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【第6章 第7話】 代償の果てに

記録すれば、この戦いも終わるはずだった。

しかし、右手の感覚と引き換えに流れ込む記憶は、期待した結末を連れてはこない。

――レイは、自分が信じていた「世界のルール」が音を立てて崩れるのを感じていた。

【ボス部屋・水中】


扉が開く。


中が広い。


船長室——違う。もっと広い。


天井が高い。壁に穴が空いてる。


そこに座ってる。


骨。


鎧を着てる。剣を持ってる。


玉座に座ってる。


「……船長」


ダリウスが呟く。


骨が顔を上げる。


目がない。でも見てる。


『生者よ』


声。重い。水が震える。


『何故来た』


「……記録するためです」


レイが一歩前へ。


『記録?』


「あなたたちを——忘れないために」


ノートを見せる。


『……』


骨が立つ。


ゆっくり。でも威圧感がある。


剣を抜く。


長い。レイの背丈ほどある。


『ならば』


『証明せよ』


『我らの最期を』


剣を構える。


【開戦】


「散開!」


ダリウスの声。


全員が散る。


骨が動く。


速い!


剣が振られる。


ダリウスが受ける。


ガギン!


「重っ……!?」


吹き飛ばされる。壁まで。


ドン!


「ダリウス!」


グレンが盾を構える。


骨が向きを変える。


剣。


振り下ろす。


グレンが受ける。


ガン!


盾が砕ける。


「!?」


一撃で?


リナが矢を放つ。


当たる。骨の肩に。


でも刺さらない。弾かれる。


「嘘……」


ガルムが飛び込む。


刀。


「せい!」


斬りかかる。


骨が剣で受ける。


ガキン!


ガルムが弾かれる。


「くっ!」


レイは見る。


骨。中央。


全員。散開してる。


状況認識:通常戦術では勝てない。


でも——


「まだ制御できる」


他の骨と同じ。


そう思った。


だから。


集中攻撃…それとも、分散攻撃?


火力を集めれば——


「みんな! 一点集中!」


「分かった!」


ダリウスが立ち上がる。


全員がボスに向かう。


骨が剣を横薙ぎ。


全員が吹き飛ばされる。


「!?」


「まずい——」


判断ミス。


集中したせいで全員が範囲内に。


右手がずきずきする。


痛くない。でも——重い。


感覚が減る。


20% → 15%。


「何で……」


『判断を誤った』


声。頭の中。


「……!」


ダリウスが叫ぶ。


「レイ! 指示!」


骨が剣を振り上げる。


ダリウスに向けて。


「!」


判断しなきゃ。


状況認識:骨が右に重心を置いてる。


だから——


左へ避ける指示か…


右に振るなら——?


「避けて! 右!」


ダリウスが右へ。


骨が剣を振る。


右へ。


「!?」


当たる。


ダリウスが吹き飛ばされる。


「ダリウス!」


また——間違えた。


右手がまた重くなる。


15% → 10%。


「くそ……」


『また誤った』


「分かってる……」


でも——


何が違う?


魔法陣を描こうとする。


左手で。


線が遅い。


歪む。


でも——


「まだ動く」


そう思った。


発動させる。


詠唱。


「ファイア——」


途切れる。


マナが乱れる。


「!」


暴走。


レイの手から火が散る。


「あっ!」


右手がまた重くなる。


10% → 5%。


「やめて……」


握ろうとする。


動かない。


ほとんど感覚がない。


グレンが素手で受ける。


盾がないから。


骨の剣。


振り下ろされる。


「グレン!」


剣がグレンの肩を。


「ああっ!」


血が噴き出す。


「グレン!」


ガルムが駆け寄る。


「治癒魔法!」


リナが叫ぶ。


唱える。


でも効果が薄い。


水中だから。


「くそ……」


ダリウスが立ち上がる。


「もう一度——」


「待って!」


レイが叫ぶ。


「また集中攻撃は——」


「じゃあどうする!?」


「……」


分からない。


集中攻撃は失敗した。


避ける指示も失敗した。


魔法も使えない。


じゃあ——


分散攻撃か…それとも…時間稼ぎ?


