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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
境界線の観測者 ―身分なき少女と、許可深度を超過した少年の2週間―
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【第7章 第9話】 水中の試練

理屈の上では、水の中にだって空気は溶けている。

ならば、魔法でそれを一箇所に集めることは可能なはずだ。

──主人公は、自身の仮説とセラフィナの信頼を背負い、未知の冷たさが支配する青い世界へと足を踏み入れた。

岩礁へ


朝、宿を出る。


空は快晴。波は穏やか。


「今日は絶好の実験日和だね」


測定器を背負いながら言う。


「……実験日和、ですか」


セラフィナが苦笑する。


「普通は、天気がいいとか、散歩日和とか言いますけど」


「だって、実験するんだから」


笑う。


「間違ってないでしょ?」


「……間違ってはいないですね」


セラフィナも笑う。


港を抜け、岩礁に向かう。


足元の岩は濡れている。


「滑らないように」


「分かってる」


慎重に歩く。


波が岩に当たり、しぶきが飛ぶ。


「ここなら、浅いね」


水面を覗き込む。


透明度が高い。海底まで見える。


「水深は……3メートルくらいかな」


「足は届きませんが、危険な深さではありません」


セラフィナが目を細めて東を見る。


「塔が、あの先にあるはずです」


「うん。約束したから」


測定器を取り出す。


起動。


光が灯る。


「……やっぱり、濃い」


測定器が明るく光る。


「昨日より、さらに強い」


水に入る


靴を脱ぐ。


足を水に浸す。


「……冷たい」


予想より冷たい。


「大丈夫ですか?」


「うん。慣れれば平気」


ゆっくり、膝まで入る。


水が冷たいが、我慢できる範囲。


「空気の魔法、試すね」


紙を取り出す。


魔法陣が描いてある。昨日、宿で完成させたもの。


「起動」


手をかざす。


魔法陣が光る。


中心から、淡い光が広がる。


「……来た」


顔の周りに、わずかな空気の流れを感じる。


「集まってる?」


「はい。見えませんが、確かに空気が集まってます」


セラフィナが観察する。


「でも、レイ……量が少ないです」


「……え?」


顔の周りの空気を確認する。


確かに、薄い。


「水中の酸素、思ったより少ないのかも」


「溶存酸素は限られてますから。これだと、数分しか持たないかもしれません」


「……そっか」


考える。


「じゃあ、もっと広い範囲から集めないと」


改良案


岩に戻る。


ノートを開く。


「『集める』の範囲を広げるには……」


図を描く。


考え込む。


「……レイ」


セラフィナが何かを思いつく。


「『集める』の記号、4つじゃなくて、8つにしてみては?」


「8つ?」


「はい。8方向から集めれば、量が増えます」


「……そうか!」


目を輝かせる。


「でも、配置が難しくない?」


「難しいです。でも、レイならできるはずです」


セラフィナが微笑む。


「昨日、二層円陣を成功させたじゃないですか」


「……そうだね」


頷く。


「やってみる」


再設計


新しい紙に魔法陣を描く。


中心に『マナ』。


内層に『集める』を8つ。


等間隔に配置。


「角度が重要だね」


定規は持ってきてない。


目測で調整する。


「ここと、ここ……」


慎重に配置する。


「外層は、『制御』『安定』『持続』」


昨日と同じ。


「……これで、どうかな」


セラフィナが覗き込む。


「……いいと思います」


「でも、ちょっと不安」


「大丈夫です。バランスは取れてます」


「……うん」


深呼吸する。


「じゃあ、試す」


二回目の試験


再び、水に入る。


膝まで浸かる。


新しい魔法陣を手に持つ。


「起動」


手をかざす。


光が灯る。


今度は、さっきより強い光。


「……お」


顔の周りに、明確な空気の流れ。


「すごい!」


「レイ、顔の周りに……空気の層ができてます」


セラフィナが驚く。


