【第6章 第4話】 初陣の制約
右手の感覚、残り六十五パーセント。
不完全な状態のまま、レイは街を救うための「封印修復」へと挑む。
だが、地下遺構で彼を待ち受けていたのは、想定を遥かに超えたマナの逆流と、視界の端に蠢く不気味な影の「干渉」だった。
【港湾区西部・翌日午前】
「レイ様、体調はいかがですか?」
ガルムの声——心配そう。
「大丈夫」
嘘じゃない。体は動く。
でも——
右手を握る——感覚が鈍い。
昨日から回復してない。
マナ濃度計——1.32。
また上がってる。
「みんな、準備はいい?」
ダリウスが全員を見る。
グレンが盾を叩く——カンカン。
「いつでもいいぜ」
リナが弓弦を確認する。
「OK」
ガルムが頷く——腕の包帯が新しい。
「完璧です」
深呼吸——
「じゃあ——行こう」
一歩——倉庫街へ。
空気が重い——マナの圧力。
視界の端——黒い影。
まだいる。
でも今は——無視する。
昨日の倉庫——瓦礫の山。
「ここから地下へ」
「入口は——」
リナが指差す——瓦礫の隙間。
「あそこ」
狭い——でも人は通れる。
「照明魔法」
右手で魔法陣——
線が——歪む。
「……っ」
左手で描き直す——
「ルミナス」
光球が浮かぶ——でも弱い。
「レイ、大丈夫か?」
「うん。ちょっと調子悪いだけ」
嘘——
右手の感覚、もう65%くらい。
でも言えない。
みんなを心配させたくない。
隙間に入る——
狭い——体を横にする。
暗い——光球だけが頼り。
数メートル——
開けた空間。
「……地下だ」
床が石——古い。
壁に文字——読めない。
「これ——」
ダリウスが壁を触る。
その時——
「グルルル……」
音——
全員が振り返る。
通路の奥——青白い光。
魔物——三匹。
犬型——でも昨日より大きい。
全身が脈打ってる——マナで。
「来た!」
ダリウスが剣を抜く。
「布陣!」
グレンが前へ——
リナが後ろへ——
ガルムが横へ——
レイは中央——
でも——
魔物が速い!
「!」
【戦闘開始】
一匹目——グレンへ。
盾——ガァン!
グレンが——半歩下がる。
「重い!」
二匹目——リナへ。
矢——放つ。
当たる——でも。
止まらない。
「!」
三匹目——レイへ!
右手——魔法陣。
描く——
線が——
遅れる。
「フレア!」
火球——小さい。
当たる——
効いてない!
「!」
爪が——
「レイ!」
ダリウス——横から。
剣——ガキィン!
「ありがとう——」
でも——
グレンが——押されてる。
ガルムが——戦ってる。
包帯が——赤く。
「ガルム!」
三匹目——また。
レイへ!
「今度は——」
右手——魔法陣。
焦る——
線が——歪む。
「ちゃんと——」
手が——
言うことを聞かない!
迫る——
「レイ様!」
ガルム——飛び込む。
受け止める——
「ガァッ!」
爪痕——新しい傷。
「ガルム! ごめん!」
「構いません! 魔法を!」
左手——描く。
「アイスバインド!」
氷の鎖——
魔物を縛る——
でも。
暴れる——
鎖が——割れる!
「効いてない!?」
リナの声——
「レイ! 指示を!」
指示——
頭が——真っ白。
何を——
魔物が三匹——
グレン——押されてる。
ガルム——傷だらけ。
リナ——矢が効かない。
ダリウス——限界。
どうする——
どうすれば——
「レイ!」
声が——遠い。
視界が——狭くなる。
息が——苦しい。
右手が——震える。
使えない——
魔法が——
間に合わない——
「レイ様」
ガルムの声——優しい。
「落ち着いて」
彼が——魔物を受け止めてる。
血まみれなのに——
笑ってる。
「大丈夫です」
「あなたなら——できます」
深呼吸——
もう一度——
状況——見る。
魔法が——効かない。
なら——
「みんな!」
全員が——見る。
「魔法は使わない!」
「物理攻撃に集中して!」
「グレン! 押し返して!」
「リナ! 足を狙って!」
「ガルム! 注意を引いて!」
「ダリウスさん! 三匹目を!」
動く——全員。
グレン——押す。
「うおおおお!」
魔物が——後退。
一歩。
リナ——矢を。
足に——
「当たった!」
怯む——動きが鈍る。
ガルム——引きつける。
「こっちです!」
追う——魔物が。
ダリウス——横から。
「もらった!」
剣——首に。
「ギャァァァ!」
一匹——倒れる。
でも——
起き上がる!
