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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
境界線の観測者 ―身分なき少女と、許可深度を超過した少年の2週間―
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【第7章 第4話】 見えてきた形

この世界の魔法は、思った以上に素直だ。

だからこそレイは、魔法陣という「可視化の仕組み」に強い興味を抱いた。

──それが、自らの手で世界のコードを書き換える一歩になるとも知らずに。

データの海


朝食が終わる。


昨日約束した通り、今日はデータ整理の日だ。


レイとセラフィナは客間に向かう。


テーブルの上にノートが三冊。


一冊目:マナ濃度の測定データ。

二冊目:漁獲量の記録。

三冊目:昨日、港で聞いた証言をまとめたもの。


「じゃあ、整理しよう」


レイが椅子に座る。


「はい」


セラフィナも座る。


「時系列で並べてみる」


レイがペンを取って、新しいページに表を描き始める。


```

時期は…


マナ濃度は…


漁獲量は…


証言は…

```


「去年の秋から漁獲量が減り始めてます」


セラフィナが二冊目を見る。


「マナ濃度は?」


「測定してないので、分かりませんが――」


「でも、ダンジョンは去年の夏に封印された」


レイが表に書き込む。


```

去年夏:ダンジョン封印

去年秋:漁獲量減少開始(証言)

今年春:マナ濃度上昇確認(測定)

