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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
『森の学舎(まなびや)と古(いにしえ)の遺跡 ——九歳からの留学記、世界設計図の断片——』〜戦争が引き裂く故郷と、エルフ領域に眠る世界の核心〜
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【第5章 第14話】禁忌の扉

安定を示すマナ濃度計の数値とは裏腹に、レイはアリエルに導かれ、エルフの禁域へと足を踏み入れる。

そこに鎮座していたのは、数千年の時を超えて語りかける古代文明の遺産と、世界の「寿命」を刻む非情な装置だった。

少年はまだ知らない。かつて神になろうとした者たちの末路が、今の自分と地続きの知識であることを。

【エルフ領域・レイの部屋・早朝】


マナ濃度計——1.80。


安定してる。


残り83日


ノックの音。


「レイ、準備はいい?」


扉を開ける。


アリエルの表情が——いつもと違う。


「今日見るものは、エルフでも限られた者しか知らない」


「人間に見せるのは——あなたが初めて」


胸が高鳴る。


「なぜ僕に?」


「あなたなら理解できるから」


彼女が僕の目を見る。


「そして——正しい選択ができる」


【エルフ領域・森の深部・朝】


三人で歩く。


マナ濃度が上がる。


1.80——1.85——1.90——


「古代遺跡はマナの集積地」


アリエルが立ち止まる。


前方に——巨大な石扉。


高さ十メートル以上。


表面に複雑な文様。


(魔法陣——)


「Level 4の封印よ」


息を呑む。


「中に何が?」


「Cycle 2の遺産」


アリエルが杖を掲げる。


「そして——世界OSの秘密」


【古代遺跡・石扉前】


エルフ語の詠唱。


石扉の文様が光る。


外円。第二円。第三円——


(四重じゃない)


第四円。第五円。第六円——


(六重魔法陣!)


光が収束。


石扉が開く。


中から冷たい空気とマナの波動。


濃度計——2.50。


「ガルムは外で待機」


「了解しました」


僕は——入る。


【古代遺跡・入口ホール】


壁が淡く光り始める。


古代文字——でも読める。


```

"真実を求めるか

力を求めるか


真実には知識を

力には破滅を"

```


「読めるの?」


アリエルが驚く。


「はい——なぜか」


「それも、あなたが選ばれた理由」


【古代遺跡・第一の間】


中央に石版。


表面に——世界の構造図。


物理層。情報層。確率計算層。


「世界OSの階層構造!」


「Cycle 2の人間はこれを理解していた」


アリエルが石版に触れる。


「だから神代魔法を使えた」


「でも——」


石版の横に文字。


```

"物理定数の書き換え

確率分布の根本的再構成

プリムスマナへの直接アクセス


我らは神になろうとした

そして——世界を壊した"

```


胸が冷える。


「Cycle 2崩壊の原因——」


「そう。でも続きがある」


【古代遺跡・第二の間】


中央に——巨大な結晶。


高さ三メートル以上。


内部に光が流れてる。


「神代魔法の暴走を記録したもの」


「触れてごらん」


恐る恐る手を伸ばす。


結晶に触れた瞬間——


【視界が変わる】


【記録・Cycle 2末期】


都市。


建物が空中に浮いてる。


光の橋が空を渡る。


人々が魔法で飛び回る。


(Level 4魔法を日常的に!)


でも——空が歪んでる。


マナ濃度——異常。


5.0——10.0——


画面が切り替わる。


研究所。


中央に光る球体。


「プリムスマナへのアクセス成功!」


「物理法則を書き換えられる!」


球体が膨張し始める。


「まずい! 制御が——」


「逃げろ!」


光が爆発。


都市が崩れていく。


空中の建物が落下。


悲鳴。


マナ濃度が暴走——20.0——50.0——


最後に一人の研究者。


血まみれで何かを書いてる。


```

我らの過ちを記す

後世の者よ

我らの轍を踏むな


神代魔法は禁忌

世界OSには限界がある

それを超えた時

世界は崩壊する

```


彼が倒れる。


画面が暗転。


【古代遺跡・第二の間】


手を離す。


息が荒い。


全身が震えてる。


「見たわね」


アリエルの声。


「Cycle 2の終焉」


「神代魔法の暴走」


膝をつく。


「だからデモン監視システムが作られた」


「二度と同じ過ちを繰り返さないために」


深呼吸。


(世界には限界がある)


