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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
境界線の観測者 ―身分なき少女と、許可深度を超過した少年の2週間―
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【第3講:セラ先生の世界講座】代償は罰じゃありません

レイ

「先生、さっきから黒板に描いてるそれ……本気ですか?」


セラ

「うん。視覚的補助だよ。料金所に見えるように、陰影もつけてみた」


レイ

「いや、描き込みの気合の入れどころが違いますよ。代償って、そんな……小銭を払うみたいな話じゃないでしょ」


セラ

「え、でも実態はそうだよ。みんな気づかないうちに引き落とされてるだけ。便利なんだから、少しくらい引かれても困らないでしょ?」

副題:アクセス料金の話をしましょう


パチ、パチ、パチ。


「……また?」


気がつくと、また講座空間にいた。


さっきまで宿の部屋で、ノートに魔法陣の配置パターンを書き込んでいたはずなのに。


「では、第3講を始めます」


セラが教壇に立っている。


ちびキャラのまま、指示棒を持って。


「え、ちょっと待って! さっき代償って言ったよね!?」


「拍手」


「……はい」


俺は諦めてパチパチと手を叩く。


セラが満足そうに頷く。


目がまたしいたけになっている。


「代償の話って、重くない? あの、第5章とか第6章の……」


「質問は後で」


指示棒がピシッと黒板を叩く。


「……またこのパターン」


俺は小さく呟く。


セラがチョークを取り、黒板に大きく文字を書く。


【代償 = 罰】


「……」


俺はその文字を見つめる。


確かに、第5章、第6章の時は、そう思っていた。


魔法を使うたびに、何かを削られている感覚。


痛みと、喪失感と、それでも使わなきゃいけない絶望。


「……まあ、そうでしょ?」


俺は小さく呟く。


「使うたびに削られてたし」


セラがじーっと俺を見る。


「……怖っ」


セラが黒板の前に立つ。


指示棒を振り上げる。


「違います」


ピシッ。


指示棒が黒板を叩く。


「代償は罰ではありません」


「……え?」


「罰ではなく——」


セラが黒板に新しい文字を書く。


【代償 = アクセス料金】


「……は?」


俺は思わず声を上げる。


セラが指示棒で俺を指す。


「質問は後で」


「待って、さっきと違う! さっきは代償って言ったのに!」


「質問は後で」


指示棒がもう一度、黒板を叩く。


「……理不尽すぎない?」


セラが黒板に簡単な図を描く。


左側に「世界の深い機能」、右側に「人間」。


その間に「料金所」のマークを描く。


妙にリアルな描き込み。


「なんでそこだけ本気なの!?」


「視覚的補助です」


真顔。


「……またか」


「世界の深い機能にアクセスするには、料金が必要です」


セラが図を指す。


「魔法って課金制だったの!?」


俺は思わず叫ぶ。


「……概念的に」


セラが真顔で答える。


「その概念的に、もう3回目だからね!?」


「質問は——」


「後で、分かった!」


俺は両手を上げる。


セラが満足そうに頷く。


「では、比喩を使います」


セラが黒板に追記する。


【代償 = サブスクの月額料金】


「……サブスク?」


「魔法を使うたびに、世界の有料プランにアクセスしていたのです」


セラが指示棒を振る。


「月額じゃなくて、使ったぶんだけ請求が来るタイプ?」


「近いです」


セラが頷く。


「じゃあAPI利用料とかも?」


「比喩としては正確です」


セラが黒板に追記する。


楽しそうに。


【代償 = API利用料】

【代償 = ガチャ石】

【代償 = スタミナ消費】


「なんか楽しそうだけど!?」


「……」


指示棒がピシッと鳴る。


「……全部課金システムじゃん!」


「そうです」


セラが即答する。


「俺の人生、ソシャゲだったのかよ……」


「では、説明します」


セラが指示棒で黒板を叩く。


「君が学んだ魔法——世界で当たり前に使われている魔法は、管理者用APIです」


セラが図に追記する。


【Admin Magic】

・高権限

・即時反映

・代償(料金)固定


「管理者用……って、俺が習った普通の魔法が?」


「そうです」