「本当に?」


目を閉じて確認する。


確かに、顔の周りに、薄い空気の層がある。


「これなら……いけるかも」


「でも、レイ。長時間は無理です。マナが続きません」


「……そうだね」


額に手を当てる。


すでに、疲労を感じる。


「数分が限界かな」


「それでも、十分です。短時間なら、水中で観察できます」


セラフィナが頷く。


潜水準備


魔法陣を防水の袋に入れる。


「これで、水に濡れても大丈夫」


「はい」


セラフィナが確認する。


「でも、深く潜らないでください」


「分かってる。3メートルまで」


「それと」


セラフィナが真剣な顔になる。


「もし、息苦しくなったら、すぐに浮上してください」


「うん。約束する」


頷く。


「……レイ」


「何?」


「無理しないでください」


「しないよ」


笑う。


「セラフィナが心配するから、私も慎重になれるって、昨日言ったでしょ」


「……はい」


セラフィナが微笑む。


「信じてます」


潜水


深呼吸する。


魔法陣を起動。


顔の周りに、空気の層が形成される。


「じゃあ、行ってくる」


水に潜る。


最初は、耳に水圧を感じる。


でも、すぐに慣れる。


視界は、思ったより明るい。


太陽の光が、水中まで届いている。


「……すごい」


口を開けても、水が入ってこない。


空気の層が、顔を覆っている。


「これ、本当に使えるんだ」


感動する。


海底の観察


ゆっくり、海底に向かう。


岩が見える。


その隙間に、魚が泳いでいる。


「綺麗……」


小さな魚の群れ。


鮮やかな青や黄色の魚が、岩の間を泳ぎ回る。


岩の表面には、海藻が生えている。


揺らめく緑の葉。


「これが、海底か」


初めて見る光景。


測定器を取り出す。


起動。


「……やっぱり」


測定器が、強く光る。


「マナが濃い」


周囲を見回す。


東の方向に、何かが見える。


巨大な影。


「あれが……塔?」


塔の外観


近づく。


巨大な石の構造物。


四角い形。


表面には、文字のような刻印。


「これが、沈黙の塔……」


手を伸ばす。


石に触れる。


冷たい。


でも、微かに震動している。


「……動いてる?」


刻印をよく見る。


幾何学的な模様。


「これ……記号?」


魔法陣の記号に似ている気がする。


「写しておきたい……」


測定器を近づける。


光が、さらに強くなる。


「マナが……すごい」


眩しくて、目を細める。


塔に近づくほど、測定器の光が強くなる。


「これは……」


異変


突然、測定器の光が揺らぐ。


「……え?」


光が、明滅を始める。


「何これ……」


測定器を見る。


光が、不規則に点滅している。


「壊れた?」


いや、違う。


「……マナが、揺れてる?」


周囲のマナが、波打っている。


測定器が、それを感知している。


波のように、強くなったり弱くなったりする。


「共振……してる?」


「これ、やばいんじゃ……」


緊急浮上


「戻らないと」


すぐに判断する。


塔から離れる。


上を向く。


水面が見える。


泳ぐ。


でも、息が苦しい。


「……あれ?」


空気の層が、薄くなっている。


「マナが……」


魔法陣の光が、弱まっている。


「持たない……」


必死に泳ぐ。


水面まで、あと少し。


「……っ」


息を止める。


最後の力で、水面に出る。


浮上


「はぁっ……はぁっ……」


大きく息を吸う。


空気が、肺に入る。


「……間に合った」


岩に掴まる。


「レイ!」


セラフィナが駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」


「……うん」


頷く。


「ギリギリだったけど」


「何があったんですか?」


「マナが……揺れてた」


測定器を見せる。


「測定器が、おかしくなった」


「揺れた……?」


セラフィナが測定器を見る。


「……これは」


「何?」


「レイ、これ……」


セラフィナが真剣な顔になる。


「塔が、不安定なんです」


帰路


岩礁を離れる。


服が濡れている。寒い。


「早く宿に戻りましょう」


