第6章 サブ第1話 ルミナス港ギルド・内部報告書
主人公は、ある点にだけ引っかかっていた。
それは、ギルド側が提出しようとしている報告書の、記述の「ズレ」についてである。
【緊急】
ルミナス港ギルド・内部報告書
(検閲済)
文書分類:機密S級
報告番号:LPG-E-1524-████
作成日時:████年█月██日 23:47
作成者:ロナン・████████(ギルドマスター)
宛先:ルミナス港評議会議長 ████████
承認印:[検閲済]
事案概要
港湾区西部において発生したマナ濃度異常値(最大1.52)に関する緊急調査を実施。
調査の結果、[REDACTED]が確認され、その後の事象により新規ダンジョンが出現した。
本報告書は評議会への正式報告に先立つ内部整理文書である。
警告:本文書の内容は極秘事項を含む。無断開示は重罪に該当する。
調査チーム構成
- リーダー:ダリウス・████(B級冒険者)
- メンバー:グレン・████(B級)、リナ・████(B級)
- 特別随行:レイ・アルブライト(10歳・《検閲》)
※特別随行者の選定理由:████████████████████████
※[REDACTED]████████████████████████████
時系列記録
█月██日 14:20 - 調査開始
港湾区西部旧倉庫街にてマナ濃度計測。
初期値:1.18(基準値の1.18倍)
異常範囲は半径約500mに及ぶ。
█月██日 16:45 - 地下遺跡発見
倉庫地下に未登録の古代構造物を確認。
内部に《検閲》が設置されていたが、破損が進行中。
※[REDACTED]████████████████████████████
※この時点で████████████████████████████
█月██日 17:12 - [事象発生]
レイ・アルブライトが[REDACTED]を実行。
使用魔法:Level ██(通常、成人魔法使いでも習得困難)
結果:《検閲》████████████████████████████
マナ濃度:1.52を記録(観測史上最高値)
█月██日 17:30 - ダンジョン出現
港湾区西部沖、海底約50m地点に新規ダンジョンが物理的に顕現。
発生原因:[REDACTED]████████████████████
ダンジョン分類:未確定(調査継続中)
脅威度:《検閲》
█月██日 18:00~20:15 - 内部探索
調査チームがダンジョン内部へ侵入。
遭遇した脅威:
- 変異種(推定Cランク)×██体
- [REDACTED](推定Bランク)×█体
- ボス級存在(推定█ランク)×1体
特記事項:ボス級存在は《事象》により消滅
消滅実行者:████████████████████████████████
使用手段:[REDACTED]████████████████████████
(目撃証言によれば「銀色の光が████████████」とのこと)
重大事項:検閲対象情報
以下の情報は評議会報告書からも削除予定。
① レイ・アルブライトの実力について
- 年齢:10歳
- 実行魔法:Level █(███重魔法陣を使用)
- マナキャパシティ:測定不能(計測器の上限を超過)
- 戦闘能力:[REDACTED]████████████████
問題点:
この実力は現行の魔法理論では説明不可能。
「10歳児がLevel 3以上の魔法を実行」という事実は、
魔法教育システムの根幹を揺るがす。
公表すれば、以下の混乱が予想される:
- 既存の魔法使い階級制度への疑義
- 研究機関からの実験体要求
- 諸外国からの接触・引き抜き工作
- 《検閲》████████████████
結論:完全秘匿が必須
② 《未分類事象》について
レイ・アルブライトは調査中、[REDACTED]と接触していた可能性。
証言:
「あの子は時折、誰かと話しているようだった。
でも、そこには誰もいなかった」
証言:
「戦闘中、あの子の右手が光った。
その瞬間、ボスの動きが止まった」
仮説:精霊契約? 古代遺物? [REDACTED]?
現時点では特定不可能。
アーレント家への聞き取りも《検閲》により中断。
③ ダンジョン出現の真相
公式発表案:「自然発生した未登録ダンジョン」
実際:《検閲》の破壊に伴う副次的現象
破壊実行者:レイ・アルブライト(Level █魔法使用)
破壊理由:[REDACTED](本人は「修復しようとした」と証言)
つまり、
ダンジョンを出現させたのは、それを消滅させたのと同一人物
この矛盾を評議会にどう説明すればいいのか。
被害状況
人的被害
- 死者:0名
- 重傷者:1名(グレン・████、盾破損により負傷、全治2週間)
- 軽傷者:2名
物的被害
- 旧倉庫街:倒壊1棟、半壊3棟
- 港湾設備:軽微な損傷
- ギルド支給装備:盾×1、弓×1(弦切れ)
経済的影響
- 港湾区西部の一時封鎖による物流遅延
- 推定損失:[REDACTED]ゴールド
今後の対応
短期対応(72時間以内)
ダンジョン周辺の航行禁止区域設定
マナ濃度の継続監視
評議会への《調整済》報告
中期対応(1ヶ月以内)
ダンジョンの脅威度正式評価
討伐または封じ込めの判断
レイ・アルブライトの[REDACTED]
長期対応(3ヶ月以内)
《検閲》████████████████████████
[REDACTED]████████████████████
《検閲》████████████████████████
ギルドマスター所見
私は30年以上、この仕事を続けてきた。
数百のダンジョンを見てきた。
数千の冒険者を送り出してきた。
だが、これは違う。
10歳の子供が、
Level █の魔法を使い、
ダンジョンを出現させ、
そのボスを単独で消滅させた。
理論的にありえない。
歴史的に前例がない。
システム的に説明不可能。
そして何より、
あの子は、まだ何かを隠している。
右手で何かに触れるたび、何かを確認するように動いた。
誰もいない虚空に語りかけていた。
戦闘中、一瞬だけ「別の何か」が見えた気がした。
アーレント家は名家だ。
父親は元A級冒険者、母親はエルフの血を引く。
だが、それだけでは説明がつかない。
港の者たちは既に、あの子に名を付け始めている。
私はその呼び名を聞きたくない。
評議会への報告内容を、私はどう「調整」すればいいのか。
真実を話せば、あの子は《検閲》になる。
隠蔽すれば、港は[REDACTED]の危険にさらされる。
追記:█月██日 04:17
ダリウスから追加報告。
「ギルドマスター、あの子の家に[REDACTED]がいました。
誰なのか聞いたら、家族は『遠縁の親戚』と。
でも、港にそんな████の噂は聞いたことがありません」
《検閲》████████████████████████████████
追記:█月██日 04:58
もう一度見た。
あの子の右手が。
何かが、見えた気がした。
いや、見てはいけないものだった。
[本報告書はここで終了]
[評議会提出版は別途作成予定]
[真実の30%を削除し、70%を改変する]
[それでも、何も隠せていない気がする]
文書ステータス:未承認
次回レビュー:█月██日 08:00
破棄予定日:████年█月██日(評議会報告後)
※本文書を閲覧した者は、内容について一切の言及を禁ずる。
※違反者はギルド除名および《検閲》の対象となる。
—— ルミナス港ギルド、ロナン・████████
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第6章サブ1話 完
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主人公は、その判断をそのまま流した。
結果として、ギルド内部での処理は表向きには完了した。
ただ、そのままで良いのかは分からない。
よろしければ、
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