いや…撤退を…?


「分散して!」


「え?」


「一人ずつ仕掛けて!」


「分かった!」


ダリウスが右から。


グレンが左から。


リナが後ろから。


ガルムが前から。


同時に仕掛ける。


骨が——


動かない。


剣を構えたまま。


「!」


今だ!


「今! 全員で!」


全員が飛びかかる。


骨が剣を回す。


円を描く。


全員が吹き飛ばされる。


「!?」


「嘘……」


また間違えた。


右手がずきずきする。


感覚が——ほぼない。


3%?


いや——もっと少ない。


「駄目だ……」


骨が近づく。


レイに向けて。


剣を構える。


「レイ様!」


ガルムが飛び込む。


「待って!」


でも間に合わない。


刀で受ける。


ガキン!


刀が砕ける。


剣がガルムの胸を。


「ガルム!」


レイが駆け寄る。


抱きかかえる。


「ガルム! ガルム!」


「レイ……様……」


微笑む。血を吐きながら。


「大丈夫……です……」


「嘘だ! 血が!」


「私は……あなたを……」


「守る……と……」


「やめて! 喋らないで!」


涙が出る。見えない。水と混じる。


「リナ! 治癒魔法!」


「今やってる!」


でも傷が塞がらない。


「くそ……」


骨がまた動く。


ダリウスに。


ダリウスが受ける。


ガギン!


吹き飛ばされる。


グレンが突進。


体当たり。


骨が揺らぐ。


でも倒れない。


剣を振る。


グレンの脚を。


「ぐあっ!」


倒れる。


リナが矢。


最後の一本。


放つ。


骨の目を狙う。


当たる。


でも刺さらない。


「……もう駄目だ」


膝をつく。


骨が近づく。


剣を振り上げる。


全員に向けて。


「!」


レイは考える。


他の骨は——


記録したら消えた。


だから——


この骨も。


「そうだ……」


『触れろ』


声。頭の中。


『記録しろ』


「うん……」


右手を伸ばす。


骨に向けて。


「やめろ! レイ!」


ダリウスが叫ぶ。


でも。


骨の剣に触れる。


嵐。


船が揺れる。


「船長! もう持ちません!」


「諦めるな!」


波。巨大な。


飲み込まれる。


船が沈む。


子供たちの声。


「助けて!」


「船長!」


手を伸ばす。


届かない。


沈む。


誰も助けられなかった。


「すまない……」


暗い。


冷たい。


忘れられる。


誰も覚えていない。


「誰か……」


「覚えていて……」


「っ!」


右手を離す。


息が苦しい。


「記録……した」


他の骨と同じ。


過去を見た。


だから——


止まるはず。


骨を見る。


動いてる。


剣を振り上げたまま。


「何で……」


止まらない。


「記録したのに……」


『記録した』


声。


『だが』


『それだけでは——足りぬ』


「え……?」


何が足りない?


他の骨は——


記録したら消えた。


でもこいつは——


「違う……?」


何が違う?


分からない。


右手が動かない。


感覚がない。


考えられない。


「レイ!」


ダリウスが叫ぶ。


骨の剣。


振り下ろされる。


全員に向けて。


レイは見る。


仲間が倒れてる。


ガルム。血を流してる。


ダリウス。立てない。


グレン。動けない。


リナ。矢がない。


「みんな……」


俺のせいだ。


判断を間違えた。


代償を軽く見た。


記録で止まると思った。


全部——


俺が間違えた。


剣が迫る。


レイは叫ぶ。


「みんな——」


その瞬間——

-----

第6章 第7話 完

-----

差し出した右手の代償は、すでに限界を超えている。

守りたかった仲間たちが倒れ伏す光景の中で、レイは「記録」の先にある残酷な真実に直面した。


次にレイは、何を“確かめにいく”のか。


よろしければ、

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