「うん……」


歩きながら、考える。


測定器を見る。


まだ、わずかに明滅している。


「これ、ギルドに報告した方がいいんじゃない?」


「……はい」


セラフィナが頷く。


「でも、どう説明しますか?」


「……それは」


困る。


「子供が勝手に潜って、測定器が変だった、って言っても……」


「信じてもらえないかもしれません」


「……だよね」


ため息をつく。


宿に戻る


部屋に戻る。


着替える。


ノートを開く。


「記録しておこう」


鉛筆を取る。


『水中試験:成功。空気収集魔法(8方向版)は機能。ただし、持続時間は短い。塔周辺でマナの揺らぎを観測。測定器が明滅。原因不明。塔の不安定性を示唆?刻印を発見。魔法陣の記号に類似。要調査。』


書き終える。


「……どうしよう」


セラフィナが窓を見る。


「レイ、あれ」


「何?」


窓の外を見る。


港の方向。


何人かの人が、集まっている。


「何かあった?」


「……分かりません」


「行ってみよう」


港での騒ぎ


港に着く。


漁師たちが、集まっている。


「どうしたんですか?」


近くの漁師に尋ねる。


「ああ、坊主」


漁師が振り返る。


「大変なんだ。今朝、網が破れてた」


「網が?」


「ああ。しかも、一つじゃない。三つも」


「……三つも?」


「普通じゃないんだ」


漁師が困った顔をする。


「まるで、何かに引き裂かれたみたいに」


「引き裂かれた……」


「ああ。それに」


漁師が声を潜める。


「今朝、海が光ってたって話もある」


「光ってた?」


「ああ。東の沖で、青白い光が見えたって」


「……青白い光」


測定器を思い出す。


「それ、どの辺りですか?」


「東の沖。岩礁の先だ」


「……塔だ」


セラフィナが呟く。


「塔が、何か……」


不安


宿に戻る。


部屋で、二人は黙り込む。


「……セラフィナ」


「はい」


「塔が、壊れかけてるのかな」


「……昨日の本の通り、です」


セラフィナが窓を見る。


「異常なのは、確かです」


ノートを見る。


「私たちだけじゃ、どうにもできない」


「……はい」


「でも、ギルドに報告しても……」


「信じてもらえないかもしれません」


二人は、再び黙る。


「……明日」


「明日?」


「もう一度、塔を見に行こう」


「レイ、危険です」


「分かってる。でも、何が起きてるのか、確認しないと」


「……」


セラフィナが考える。


「……分かりました」


「本当に?」


「はい。でも、条件があります」


「条件?」


「浅い場所だけ。それと、異常を感じたらすぐに戻る」


「……うん」


頷く。


「約束する」



窓から、海を見る。


月が、海を照らしている。


「……また、光ってる」


遠くで、青白い光が点滅している。


「塔だね」


測定器を取り出す。


手元で、微かに反応している。


「やっぱり、何か起きてる」


ノートに記録。


『夜間、海で青白い光を再観測。測定器も反応。塔の活動が活発化?漁師の網が破損。海が光る目撃情報あり。明日、再調査予定。』


「……あの刻印」


ノートを見る。


魔法陣の記号と似ている気がする。


「明日、写してこよう」


「解読できるかも」


空気収集魔法の実地試験に成功するも、


塔周辺でマナの揺らぎを観測。


漁師の網が破損し、海で青白い光が目撃される——


塔の刻印に魔法陣との類似性を発見。


解読の可能性が、次の調査への期待を高める。

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第7章 第9話 完

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空気の層は確かに自分を守ったが、測定器が示した「マナの揺らぎ」は、塔が既に安定の限界を超えていることを告げていた。

網の破損、謎の光。静かだった海が、目に見える形で悲鳴を上げ始めている。


次に主人公は、崩れゆく均衡を止める鍵を求めて、あの“刻印”の解析へと挑む。


よろしければ、

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