7章サブ話④: 『緊急報告書 第14号』
主人公は、ギルド支部に新たな観測データを持ち込んでいた。
支部長代理は、その情報の精度と提供者の年齢が乖離している点にだけ引っかかっている。
緊急報告書 第14号
緊急 / 最優先 / 環境異常港町ギルド支部
↓
本部緊急対策室
第3サイクル暦1500年 14日目 19:47
報告者: ロナン・ヴァルト(支部長代理)
【状況】
全方位的マナ濃度変動。
港町東方海域を起点とし、全域へ波及。
住民の自主的外出規制。
商業活動は停止。
【データ提供者に関する—矛盾】
情報提供者A(9歳・男児)。
父親バルト・フェルナー(商人ギルド登録No.4721)同伴。
—ここに、説明のつかない何かがある。
データの質は、我々が受領したいかなる観測記録をも上回る。
∙3方向別マナ濃度測定(時系列)
∙発光現象の持続時間変化(分単位)
∙漁師10名以上の証言(日付・時刻付き)
だが、提供者は9歳だ。
【観測データ】
マナ濃度変動
|方角|12日 |13日 |14日 |
|--|----|----|----|
|東 |████|████|████|
|南 |██░░|███░|████|
|西 |░░░░|██░░|███░|
|北 |░░░░|██░░|███░|
——異常である。
東方を起点とした同心円状拡散。3日以内に全域包含の可能性。
発光持続時間
10日: 5分 → 15分 → 25分
11日: 18分 → 40分
12日: 40分 → 60分(休止なし)
13日: 65分 → 85分
14日: 6時間連続(7:00-13:00)
——制御を失っている。
【証言】
商人バルト・フェルナー:
「街を見てほしい。店は半分閉まっている。漁船は1隻しか出ていない。
みんな、何かを感じている。
説明はできない。
だが、確かに。
息子のデータは、その『何か』を数字にしただけだ」
—住民の行動変容は、測定データより先に起きている。
なぜだ。
何が、足りない。
【判断】
私は、この報告書を書きながら、自分を疑っている。
9歳の子供の証言を、本部に上げようとしている。
データは正しい。
父親が保証している。
住民の行動が裏付けている。
だが。
提供者は9歳だ。
もし、年齢で却下すれば、我々は見落とす。
もし、信じて誤れば、私の判断が問われる。
——矛盾している。
データは正しい。だが提供者は子供だ。
データは正しい。だが提供者は——
【要請】
調査団の早期派遣。
(当初予定: 1ヶ月後 → 要請: 1週間以内)
古代施設専門家の同行。
マナ測定器の追加配備。
現地対応の限界を認める。
【未解決】
∙なぜ9歳が、これを
∙「測定器」の正体(自作?)
∙東方海域の
∙マナ濃度上昇の
∙住民が感じている
——これ以上は、
【所見】
私は、この報告が正気であることを願う。
だが。
正気では説明できない何かが、この港町で起きている。
子供を信じるか。常識を信じるか。
——もう、いい。
本部が判断しろ。
私には、分からない。
署名: ロナン・ヴァルト港町ギルド支部長代理認証: [判読不能]
【割り込み通信 20:15】
情報提供者A(9歳)。
明日も観測を継続する意向。
——止める権限も、理由も、ない。
あの子は、もう、何かに選ばれている。
[本部返信: 待機中]
[住民避難: ██████]
[次回報告: ██████]
主人公は、翌日の観測継続を伝えてギルドをあとにした。
結果として、本部に送られた報告への回答はまだ届いていない。
ただ、その数字が何を示しているのかは分からない。




