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【第6章 第3話】 調査開始

旧倉庫街の深部でレイが見つけたのは、地下から噴き出す異常なマナと、壁に刻まれた巨大な亀裂だった。

かつての文明が遺した「封印」が壊れ始め、港はかつてない危機に瀕している。

少年は、エルフの地で学んだ禁忌の古代魔法を行使する決断を迫られていた。

【アーレント家・翌朝】


「レイ、起きて」


母さんの声——優しい。


目を開ける——窓の外、朝日。


マナ濃度計——1.18。


また上がってる。


「おはよう」


「おはよう。朝ごはん、できてるわよ」


起き上がる——右手が重い。


感覚——85%。変わらない。


でも昨日の戦闘で分かった——


戦闘中は60%くらいまで落ちる。


階下へ——


父さんが新聞を読んでる。


「おはよう、レイ」


「おはよう」


テーブルに座る——


母さんがスープを運んでくる。


「昨日——大変だったでしょ?」


「うん。でも大丈夫」


父さんが新聞を置く。


「港湾区——また被害が増えた。七件」


「魔導器の誤動作だけじゃない。建物の亀裂も報告されてる」


胸が冷たくなる。


「マナの影響——物理的にも?」


「そうだ。このままじゃ倒壊の危険もある」


母さんが手を握る——震えてる。


「レイ——今日も行くの?」


「……うん」


「でも昨日——」


「大丈夫。ちゃんと準備したから」


父さんが立つ——本棚へ。


何かを取り出す——小さな袋。


「これを持って行け」


開ける——マナ結晶が三つ。


「高純度だ。魔法が切れた時の予備」


「ありがとう」


母さんが抱きしめる——強く。


「必ず——帰ってきてね」


「うん」


朝食を終える——急いで。


扉を開ける——ガルムが待ってる。


「レイ様、準備完了です」


「行こう」


振り返る——


母さんと父さんが手を振ってる。


心の中で誓う——


必ず帰る。


【冒険者ギルド・集合地点】


ダリウスたちが待ってる。


「レイ、来たな」


「はい」


リナが装備を確認してる。


「マナ結晶×7、回復薬×5、ロープ——OK」


グレンが盾を磨いてる——昨日の傷が修理されてる。


「今日は深く入るぞ」


ガルムが頷く。


「全員準備完了」


ダリウスが地図を広げる。


「昨日の地点——ここ」


赤い×印。


「今日はもっと奥へ。原因を突き止める」


「でも——」


リナが心配そうに言う。


「昨日より危険よね?」


「そうだ。だから慎重に行く」


ダリウスが全員を見る。


「ルールは変わらない」


「レイの指示に従え。危険を感じたら即撤退」


「分かった?」


全員が頷く。


「じゃあ——行こう」


【港湾区西部へ・再び】


街を歩く——昨日と同じ道。


でも空気が違う。


マナ濃度計——1.22。


「昨日より高い……」


ダリウスが頷く。


「気をつけろ」


全員が武器を構える——前進。


建物の間——狭い路地。


人の気配がない——完全に無人。


角を曲がる——


視界の端に黒い影。


「そこ!」


指差す——


影が動く——でも消えない。


今度は——こっちを見てる。


「レイ——あれは?」


「分からない……でも昨日より近い」


グレンが盾を構える。


「敵か?」


「まだ——攻撃してこない」


影がゆっくり動く——屋根の上。


こっちを追ってる?


「無視しよう。警戒だけ」


前進——慎重に。


マナ濃度計——1.28。


旧倉庫街が見えてくる——


昨日の場所。


空気が——重い。


「ここから先——マナが濃すぎる」


リナが息苦しそうに言う。


「大丈夫?」


「平気よ。でも長時間は無理」


ダリウスが時計を見る。


「制限時間——30分。それ以上は危険だ」


「了解」


深呼吸——


「みんな——行くよ」


一歩——倉庫街へ。


【旧倉庫街・深部】


空気が変わる——圧力。


マナ濃度計——1.35。


でも——


建物の奥——もっと濃い気がする。


「ダリウスさん、あっちです」


指差す——崩れかけた倉庫。


「あそこ——マナの流れが集中してる」


「分かった。行こう」


倉庫に近づく——


扉が半分開いてる。


中——暗い。


「照明魔法」


手をかざす——


「ルミナス」


光球が浮かぶ——でも弱い。


右手の感覚——もう70%くらい。


マナが濃すぎて制御が難しい。


「レイ——大丈夫か?」


「うん。ちょっと重いだけ」


倉庫の中へ——


床が濡れてる——水?