セラが頷く。


「世界の深い層に直接アクセスし、即座に結果を得る魔法です」


セラが俺を見る。


「だから、毎回同じ量の代償が請求されていました」


「……だから勝手に持っていかれてたのか」


「月額課金ではなく、従量課金です」


セラが黒板に追記する。


【使った分だけ請求】


「……めっちゃ高いプランじゃん」


「解約できないやつじゃん!」


「管理者権限なので」


セラが即答する。


「それ悪質じゃない!?」


「では、質問です」


セラが指示棒を振る。


「なぜ、払わされていたのでしょうか?」


「……え?」


「君は、払いたくて払っていたのですか?」


セラが俺を見る。


「そんなわけない! あれは勝手に引き落とされてた!」


「そうです」


セラが頷く。


「では、なぜ?」


「……」


俺は黙り込む。


セラが黒板に新しい文字を書く。


【人間が本来触れない層】


「Admin Magicは、人間が直接使うべき魔法ではありません」


「……どういうこと?」


「例えるなら——」


セラが指示棒を振る。


「スマホの開発者モードを、普通のユーザーが使っているようなものです」


「開発者モード……?」


「システムの深い部分に触れられるが、危険も大きい」


セラが俺を見る。


「だから、世界は使いすぎ防止装置を仕掛けていました」


「……それが代償?」


「そうです」


セラが黒板に追記する。


【代償 = 使いすぎ防止装置】


「スマホの使用制限みたいな?」


「概念的に」


セラが真顔で答える。


「またか……」


「そして」


セラが黒板に追記する。


【エルフの魔法 = Admin Magicの上位版】

【料金:さらに高額】


「君が第5章、第6章で学んだエルフの魔法は、Admin Magicの中でも特に高権限でした」


「……だからあんなに苦しかったのか」


「上位プランを、無理やり契約させられていたのです」


セラが俺を見る。


「あの時、あんなに苦しかったのは……」


俺は呟く。


「勝手に高額プラン使わされてたからか」


「……ひどい話だな」


セラが静かに頷く。


「では、次の質問です」


セラが指示棒で黒板を叩く。


「第7章以降、君は代償を払っていません。なぜでしょう?」


「……それが一番知りたいんだけど」


「答えは簡単です」


セラが黒板に新しい文字を書く。


【Human Magic / True Magic】

・低権限

・段階的

・料金不要


「……え、ズルじゃん」


「正規ルートです」


セラが即答する。


「正規ルートなのに料金いらないの?」


「君が今使っているのは、人間用の魔法です」


セラが図を指す。


「開発者モードではなく、通常のアプリを使っているイメージです」


「……あ、なるほど」


「通常のアプリには、課金要素がありません」


セラが俺を見る。


「だから、代償が請求されないのです」


「じゃあ、前の僕は……」


「有料プランを無理やり使わされていました」


セラが黒板を指す。


「本来、人間が触れるべきではない高権限機能に、強制的にアクセスしていた」


「だから、料金(代償)を払わされていた……」


「その通りです」


セラが微笑む。


「ちょっと待って」


俺は手を挙げる。


「セラは? セラも代償払ってるの?」


セラが一瞬、動きを止める。


「……私は」


「管理者権限を君に譲渡しました」


セラが静かに答える。


「だから、私自身は代償を払っていません」


「でも……」


セラが黒板に追記する。


【セラフィナの役割:アクセス料金の肩代わり(親和性バッファ)】


「君の中に残る、過去の負債を、私の力で抑え込んでいます」


「負債……?」


「Admin Magicで支払った代償のログです」


セラが俺を見る。


「それが、君の右手に刻まれています」


「……」


俺は右手を見る。


「私の力が君を守っている限り、その古傷は痛みません」


「でも、もし私たちの親和性が下がれば——」


セラが指示棒を置く。


「代償の痛みが、再発するかもしれません」


「……」


「だから、私は君の隣にいます」


セラが微笑む。


「料金を肩代わりし続けるために」


「でもさ」


俺は手を挙げる。


「それって、弱くない? 人間用って、低権限って書いてあるし」


セラがじーっと俺を見る。


「……怖っ」


「質問の意図を確認します」


セラが指示棒を振る。


