7章サブ話⑤: 『緊急通達』
主人公は、ギルド本部に送られた報告書の中で「情報提供者A」として扱われていた。
本部の役人たちは、提出されたデータの出所と提供者の年齢の乖離にだけ引っかかっている。
【緊急通達】
港町支部宛 第二種調査団派遣決定通知
発信元: ギルド本部
緊急対策室受信先: 港町支部
支部長 ロナン・ヴェスタ殿
件名:
異常事態対応 第二種調査団の早期派遣について
日付: 第3サイクル1500年 2月15日
緊急度: ★★★★☆(最高に次ぐ)
機密レベル: 第██級(██年以来)
通達事項
貴支部より連続して提出された報告書(2月11日付、12日付、13日付、14日付)を本部にて精査した結果、港町周辺における異常事態は前例のない規模と性質を有すると判断した。
これに伴い、通常手続きを省略し、第二種調査団の早期派遣を決定する。
派遣概要
調査団構成:
∙団長:エルネスト・クラウス(古代遺跡専門魔導師)
∙副団長:リディア・フォン・エクス(古代魔法陣解析官)
∙測定官:マルコ・ディミトリ(マナ測定技術主任)
∙護衛:2名
到着予定日: 2月23日(本通達発行より8日後)
調査期間: 当面は無期限とする
特記事項: 現地での判断権は調査団長に一任する。本部への報告義務は継続するが、緊急時の決定に本部承認は不要とする。
異常事態の評価
貴支部から提出された一連の報告書は、以下の点において通常の自然現象では説明不可能と判断された。
1. 継続的な環境異常
∙海水温の季節外れの上昇(3度以上)
∙漁獲量の急激な減少(前年比██%以下)
∙特定方向(東)への異常なマナ濃度勾配
∙説明不可能な発光現象(最長██時間連続)
2. 全方向マナ揺らぎの発生
2月13日に報告された「全方向でのマナ揺らぎ」は、通常のダンジョン影響では発生し得ない。
本部の見解では、これは第██サイクル遺構の不安定化に起因する可能性が高い。
ただし、確証はない。
3. 集団的異常感覚
報告書に記載された「説明できないが確かに異常を感じる」という集団的証言は、第██級災害相当の前兆と類似している。
住民の避難準備を視野に入れよ。
情報提供者Aについて
報告書に繰り返し登場する「情報提供者A(9歳)」について、本部は以下の点を評価した。
評価点:
∙データの系統性(時系列記録、方向別測定)
∙観測の継続性(3週間以上)
∙証言の裏付け(漁師、商人の証言と一致)
∙独自技術(測定器v2の██████構造)
懸念点:
∙年齢による信頼性の問題
∙データの出所が不明
∙動機の不明瞭性
∙██████との関連性(要調査)
本部指示:
調査団到着後、情報提供者Aへの直接聴取を実施せよ。
ただし、以下の点に留意すること:
1.過度な期待や依存は避けること
2.あくまで「一情報源」として扱うこと
3.██████の可能性を念頭に置くこと
4.必要に応じて██████措置を検討
貴支部への指示事項
即時対応が必要な事項
1.住民への情報統制
∙パニックを避けるため、「調査団派遣」の事実のみ公表
∙「前例なき異常事態」という表現は使用禁止
∙「安全確認のための専門家派遣」と説明せよ
∙██████に関する情報は完全機密
2.情報提供者Aの監視
∙調査団到着まで、行動を把握すること
∙危険な行動を制限すること(ただし強制は避ける)
∙父親(商人バルト)を通じた間接的な管理を推奨
∙██日間隔での状況報告
3.追加データの収集
∙発光現象の時間記録継続
∙マナ濃度の定期測定継続
∙住民証言の追加収集
∙██方向への観測強化
調査団到着後の対応
1.全面的な協力体制
∙調査団の指示に従うこと
∙必要な装備、人員、情報の提供
∙緊急時の避難経路確保
∙██████施設への立入許可
2.情報の一元化
∙すべての報告は調査団経由で本部へ
∙支部独自の判断による行動は原則禁止
∙██時間以内の速報体制維持
3.機密保持
∙調査内容の詳細は住民に公開しないこと
∙特に「古代██████」に関する情報は最高機密扱い
∙情報提供者Aの身元は██████指定
本部の見解
港町で発生している事態は、第██サイクル崩壊時の記録に類似する点が複数存在する。
具体的には:
∙広域マナ分布の異常