「しぶとい!」
動き——遅くなってる。
「もう一回! グレン!」
「おう!」
盾——叩く。
ドガァン!
壁に——
ダリウス——追撃。
剣——胴体に。
「止めだ!」
魔物が——
霧になる。
一匹——撃破。
残り——二匹。
倍速で——処理。
リナ——矢を連続。
一本、二本——
膝をつく——魔物。
ガルム——今!
爪——首に。
「ガァッ!」
霧になる——二匹目。
残り——一匹。
「最後! みんなで!」
囲む——全員。
グレン——前。
ダリウス——後ろ。
リナ——左。
ガルム——右。
レイは——
魔法陣——左手で。
「みんな、伏せて!」
地面に——全員。
「フレアバースト!」
火球——でかい。
直撃——
「ギャアアアアア!」
炎——
そして——
霧——消える。
静寂——
誰も——動かない。
数秒——
「……終わった?」
グレン——立ち上がる。
「ああ……終わった」
ダリウスも——
リナも——
ガルムも——
立つ——全員。
疲れてる。
傷だらけ。
でも——
生きてる。
「みんな——ありがとう」
声が——震える。
「僕が——ちゃんとできなくて——」
「レイ様」
ガルム——近づく。
腕の傷——痛々しい。
「誰も責めていません」
「でも——」
「戦いは——完璧じゃない」
ダリウス——肩を叩く。
「大事なのは——」
「生きて帰ること」
「それができた。それでいい」
グレン——笑う。
「なあレイ。お前の指示——良かったぜ」
リナ——頷く。
「そうよ。あの状況で冷静に——」
「すごいわ」
でも——
右手を——見る。
震えてる——まだ。
感覚——60%くらい。
魔法陣が——描けなかった。
間に合わなかった。
みんなを——危険に晒した。
「……ごめん」
小さく——言う。
「本当に——ごめん」
ガルム——膝をつく。
目線——合わせる。
「レイ様」
彼の目——優しい。
「謝らないでください」
「あなたは——最善を尽くした」
「それで十分です」
涙が——出そうになる。
でも——我慢する。
深呼吸——
「ありがとう、ガルム」
微笑む——彼が。
「どういたしまして」
ダリウス——地図を見る。
「休憩しよう。5分」
座る——全員。
リナ——回復薬を配る。
「はい、これ飲んで」
ガルム——包帯を巻き直す。
グレン——盾の傷を確認する。
ダリウス——剣を拭く。
レイは——
右手を——見る。
握る——開く——握る。
感覚が——少しずつ戻ってくる。
でも——完全じゃない。
70%——
まだ足りない。
「大丈夫か?」
ダリウス——聞く。
「……うん」
「無理するな」
「次——もっと危険かもしれない」
「分かってる」
でも——
行かなきゃ——いけない。
街を——守らなきゃ。
5分後——
「行こう」
立つ——全員。
前へ——通路の奥へ。
【地下通路・深部】
空気——冷たい。
湿ってる。
壁に——苔。
古い。
足音——響く。
静か。
「ここ——どこまで続いてるんだ?」
グレン——声が反響する。
「分からない……でも」
壁を——触る。
マナの痕跡——古い。
「誰かが——使ってる」
「?」
「多分」
前へ——
通路が——開ける。
広い——部屋。
中央に——石の台座。
その上に——結晶。
青白く——光ってる。
脈打つ——ように。
「これが——」
ダリウス——近づく。
でも——
結晶が——反応する。
光が——強くなる。
「うわっ!」
後退る——全員。
結晶から——マナが噴き出す。
「!」
でも——
結晶に——亀裂。
壊れてる——封印が。
「修復しなきゃ——」
前に——出る。
右手を——結晶に。
マナを——感じる。
濃い——
古い——
でも強い。
ダリウス——横に来る。
「やるのか?」
「……やります」
「レイ——」