```


「あ」


レイが手を止める。


「完全に連動してる」


「はい。封印の後も、マナは出続けてたんです」


セラフィナが頷く。


「封印したのは入口だけ。中のマナは、止まってない」


「因果関係、ありそうだ」


レイがペンを置く。


「でも、どうやってマナが魚を減らしてるんだろう」


「確率場が変わるんです」


「確率場?」


「はい。マナは、確率を操作する力です」


セラフィナがノートに図を描く。


「普通、光子が放出される確率は一定です」


「でも、マナを使うと?」


「その確率を変えられます」


「それが魔法?」


「はい。魔法は、確率操作です」


レイが身を乗り出す。


「じゃあ、マナ濃度が上がると、海の中の確率も変わる?」


「そうです。意図しない変化が、起きるかもしれません」


セラフィナが図を指す。


「例えば、プランクトンの増殖確率が下がるとか」


「あ!」


レイが手を叩く。


「それで餌が減って、魚も減る!」


ダンジョン → マナ放出 → 環境変化 → 餌減少 → 魚減少


「理屈が合ってる」


レイが笑う。


「セラフィナ、すごい」


「でも、理解したのはレイです」


二人が笑う。


実験の誘惑


「ねえ、セラフィナ」


レイが言う。


「マナ濃度って、どうやって測ってるの?」


「魔法陣です。簡易的なものですが」


「魔法陣?」


「はい。マナに反応して光る仕組みです」


セラフィナがノートに図を描く。


「こういう形で、マナを集めて、可視化します」


「へえ」


レイが見入る。


「これ、俺にも作れる?」


「……作れるかもしれません」


セラフィナが少し躊躇する。


「でも、難しいですよ」


「やってみたい」


「レイ……」


「だって、自分で測れたら、もっと色々分かるじゃん」


レイが目を輝かせる。


「今は三日に一回だけど、毎日測れたら、変化がもっと見えるかもしれない」


「それは、そうですが……」


セラフィナが困った顔をする。


「魔法陣は、失敗すると危ないです」


「どういう風に?」


「マナが暴走します。最悪、爆発とか」


「……爆発」


レイが少し引く。


「でも、小さい魔法陣なら、大丈夫じゃない?」


「小さくても、リスクはあります」


セラフィナが真面目な顔で言う。


「レイ、右手、まだ完全じゃないですよね」


「うん」


「だったら、魔法の制御も、不安定です」


「……そっか」


レイが頷く。


「でも」


少し考える。


「失敗しても大丈夫なように、外でやれば?」


「外?」


「うん。港の端っことか。誰もいないところ」


「……」


セラフィナが悩む。


「レイ、本当にやりたいんですか?」


「うん」


レイが笑う。


「だって、面白そうじゃん。自分で魔法陣作るの」


「……分かりました」


セラフィナが折れる。


「でも、条件があります」


「何?」


「私が見てる時だけ。絶対に一人でやらないこと」


「分かった」


「それと、小さい魔法陣から。いきなり複雑なのは禁止」


「了解」


レイが頷く。


「じゃあ、午後にやってみよう」


「……はい」


セラフィナが少し不安そうに笑う。


港の端で


午後。


レイとセラフィナは港の端に来た。


人気がない。風が強い。


「ここなら、大丈夫かな」


「はい。でも、本当に気をつけてください」


セラフィナがノートを開く。


「まず、基本の魔法陣を描きます」


地面に、チョークで円を描く。


「この円の中に、マナを集めます」


「どうやって?」


「意識を集中させて、周囲のマナを引き寄せます」


「意識?」


「はい。魔法は、意図です」


セラフィナが説明する。


「こうしたい、と思う。その意図が、確率を変える」


「なるほど」


レイが頷く。


「じゃあ、やってみる」


円の中心に手をかざす。


目を閉じる。


マナを、集める。


周囲から、引き寄せる。


集まれ。ここに。


「……」


何も起きない。


「あれ?」


目を開ける。


なんで?


