第2話:スピリット界
目を開けると、温かな陽光が俺を迎えた。
俺は、澄み渡った黄金色の空の下、広大な草原に立っていた。
背の高い草が穏やかに揺れ、内側から柔らかな光を放つ無数の色鮮やかな花々が点在している。銀色の葉を持つ古木が野原を囲み、その枝には輝く果実が重そうに実っていた。
平和な場所だ。
平和すぎて、少し不気味なほどに。
師匠から聞かされていたスピリット界の恐ろしい話とは、似ても似つかない。果てしない虚無。荒れ狂う火山。怪物が潜む海。
それとは対照的に、ここは安全に感じられた。
俺の周りには、少なくとも手のひらほどの大きさはある、巨大なイモムシのような虫たちが数十、いや、数百匹も這い回っていた。
俺が現れた瞬間、彼らは凍り付いた。
触角がぴくりと動く。
そして、彼らは散り散りになった。草の中に潜り込むもの。花や葉の陰に滑り込むもの。
俺はまばたきをした。
もっと強力な何かを期待していたんだ。
龍とか。
不死鳥とか。
虎のスピリットとか。
あるいは、古代の戦士とか。
この虫たちは紛れもなく可愛いが……本当にこれなのか?
近くで見ると、彼らの体は想像しうるあらゆる色に輝いていた。エメラルドグリーン。サファイアブルー。燃えるような真紅。陽だまりの黄金。柔らかなラベンダー。鮮やかなオレンジ。
長く優雅な触角が上向きに反り、先端は丸く膨らんでいる。
長いまつげに縁取られた大きな瞳は、どこか優しい表情を湛えていた。
ほとんどの者は、光る草の中で静かに休んでいる。
数匹は、お互いを追いかけ合ったり、花に覆われた小さな斜面を転がり落ちたりして、だらだらと遊んでいる。
銀色の木にぶら下がっている果実をかじっている者もいた。
俺は立ち止まり、一匹がゆっくりと咀嚼する様子を眺めた。
その果実は小さく半透明で、まるで水晶の中に閉じ込められた星影の雫のようだった。噛みしめるたびに小さな火花がこぼれ落ち、蛍のように舞い上がってから空気の中に溶けていく。
妙な考えが頭をよぎった。
スピリットが……果実を食べるのか?
俺は眉をひそめた。
師匠はいつも、スピリットには肉体的な欲求はないと言っていた。
空腹もなければ、栄養摂取も必要ないと。
なら、なぜこいつらは食べているんだ?
静かだが重い混乱が、俺の中に居座った。
何かがおかしいのだろうか。
ここは本当にスピリット界なのだろうか。
それとも、全く別の場所にたどり着いてしまったのか。
俺は自分の手を見つめた。まだ小さく、滑らかだ。
確かめるために、近くの池まで歩いた。
水面は磨かれたガラスのように澄み渡り、完全に静止している。周囲には柔らかく光る百合の花が咲いていた。
俺は身を乗り出した。
自分の反射がこちらを見返していた。白い髪。赤い瞳。滑らかな肌。毛皮もなければ、牙もない。
何も変わっていなかった。
俺はまだ、俺のままだ。
その事実が不安を深める。
なら、ここは一体どこなんだ?
俺は池のほとりに座り込み、膝を抱え、何の答えも返してくれない自分の反射をじっと見つめた。
胸の奥に、不安の混じった失望感がじわじわと広がっていく。
この虫のスピリットたちは、俺の言葉を理解できるのだろうか?
誰か一匹でも、俺のガーディアンになることを承諾してくれるだろうか?