「大丈夫です」
嘘——
全然——大丈夫じゃない。
でも——
やるしかない。
深呼吸——
「みんな、下がって」
後ろへ——全員。
レイだけが——結晶の前。
【封印修復——失敗の瞬間】
右手を——伸ばす。
魔法陣——描き始める。
複雑——
線が——震える。
感覚が——遅れる。
でも——
描き続ける。
一本——
二本——
三本——
汗が——額に。
息が——苦しい。
でも——
止められない。
四本——
五本——
「もう少し——」
六本——
完成——
「封印修復——リストア!」
魔法陣——光る。
結晶に——流れ込む。
亀裂が——閉じていく。
「いける——!」
——その時。
結晶が——
激しく——
脈打つ。
「!」
マナが——
逆流する。
レイの手に——
「ぐあっ!」
痛い——
焼けるように。
右手が——
感覚が——
「レイ!」
ダリウス——駆け寄る。
でも——
魔法陣が——崩れる。
「だめ——維持しなきゃ——」
必死に——
右手で——描き直す。
でも——
手が——
言うことを聞かない!
線が——歪む。
魔法が——
暴走する。
「レイ様! やめてください!」
ガルムの声——
でも——
止められない。
結晶が——
割れる。
「まずい——!」
——その瞬間。
視界の端——
黒い影。
影が——
結晶に——触れる。
そして——
光が——
消える。
静寂——
結晶が——止まる。
暴走が——収まる。
レイが——
倒れる。
「レイ!」
駆け寄る——全員。
「大丈夫か!?」
「……うん」
でも——
右手を——見る。
感覚が——
ない。
50%——
いや、40%。
「右手が——」
ダリウス——包帯を巻く。
「動かすな。今は休め」
「でも——結晶は?」
見る——
結晶が——暗い。
完全に——止まってる。
「成功——したのか?」
「いや——」
リナ——首を振る。
「封印が——完全に壊れた」
「つまり——」
グレン——言う。
「地下遺構が——開放される」
沈黙——
重い。
そして——
地面が——揺れる。
「地震!?」
「いや——これは——」
壁が——崩れる。
奥から——光。
青白い——マナの光。
「来る!」
「逃げろ!」
走る——通路を。
後ろから——マナが追ってくる。
「急げ!」
階段——上へ。
地上——
外に出る——
ドガァァァン!
地面が——割れる。
そこから——
塔が——出現する。
黒い——
歪んだ。
「ダンジョン——」
ダリウス——呟く。
「封印が壊れて——」
レイ——立つ。
右手を——見る。
動かない。
感覚が——ほとんどない。
でも——
これは——
僕のせいだ。
「……ごめん」
誰にも聞こえないように——
小さく——呟く。
空を——見上げる。
黒い塔が——天に伸びる。
視界の端——黒い影。
今度は——
こっちを見て——
微笑んでる?
いや——
警告してる。
「まだ——終わってない」
ダリウス——肩を叩く。
「レイ——ギルドに報告だ」
「走れるか?」
「……うん」
走る——街へ。
後ろを振り返る——
ダンジョンが——
空を覆い始めてる。
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第6章 第4話 完
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封印は修復されることなく砕け散り、街の地下に眠っていた異形の塔が姿を現した。
レイは代償として右手の感覚をさらに失い、自らの選択が招いた「ダンジョン出現」という最悪の事態に直面する。
最適化された選択は、次にどんな形で世界から返ってくるのか。
よろしければ、
ブックマークで続きを追っていただけると嬉しいです。