∙██████遺構の予期せぬ再起動
∙環境への継続的影響
最悪のシナリオとして、古代██████の完全崩壊による第██級災害を想定している。
この場合、港町全域の避難が必要となる可能性がある。
ただし、現時点では確証はない。
調査団による現地確認を最優先とする。
補足事項
情報提供者Aのデータについて
本部の専門家による精査の結果、提供されたデータは説明不可能な精度を有しており、以下の可能性を検討している:
1.██████遺物の使用
2.██████系統の能力覚醒
3.第██サイクル技術の再現
調査団は、この点についても調査を実施する。
「測定器v2」について
報告書に記載された「独自開発の測定器」は、現行技術を██年分超越している可能性がある。
調査団には、技術的評価と██████████を指示している。
最後に
貴支部の迅速かつ的確な報告に感謝する。
ただし、事態は予断を許さない。
調査団到着までの8日間、いかなる事態にも対応できる準備を整えておくこと。
特に、情報提供者Aの動向については、██時間体制で監視せよ。
万が一、調査団到着前に事態が急変した場合は、住民の安全を最優先とし、即座に避難指示を出すこと。
本部は貴支部を全面的に支援する。
ただし、██████の場合は支部ごと██████する可能性があることを理解せよ。
ギルド本部 緊急対策室長アルフレッド・ヴァン・ローエン【公印】
【未解決】
∙情報提供者Aの正体(名前:██████、性別:██、保護者:確認済)
∙測定器v2の技術的詳細(██████構造、再現性:██)
∙古代██████の正確な位置と状態
∙事態の進行速度(臨界到達:██日後?)
∙なぜ今、██年周期現象が発生したのか
∙第██サイクルとの関連性
【本部内部メモ】(機密)
FROM: 副室長 マーカス・ヘイル
TO: 室長 アルフレッド・ヴァン・ローエン
DATE: 2月15日 23:47
アルフ、
通達は送った。だが、正直に言う。
俺は怖い。
「情報提供者A」
9歳の子供が、なぜあそこまでできる?
測定器v2は、我々が10年かけて開発中の次世代型に酷似している。
記録の精度は、ベテラン観測官を超えている。
発光パターンの分析は、古代遺跡の専門家でも困難なレベルだ。
これが「子供一人」で可能なのか?
本部の連中は三つの仮説を立てている:
1. 遺物を使っている
2. 能力が覚醒した
3. 第2サイクル技術を再現している
だが、どれも本質を外している気がする。
俺が一番怖いのは、「第四の可能性」だ。
つまり、
あの子が「触れてはいけない何か」に触れてしまったら
世界は、また壊れる。
前回(300年前の大崩壊)のように。
頼む、調査団が間に合ってくれ。
そして、あの子が何も知らない「ただの天才」であってくれ。
—— マーカス
【ギルド本部 緊急対策室 内部記録】(抜粋)
日時: 2月15日 19:23参加者: 室長アルフレッド、副室長マーカス、技術主任カレン
カレン:「測定器v2の技術評価、完了しました。結論——再現不可能です」
マーカス:「……は?」
カレン:「記号の配置、間隔、増幅制御、すべて理論上は正しい。だが、『なぜそうなるのか』が説明できない」
アルフレッド:「つまり?」
カレン:「あの子は『理論』ではなく『直感』で作っている。魔法陣を、呼吸するように」
(5秒間の沈黙)
マーカス:「それじゃあ、あの子は第██サイクルの——」
カレン:「可能性としては、██████████または██████████」
アルフレッド:「……記録から、今の部分を削除しろ」
(記録終了)
この通達は、港町支部の金庫に厳重に保管された。
支部長ロナンは、三度読み返した。
特に、黒塗りの部分を。
そして、窓の外——東の方角を見た。
そこには、静かに、白く光る何かがあった。
ロナンは知らない。
その光が、何を意味するのかを。
世界も、まだ知らない。
主人公は、自作の測定器が技術的に再現不可能と評価された事実を知らない。
結果として、港町には本部から専門の調査団が派遣されることになった。
ただ、その決定が何を招くのかは分からない。
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