「雨漏りか?」


グレンが床を触る。


「いや——これは海水だ」


「海水?」


「ここは海から離れてるのに……」


奥へ進む——


光球が照らす——


壁に亀裂——大きい。


そこから水が染み出してる。


「この亀裂——」


手で触る——


マナが——流れ込んでる。


濃い。異常に濃い。


「ここが原因です」


「この亀裂から——マナが流入してる」


ダリウスが覗き込む。


「どこから?」


「分からない……でも地下か海底だと思う」


リナが記録結晶を取り出す——


「これ、記録しておくわ」


結晶が光る——亀裂を記録。


その時——


「グルルル……」


音——


全員が振り返る。


入口——魔物が三匹。


犬型——全身が青白く光ってる。


でも——


動きがおかしい。


一匹は痙攣してる。


もう一匹は——同じ場所を行ったり来たり。


三匹目だけが——こっちを見てる。


「来た!」


ダリウスが剣を抜く。


「布陣!」


グレンが前へ——盾を構える。


リナが後ろ——弓を構える。


ガルムが横——爪を出す。


レイは中央——観察。


魔物が飛びかかる——


「グレン!」


盾で受け止める——ガン!


「うおっ! 重い!」


一匹目——弾かれる。


でも——


倒れた魔物が——霧のように崩れる。


「……消えた?」


体が空気に溶けていく——


残ったのは、歪んだマナの痕跡だけ。


「倒した……わけじゃない」


二匹目が——横から。


「ガルム!」


彼が爪で薙ぐ——魔物が怯む。


でも——


魔物の動きが止まる。


痙攣——


そして——霧になって消える。


「こいつも!」


三匹目が——レイへ!


「!」


右手で魔法陣——


描けない。


感覚が——ワンテンポ遅れる。


「フレア!」


左手で——


小さな火球——


でも間に合わない。


「レイ様!」


ガルムが前に——


魔物を受け止める。


「ガァッ!」


彼の腕に爪痕——血が滲む。


「ガルム!」


ダリウスが斬りかかる——


魔物の首——


「ギャァァァ!」


でも——


魔物は霧になって——消える。


倒したんじゃない——


勝手に崩壊した。


全員が息をつく——


誰も、笑わなかった。


でも——


床が——揺れる。


「!」


「地震!?」


いや——違う。


亀裂から——マナが噴き出してる!


「危ない!」


「撤退! 今すぐ!」


走る——入口へ。


倉庫が——崩れ始める。


「急げ!」


外へ——


ドカァァァン!