「低権限 = 弱い、という認識ですね?」


「……そうでしょ?」


「違います」


ピシッ。


指示棒が黒板を叩く。


「低権限 = 安全、です」


「……」


「高権限は、確かに強力です」


セラが黒板に追記する。


【高権限 = 強力だが危険】

【低権限 = 安全で持続可能】


Admin Magicの横に「1回100ポイント」。


True Magicの横に「無料」。


「でも、それって……」


「例えるなら」


セラが俺を遮る。


「無料のゲームと、1回100円のガチャ、どちらが長く遊べますか?」


「……無料」


「そうです」


セラが微笑む。


俺は黒板の「無料」を指差す。


「これ! これがいい!」


「今の君は、払わなくていい場所で遊んでいます」


「だから、長く、安定して、魔法を使えるのです」


「……」


俺は黙り込む。


確かに、第7章で魔法を使った時、痛みがなかった。


削られる感覚も、喪失感もなかった。


ただ、軽くて、楽しかった。


「7章で測定器を作った時、痛みはありましたか?」


セラが俺を見る。


「なかった……ああ、だから!」


「無料プランだからです」


「払わなくていい場所……」


「そうです」


セラが頷く。


「君は今、料金を払わずに済む方法を学んでいます」


「では、復唱」


セラが指示棒を振る。


「……代償は罰じゃない」


「続けて」


「アクセス料金……」


「そして?」


「今の僕は、正規ルートにいる……」


「よろしい」


セラが満足そうに頷く。


「分かりましたか?」


「えっと……」


セラがじーっと俺を見る。


「分かりました!」


「では、拍手をお願いします」


「……はい」


パチパチ。


「本日の講座はこれで終了です。お疲れ様でした」


セラが微笑む。


目がしいたけになっている。


……


気がつくと、また宿の部屋に戻っていた。


ノートは机の上。


時間は一秒も経っていない。


「……」


俺はノートを見つめる。


代償は、罰じゃない。


アクセス料金。


今の僕は、払わなくていい場所にいる。


「……なんか、軽くなった気がする」


俺は小さく呟く。


第5章、第6章の時、魔法を使うのが怖かった。


削られる感覚が、喪失感が、いつも俺を追い詰めていた。


でも、今は違う。


払わなくていい。


使っても、減らない。


セラが、守ってくれている。


「だから、第7章はあんなに楽だったのか……」


俺は納得する。


あれは、ご都合主義じゃない。


正規ルートに移行したから。


人間用の魔法を使っているから。


セラの力で、古傷が抑え込まれているから。


「……そっか」


俺はノートを開く。


払わなくていい場所で、ちゃんと強くなる。


それが、今の僕のやり方。


「払わなくていいなら……」


俺はペンを取る。


「もっと色々、試せるかも」


次は、もっと色々なことができるかもしれない。


代償を気にせず、思いっきり試せる。


それが、人間用の魔法。


それが、True Magic。


「塔の中でも、きっと」


「……楽しみだな」


-----

【第3講・終】

-----

次回予告(?)


セラ「次回は、True Magicの本質について解説します」


レイ「True Magic? 人間用の魔法のこと?」


セラ「はい。あれは低権限ではありません」


レイ「……え?」


セラ「段階的に成長する魔法です」


レイ「段階的……?」


セラ「Admin Magicは、最初から完成形でした」


セラ「でもTrue Magicは、君が育てる魔法です」


レイ「……育てる?」


セラ「そして、最終的には——」


セラ「Admin Magicを超えます」


レイ「……それ、めっちゃ聞きたいんだけど」


セラ「では、次回もお楽しみに」


レイ

「……先生、もし俺と先生の親和性が下がったら、その『未払いの料金』が、一気に俺に来るってことですよね」


セラ

「そうかもね」


レイ

「そうかもって……それ、俺が破産するって言ってるようなもんじゃないですか」


セラ

「大丈夫だよ。私が隣にいるうちは、督促状も届かないから」


レイ

「……全然、大丈夫な気がしません」


(キーンコーンカーンコーン……)


セラ

「気になるなら、あとで見返せばいいよ」


レイ

「……はい」

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