「でも、あなたに見せたのには理由がある」


「理由?」


「次の部屋で分かる」


【古代遺跡・第三の間】


中央に装置。


金属製。複雑な構造。


「触ってもいいですか?」


自ら近づく。


「ええ」


アリエルが頷く。


装置に手を置く——


文字盤が光る。


数値が浮かび上がる。


```

Cycle: 3

LEI: 0.052

Entropy: 1.8e24 / 5.0e25

残り時間: 3300万年

```


「これは?」


「世界OSの端末」


「Cycle 2の研究者が作った独立した観測装置」


画面が切り替わる。


地図——大陸全体。


各地に色付きの点。


赤。黄。緑。


「色は?」


「LEIの分布」


アリエルが画面を指す。


「赤は高い。緑は低い」


人間領域——ほとんど黄色か赤。


エルフ領域——緑。


「人間の活動が世界を最も圧迫してる」


「エルフは?」


「私たちは停滞してる」


アリエルの声が複雑。


「変化しないことで安定を保ってる」


「でも——成長を捨てること」


画面を操作してみる。


別のグラフが表示される。


横軸——時間。縦軸——エントロピー。


線が上がってる。


「世界のエントロピー推移」


「Cycle 3が始まってからずっと上がり続けてる」


「止められないの?」


「止められない。エントロピーは必ず増える」


アリエルが僕を見る。


「いつか世界は終わる」


「残り3300万年」


「でも——」


彼女が画面を切り替える。


「これが今の増加率を維持した場合」


「もし人間が神代魔法を再び使ったら——」


グラフが変わる。


線が急上昇。


「残り100年」


息を呑む。


【古代遺跡・第三の間・続き】


装置が静かに動いてる。


「だから、あなたに見せた」


「あなたは魔法を『理解』できる」


「プログラミング的に」


アリエルが僕の肩に手を置く。


「レイ」


「あなたはいつか選択を迫られる」


「世界を変えるか——守るか」


「神代魔法の理論を理解したあなたは、それを使える可能性がある」


「でも使えば、世界は崩壊する」


胸が苦しい。


「じゃあ、学んではいけなかった?」


「違う」


アリエルが首を振る。


「知らなければもっと危険」


「無知な天才が最も恐ろしい」


「真実を知った上で、正しい選択をしてほしい」


(正しい選択)


「でも何が正しいか——」


「それはあなたが決める」


装置から手を離す。


画面が暗くなる。


(僕が——決める)


【古代遺跡・第四の間】


中央に石棺。


蓋が開いてる。


中に本——古びた革装丁。


「Cycle 2研究者の遺書」


アリエルが慎重に取り出す。


「彼の名はアルカディウス」


「神代魔法の第一人者」


「そして、崩壊の引き金を引いた男」


本を開く。


最初のページ。


```

我が名はアルカディウス

世界を滅ぼした愚か者


知識は力だが

力は必ずしも正義ではない


私と同じ過ちを犯すな

```


ページをめくる。


魔法陣の図。


七重。八重——


(九重魔法陣!?)


「神代魔法の基礎」


アリエルの声が震えてる。


「でも使ってはいけない」


理論。計算式。


マナ流の制御方法。


(理解できる——完全に)


次のページ。


```

神代魔法は可能だ


でも使った瞬間

あなたは世界の敵になる


デモン監視システムは即座に反応し

あなただけでなく

周囲すべてが消される

```


最後のページ。


```

知識を封印するか

知識と共に生きるか


それはあなたの選択


世界は完璧ではない

システムには必ず欠陥がある


世界を救う必要が生じたら

この知識が役立つかもしれない


でもそれまでは封印しておけ


さもなくば私の二の舞だ

```


本を閉じる。


手が震えてる。


【古代遺跡・第四の間・続き】


本を石棺に戻す。


「どう思う?」


「怖いです」


正直に答える。


「こんな力——持ちたくない」


「でも?」


「知ってしまった」


「知識は消せない」


「そう」


アリエルが頷く。


「だから責任を持つしかない」


「使わない責任」


「必要な時まで封印する責任」


彼女が僕の前に立つ。


「レイ」


「あなたはCycle 3で最も危険な存在になるかもしれない」


「神代魔法を理解できる頭脳」


「プログラミング的思考」


「若さ故の衝動」


「でも——」


「あなたは正しい選択ができると信じてる」


「なぜ?」


「あなたは家族を愛してる」


「友人を大切にしてる」


「世界を理解しようとしてる」


「だから破壊じゃなく共存を選ぶ」


胸が熱くなる。


「はい。約束します」


「必要な時まで、この知識は使いません」


アリエルが微笑む。


「それでいい」


【古代遺跡・出口】


石扉を出る。


ガルムが待ってる。


「お疲れ様です」


「ただいま」


日光が眩しい。


マナ濃度が下がる——1.80。


(普通の世界)


でも——


(もう元には戻れない)


「どうでした?」


「重いもの見ました」


ガルムが僕の肩を叩く。


「でもレイなら大丈夫」


「なぜ?」


「あなたはいつも考えてるから」


「考えて正しい道を選ぶ」


(そうだろうか)


不安がある。


でも——


(やるしかない)