「集中が足りません」


セラフィナが言う。


「もっと、明確に。『ここに集まれ』と」


「明確に……」


もう一度、手をかざす。


集まれ。ここに。マナ。


「……」


また、何も起きない。


「うーん」


レイが首を傾げる。


難しいな。なんでだろう。


「最初は、そういうものです」


セラフィナが笑う。


「もう一度、やってみてください」


「うん」


三度目。


集まれ。ここに。マナ。


もっと、はっきりと――


「……あ」


何か、感じる。


微かに、暖かい。


「あ、あれ?」


手のひらが、ほんの少し光る。


「おお!」


レイが驚く。


「できた!」


「すごいです、レイ!」


セラフィナも笑う。


「でも、まだ弱いです。もっと集中を」


「分かった」


レイが真面目な顔になる。


集まれ。もっと。


光が、少し強くなる。


「いいですね」


「うん、なんか、分かってきた」


レイが笑う。


「これ、楽しい」


「でも、調子に乗らないでください」


「分かってる」


集まれ。もっと。もっと。


光が、さらに強くなる。


「……レイ」


セラフィナの声が不安そうに響く。


「もう十分です。そろそろ止めて」


「え、でももうちょっと――」


もっと強く――


「レイ!」


セラフィナが声を上げる。


「止めてください!」


「あ、ごめん――」


レイが集中を切る。


瞬間。


光が弾ける。


「うわっ!」


小さな爆発。


レイが後ろに倒れる。


「レイ!」


セラフィナが駆け寄る。


「大丈夫ですか!」


「う、うん……」


レイが起き上がる。


「びっくりした……」


地面に、小さな焦げ跡。


「これが、暴走……」


「はい。マナを集めすぎました」


セラフィナが厳しい顔で言う。


「言ったでしょう、調子に乗らないでって」


「ごめん……」


レイが頭を下げる。


「でも、怪我はないです。よかった」


セラフィナが安心したように息を吐く。


「次は、もっと慎重に」


「うん。絶対」


レイが頷く。


「でも、これで分かった」


「何が?」


「魔法って、本当に確率操作なんだ」


レイが焦げ跡を見る。


「意図が強すぎると、暴走する。弱いと、何も起きない」


「そうです。バランスが大事です」


「難しいな」


「はい。だから、訓練が必要なんです」


二人が顔を見合わせる。


笑う。


「もう一回、やってもいい?」


「……今度は、もっと小さく」


「分かった」


小さな成功


四度目。


今度は、もっと慎重に。


集まれ。でも、ほどほどに。


手のひらが、ほんのり光る。


「いい感じです」


セラフィナが頷く。


「そのまま、維持してください」


「うん」


光が、安定する。


「……できた」


レイが笑う。


「これ、マナが集まってるんだ」


「はい。今、レイの手の周りに、マナが集中してます」


「すごい」


「でも、測定には、まだ足りません」


セラフィナがノートを見る。


「魔法陣を完成させないと」


「魔法陣?」


「はい。今は、ただ集めてるだけ。それを可視化するには、もっと複雑な構造が必要です」


「複雑……」


レイが考える。


「今日は、ここまでにしよう」


「え?」


「だって、もう結構疲れたでしょ」


セラフィナが笑う。


「はい……少し」


「じゃあ、続きは明日」


「分かりました」


二人が立ち上がる。


港の端。風が涼しい。


「でも、楽しかった」


レイが笑う。


「魔法、面白いね」


「レイ、本当に好きなんですね」


「うん。だって、こうやって仕組みが分かると、もっとやりたくなる」


「分かります」


セラフィナも笑う。


「私も、昔はそうでした」


「昔?」


「はい。魔法を、勉強してた時」


「……そっか」


レイが頷く。


「今は、使えないんだよね」


「はい。でも」


セラフィナが笑う。


「レイが実験してるの、見るの、楽しいです」


「ありがとう」


二人が歩き出す。


港を、戻る。


夕日が、海を染める。


夜の整理


夕食が終わる。


レイは自分の部屋で、ノートを開く。


今日の実験。


マナを集める。暴走。成功。


全部、記録する。


『魔法 = 確率操作』

『意図の強さ = マナの集中度』

『バランスが重要』


書きながら、思う。


これ、プログラムに似てる。


パラメータ調整して、動かして、エラーが出て、直す。


面白い。


ノックの音。


「はい」


ドアが開く。セラフィナだ。


「お休み前に、少しいいですか?」


「うん、どうぞ」


セラフィナが入ってくる。


「今日は、お疲れ様でした」


「ううん、楽しかったよ」


レイが笑う。


「爆発したけど」


「びっくりしました」


セラフィナも笑う。


「でも、怪我がなくて、本当によかったです」


「ごめん、心配かけて」


「いえ。でも、次はもっと慎重に」


「分かった」


レイが頷く。


「セラフィナ、ありがとう。見ててくれて」


「当然です。一人でやったら、危ないですから」


「うん」


セラフィナが椅子に座る。


「レイ、魔法、楽しいですか?」


「うん、すごく」


レイが笑う。


「仕組みが分かると、もっとやりたくなる」


「それ、いいことです」


「でも、危ないよね」


「はい。でも、だからこそ、面白いんです」


セラフィナが微笑む。


「危険を理解して、それでも挑戦する。それが、魔法使いです」


「魔法使い、か」


レイが窓を見る。


「俺も、なれるかな」


「なれます」


セラフィナが言う。


「レイなら、絶対に」


「……ありがとう」


二人が笑う。


「じゃあ、おやすみなさい」


「おやすみ」


ドアが閉まる。


レイはノートを閉じて、ベッドに入る。


今日も、いい日だった。


データを整理して。仮説を立てて。実験をして。


少しずつ、分かってきた。


明日は魔法陣を完成させる。


もっと、分かるはずだ。


楽しみだ。


仮説が形になり、実験が始まる。


失敗を経て、小さな成功。


レイとセラフィナは、


それぞれの役割を果たしながら、


少しずつ前に進む。


次は、魔法陣の完成へ――


そして、新たな発見が待っている。

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第7章 第4話 完

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暴発の衝撃は、理論が現実を動かした証でもあった。

「魔法は確率操作である」という確信が、レイの中で明確な形を結び始める。


次にレイは、自作の魔法陣を“完成”させにいく。


よろしければ、

ブックマークで続きを追っていただけると嬉しいです。

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