に小さな円が浮かび上がり、白く発光した。細い光の線が俺たちを繋ぎ、そしてその輝きは消えた。
魔法陣も光の線も、跡形もなく消え去った。
そして、絆が形成された。
「さあ、行きましょう、カイ……」
小さく、女の子のような、子供っぽい声が俺の頭の中に静かに響いた。