【エルフ領域・樹上都市・夕方】


部屋に戻る。


精神的に疲れた。


ノートを開く。


```

Day 82: 古代遺跡訪問


発見:

・Cycle 2崩壊の詳細

・神代魔法の基礎理論

・世界OSの限界

・アルカディウスの遺書


決意:

知識には責任が伴う

力は必ずしも正義ではない

選択は自分で決める

```


窓の外。星が綺麗。


手紙を書く。


```

お父さん、お母さんへ


今日、特別な場所に行きました。

世界の真実を見ました。


詳しくは帰ってから話します。


一つだけ約束します。


僕は家族を、友人を、世界を

大切にします。


どんなに力を持っても

それを忘れません。


レイ

```


封をする。


ベッドに横になる。


(神代魔法——触れてはいけない領域)


(でもいつか必要な時が来るかもしれない)


(その時まで封印)


でも——


(僕は何ができる?)


(知識を持つだけじゃない)


(行動で示さないと)


目を閉じる。


(明日から——もっと強くなる)


(正しく使えるように)


【同時刻・評議会】


長老たちが集まってる。


「人間の子に見せたのか」


「はい」


アリエルが立ってる。


「なぜだ」


「彼なら理解できるから」


「理解することと制御することは別だ」


「彼は制御できます」


「根拠は?」


「彼の選択を見てきました」


「力より家族を選ぶ」


「知識より責任を選ぶ」


沈黙。


「もし間違っていたら?」


「その時は——」


アリエルが目を閉じる。


「私が責任を取ります」


長老たちがざわめく。


「よかろう」


議長が手を挙げる。


「我々はアリエルを信じる」


「そして人間の子を信じる」


「だが監視は続ける」


「当然です」


アリエルが頭を下げる。


(レイ——頼むぞ)


【翌朝・演習場】


いつもの場所。


でも気分が違う。


「おはよう」


アリエルが待ってる。


「今日は休み」


「え?」


「昨日のは重かったでしょ」


「心を整理する時間が必要」


正直助かる。


「ありがとうございます」


「でも——」


彼女が微笑む。


「明日からは更に厳しくなる」


「!?」


「四重魔法陣は基礎」


「次は五重」


「五重!?」


「そう。神代魔法じゃないから安全」


「でも——」


「あなたの限界を試す」


(限界——)


「分かりました」


頷く。


「僕も強くなりたい」


「正しく使えるように」


「そして——」


「行動で示したい」


「知識だけじゃなく」


アリエルが頷く。


「その気持ちがあれば大丈夫」


「明日から——見せてもらうわ」


【マナ流観測所・午後】


画面を見る。


```

Density: 1.78 (↓0.02)

Stability: 71% (↑2%)

LEI: 0.050 (↓0.002)

```


「下がってる」


「和平の効果ね」


アリエルが横に立つ。


「戦争が終われば世界は安定する」


「でも——」


画面に別のグラフ。


長期トレンド。


「過去100年のLEI推移」


線が上がってる。


緩やかに、でも確実に。


「結局上がり続けてる」


「そう」


「人間の文明が拡大する限りこの傾向は続く」


「じゃあいつか介入される?」


「そう」


「500年後か、1000年後か」


彼女が僕を見る。


「それはあなたたち次第」


「僕たち——」


「そう」


「知識を持つ者が、どう行動するか」


「それが未来を決める」


(行動——)


(そうだ)


(知るだけじゃない)


(行動で変える)


【レイの部屋・夜】


窓の外。月が綺麗。


ノートを開く。


```

Day 81: 休息日


考えたこと:

力と責任

知識と選択

家族と世界


決めたこと:

強くなる

でも正しく使う

家族を守る

世界を守る


そして——

行動で示す

知識だけじゃなく

結果で証明する

```


ベッドに横になる。


(神代魔法の理論が頭の中に残ってる)


(でも使わない——必要な時まで)


(それまでは——)


(できることをやる)


(五重魔法陣)


(その先も)


(行動で示す)


目を閉じる。


(あと81日)


(帰ったらみんなに話そう)


(言えることだけ)


(そして——)


(強くなった姿を見せる)


眠りに落ちる。


帰郷まで——81日

戦争——停戦維持

和平条約調印——完了


古代の真実——開示

責任——自覚

次なる挑戦——五重魔法陣


禁忌の扉は開かれた

選択は——彼に委ねられた


そして彼は——

知識だけでなく

行動で示すことを決めた


限界を超える訓練が始まる

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第5章 第14話 完

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崩壊の記録と「神代魔法」の真理に触れたレイは、強大すぎる知識を封印し、それを正しく制御するための責任を背負う道を選ぶ。

禁忌の扉の向こう側で世界の終わりを予見した少年は、恐怖を力に変え、さらなる高みである「五重魔法陣」への挑戦を胸に誓うのだった。


最適化された選択は、次にどんな形で世界から返ってくるのか。


よろしければ、

ブックマークで続きを追っていただけると嬉しいです。

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