師匠の警告が頭の中で響く。
誇り高いスピリット。
危険な存在。
だが、俺が降り立ったのは、ほとんど無害に思える場所だった。
しばらくすると、勇敢な数匹が再び近寄ってきて、草の間から様子を窺い始めた。
俺は軽く手を振った。
「やあ」
彼らは足を止め、不思議そうに首を傾げた。
そして再び散り散りになった。
俺はゆっくりと息を吐き出し、拳を握りしめて背筋を伸ばした。
いや。
ただ待って期待しているだけじゃダメだ。
チャンスは一度しかない。
もし誰にも受け入れられなかったら、この旅は本格的に始まる前に終わってしまう。
俺は池に背を向け、胸を締め付ける孤独感を決意で押さえつけながら、本格的にこの島を探索し始めた。
ここにはもっと何かがあるはずだ。
もっと強い何か。
特別な何かが。
まだ諦めるわけにはいかない。
探索を深めるうちに、時間は過ぎ去っていった。
気づけば一時間が経過していた。
場所は美しいが、そこは果てしない空の海に浮かぶただの島だった。
島の端から遥か下を見下ろすと、巨大な影のような形が雲の中を泳いでいた。歯がぎらつき、瞳は飢えで燃えている。
あの深淵に比べれば、この島はまさに天国だった。
そして、ここにいる虫以外の生物は、俺だけのようだった。
つまり、俺の選択肢はこのイモムシのような虫たちだけということか?
俺は重いため息をつき、銀色の木の一本の根元に座り、冷たい幹に背中を預けた。
どうすればいい。
光る葉を見上げていると、頭の中で何かが切り替わった。
記憶が蘇る。
今の人生じゃない。
もう一つの人生だ。
あの瞬間をはっきりと覚えている。すべてが奔流のように戻ってきた日。自分が本当はこの世界の住人ではないと悟った日。
別の世界。
違う空。違うルール。
この人生の前に送っていた人生。
だからこそ、ここのすべてに違和感があるんだ。
この世界では、あらゆる生物が「おまけ」を持って産まれてくる。特別な何かを。
だが、俺には何もない。
なぜなら、その必要がなかったからだ。
俺は人間だ。
今、前世の記憶が戻っても、体は変わらない。毛皮もなければ、尻尾も耳もない。チートもない。
ただの脆い肉体だ。
だが、それは怖くない。
なぜなら、前世の俺は作家だったからだ。
広大なファンタジーの世界の物語を紡いでいた。異なる種族が衝突し、協力し合う物語。修行、霊獣、古代の遺跡、禁断の領域。
物語の中には親密な要素もあった。欲望は人生の一部だった。
だが、それが核心だったことは一度もない。
中心にあったのは、探検だ。
発見を待つ秘境。時に埋もれた失われた遺跡。未知の世界に足を踏み入れる高揚感。
そして今、俺はかつて書いていたような世界の中にいる。
獣の氏族。
修行と魔法の道。
スピリット・ガーディアン。
そのすべてを見たいと思わないわけがないだろう?
雲の上で不死者が瞑想する峰々。
神話の生物で満たされた森。
数えきれないほどの種族が混沌とした調和の中で共に暮らす都市。
だが、そのすべてを成し遂げるには、力が必要だ。
そして力を得るには、スピリット・ガーディアンが必要なんだ。
視線を草地に散らばる虫たちに戻した。
その時、動きに気づいた。
一匹のスピリットが目立っていた。
他の者よりも小さく、体は真珠のような白に柔らかなピンクの節があり、液体水晶のように滑らかで光沢がある。
額からは一本の小さな角が緩やかに生えていた。丸く磨かれており、他の誰も持っていないものだ。
それは、色がくすんで肥大化した、もっと大きな虫のスピリットに追いかけられていた。
なぜ追われているのかは分からなかったが、俺は何も考えずに立ち上がり、彼らの方へ真っ直ぐ歩いていった。
大きな方のスピリットは巨大だったが、それでも俺の手のひらほどのサイズだ。
俺は足の側面でそいつを軽く蹴り飛ばした。
丸い体は草の上を転がっていった。ようやく止まると、そいつは振り返り、怒りで目を燃やし、触角を広げて威嚇の音を立てた。
そして、俺の大きさに気づいた。
圧倒的な体格差だ。
攻撃性は瞬時にそいつの体から抜け落ちた。一瞬凍り付いた後、身を低くしてよちよちと逃げ出し、背の高い草の中に消えていった。
俺は小さな方のスピリットに向き直った。
光沢のある大きな瞳が俺を見上げ、柔らかな虹色の光を反射していた。長いまつげが、恐怖と好奇心の間でゆっくりとまばたきをした。
近くで見ると、それはさらに可愛かった。
俺はしゃがみ込み、微笑みかけた。
「なあ……俺のスピリット・ガーディアンになってくれないか?」




