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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
境界線の観測者 ―身分なき少女と、許可深度を超過した少年の2週間―
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7章サブ話①:港町ザッピング「海神の怒り」

港町では、海に起きた異変を誰もが口にしていた。

だが、ギルドに持ち込まれた正確すぎる数値の扱いに、大人はただ困惑している。

それは町の噂とは、全く別の手触りを持った記録だった。

【港町・漁師の声】


朝、網を引き上げた。


空だった。


「……おかしい」


隣の船も、その隣も、全部空だ。


誰かが呟く。


「海神が、怒ってるんだ」


「満月の晩に網を洗わなかったからだ」


「いや、違う。供物が足りなかったんだ」


「誰が悪い?」


「俺じゃない」


「俺でもない」


.

.

.


【港町・商人の囁き】


荷揚げ場で、男が首を振る。


「この時期にこの量はねえよ」


「去年の半分だぞ、半分」


別の男が吐き捨てる。


「東の沖、もう近づけねえ」


「どこから仕入れる?」


「北か? 西か?」


「どっちも高いぞ」


「……終わりだ」


.

.

.


【港町・市場の噂】


「海が、温かいんだってさ」


「この時期にか?」


「ああ。気持ち悪いって」


「ダンジョン封印したのに、まだ何か出てんじゃねえのか」


「魔物の卵が孵ってんだよ、きっと」


「海の底で」


.

.

.


【港町・ギルド支部】


受付の女が、眉をひそめる。


カウンターの向こうに、子供が立っている。


九歳くらい。


手には、何か光る石?


「……それ、何?」


「マナの測定器です」


子供は真顔で言う。


「東の沖のマナ濃度が、基準値の 【1.28倍】 です」


「……は?」


.

.

.


【ギルド支部・内部】


職員が、ノートを見る。


三冊。


びっしり数字。


時刻、場所、数値。


「これ……全部、この子が?」


「九歳で、これを?」


隣の職員が小声で言う。


「でも、データは……正確だ」


「どう報告すればいい?」


「上司に笑われる」


「子供の証言だぞ、これ」


「でも、嘘には見えない」


「……困った」


.

.

.


【港町・夜の酒場】


漁師が、杯を傾ける。


「もう終わりかもな」


「海が、死んだんだ」


「神罰だよ、神罰」


「でも、俺たちが何したって言うんだ?」


「分かんねえよ」


「分かんねえけど、何かしたんだ」


「きっと」

.

.

.


【港町・宿の窓】


遠くで、青白い光が瞬く。


東の沖。


一瞬だけ。


「……また光った」


誰も、理由を知らない。


誰も、止め方を知らない。

.

.

.


【港町・翌朝】


漁船が、一隻また一隻と戻ってくる。


全部、空だ。


「測定器の子、また来てたな」


「数字ばかり見てる変な子だよな」


「でも、あの子が何か知ってんじゃねえか?」


「子供が?」


「……分かんねえ」


「でも、他に誰が」

.

.

.

【ギルド支部・報告書】


情報提供者A(9歳)

東部海域における異常現象の観測記録


信憑性:[要検証]

追加証拠:[必須]

データ精度:[異常に高い]

年齢との矛盾:[説明不能]


担当者コメント:

「どう扱えばいいのか、判断がつかない」



.

.

.


【港町・ある漁師の独り言】


「海神の怒り、か」


「魔物の卵、か」


「神罰、か」


男は首を振る。


「……でも、何かが違う」


「何かが、間違ってる」


「俺たちが見てるのは」


「何なんだ?」

.

.

.


【東の沖】


青白い光。


また瞬く。


誰も近づかない。


誰も理由を知らない。


誰も、「マナ」という言葉を知らない。

.

.

.

─── 港町の人々は、知らない。

─── 九歳の子供が、何を測っているのかを。

─── そして、東の沖で何が起きているのかを。

.

.

.

【未解決】

-----

町の人々はそれぞれに理由を探し、納得できる言葉を当てはめていた。

一方で、正確すぎる記録は報告書の隅に置かれたまま、誰にも読み解かれない。

東の沖では、ただ青白い光が瞬き続けている。


よろしければ、ブックマークで続きを追っていただけると嬉しいです。

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