倉庫が——崩壊する。


土煙——


全員が地面に伏せる。


数秒後——


静かになる。


「みんな——大丈夫!?」


「無事だ……」


ダリウスが立ち上がる——土まみれ。


リナとグレンも——無傷。


ガルムが——レイを庇ってる。


「レイ様、ご無事ですか?」


「うん……ありがとう」


彼の腕——血が止まらない。


「ガルム——」


「大丈夫です」


でも——


顔色が悪い。


立ち上がる——


倉庫を見る——


完全に崩壊してる。


でも——


瓦礫の下——青白い光。


「まだ——マナが噴き出してる」


ダリウスが時計を見る。


「制限時間——あと15分」


「でもこれ以上は——」


リナが咳き込む——マナの影響。


「撤退しよう。情報は十分だ」


「……分かりました」


走る——来た道を。


マナ濃度計——1.35、1.28、1.22——


下がっていく。


呼吸が——楽になる。


【安全地帯・休憩】


マナ密度1.15の地点——座り込む。


全員が疲れてる。


ガルムの腕に——リナが包帯を巻く。


「深い傷ね……」


「すみません」


レイが言う——声が震えてる。


「僕が——遅れたから」


「レイ様」


ガルムが微笑む——でも痛そうに。


「誰も責めていません」


「でも——」


「レイ」


ダリウスが静かに言う。


「あの魔物——おかしかった」


「動きが統一されてない。勝手に崩壊する」


「あれは——」


グレンが低く言う。


「勝ったんじゃない」


「逃げ切っただけだ」


沈黙——重い。


ダリウスが水を飲む——


「レイ——あの亀裂、何だと思う?」


「……分かりません」


「でも地下か海底から——マナが流れ込んでる」


「それが原因で密度が上昇してる」


グレンが頷く。


「じゃあ——亀裂を塞げばいいのか?」


「簡単じゃない」


リナが言う。


「あの噴出量——尋常じゃないわ」


「塞ぐには強力な魔法が必要」


「Level 2以上——いや、Level 3かも」


沈黙——


Level 3魔法——古代魔法。


レイは理論は知ってる。でも実践は——


「ギルドに報告しよう」


ダリウスが立つ。


「ロナンさんなら——対策を考えてくれる」


全員が立ち上がる——


その時——


視界の端——黒い影。


今度は——動かない。


じっと見てる——こっちを。


「あれ——」


指差す——


影が——消える。


でも——


地面に何か残ってる。


「何だ?」


近づく——


紙——古い。


拾う——


文字が書いてある。


```

警告

地下に触れるな

封印を解くな

```


「誰が——」


ダリウスが紙を見る。


「封印? 何の?」


「分からない……」


でもこの紙——


マナの痕跡がある。


古い魔法——Level 3以上。


「持って帰ろう。ロナンさんに見せる」


紙を畳む——ポケットへ。


全員が歩き出す——


でもレイは振り返る。


影——もういない。


でも——感じる。


見られてる。


レイは右手を見た。


感覚が、わずかに遅れて返ってくる。


あの一瞬——


間に合わなかった。


【冒険者ギルド・報告】


ロナンさんが真剣に聞く。


「亀裂からマナが噴出——か」


「はい。地下か海底からだと思います」


地図に印をつける。


「そしてこれ——」


紙を渡す。


彼が読む——表情が変わる。


「封印……?」


「何か知ってますか?」


「いや——でも」


彼が棚から古い本を取る。


「港湾区の歴史書だ」


ページをめくる——


「ここ——」


指差す——古い記録。


```

星暦1847年

港湾区西部にて異常発生

調査隊派遣

原因:地下遺構

対応:封印魔法(Level 3)

実行者:古代魔法使い・セラス

```


「1847年——178年前」


「地下遺構?」


ロナンさんが頷く。


「この街は古い。建国前——別の文明があった」


「その遺跡が地下に埋まってる」


胸が冷たくなる。


「じゃあ——亀裂は?」


「おそらく封印が——壊れかけてる」


沈黙——重い。


「どうすれば?」


「封印を修復する。でもLevel 3魔法が必要だ」


「この街に——そんな魔法使いは?」


ロナンさんが首を振る。


「いない。Level 2までならいるが——」


「他の街に依頼するか?」


「時間がかかる。一週間——いや、二週間」


ダリウスが腕を組む。


「その間——マナは噴き出し続ける」


「街全体が危険になる」


「じゃあ——」


レイが口を開く。


「僕が——やります」


全員が見る——驚いた顔。


「レイ——お前、Level 3を?」


「理論は知ってます。エルフ領域で学びました」


「でも実践は——」


「一度もない」


ロナンさんが立つ——窓へ。


「危険すぎる」


「Level3はな……魔力回路を焼く」


「失敗しなくても、二度と魔法を使えなくなる例がある」


「代償が大きい。最悪——」


言葉が途切れる。


「命を落とす」


「……特に、制御に問題を抱えている者はな」


無意識に、右手を見た。


沈黙——


母さんの顔が浮かぶ——


「必ず帰ってきてね」


でも——


このままじゃ街全体が危ない。


「やらせてください」


「レイ——」


「お願いします」


ロナンさんが深く息をつく。


「条件がある」


「何ですか?」


「一、家族の許可を得ること」


「二、監視役をつける」


「三、失敗の兆候が見えたら即中止」


「……分かりました」


「それと——」


彼が紙を見る。


「この警告——誰が書いたか分からない」


「でも無視できない」


「封印を解く前に——地下遺構を調べる必要がある」


地図に新しい印——


「明日——地下へ」


「レイ」


ダリウスが静かに言う。


「次は——撤退できないぞ」


分かってる。


全員、分かってる。


でも——


行かなければ、街が壊れる。


レイは右手を見た。


感覚が、まだ遅れている。


「……明日、もう一度調べます」


誰も止めなかった。


止められなかった。


それが、答えだった。

-----

第6章 第3話 完

-----

謎の影が残した警告文と、歴史書に記された百七十八年前の真実。

レイは自らの魔力回路を焼くリスクを承知で、街を守るためにLevel 3魔法の修復を申し出る。

不完全な右手の感覚が遅れを見せる中、調査チームは事態の核心である地下遺構へと足を踏み入れる。


最適化された選択は、次にどんな形で世界から返ってくるのか。


よろしければ、

ブックマークで続きを追っていただけると嬉しいです。

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