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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
『森の学舎(まなびや)と古(いにしえ)の遺跡 ——九歳からの留学記、世界設計図の断片——』〜戦争が引き裂く故郷と、エルフ領域に眠る世界の核心〜
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【第5章 第3話】 辺境の連鎖ダンジョン

九歳と二ヶ月。留学まで十ヶ月と迫る中、レイは仲間たちの危機を救うべく辺境の地へと足を踏み入れる。

そこでは、一つ潰しても次が現れる「連鎖するダンジョン」という、これまでの常識を覆す異常事態が起きていた。

魔物の気配が消えた不気味な森の奥で、レイは世界の仕組みそのものが「ある実験」を繰り返している事実に気づき始める。

オープニング:

異常は、音のなさから始まった


九歳と二ヶ月。留学まで、あと十ヶ月。


「……静かすぎる」


ガルムの声で、僕は目を開けた。


馬車の窓から見える森——鳥がいない。風が吹くたびに、木々がきしむだけ。


「この辺り、魔物の気配が濃い」


ヴィクターが剣に手をかける。護衛の一人。もう一人のリサが地図を広げる。


「辺境の町まで、あと五キロ……でも」


彼女が指差す方向——黒い靄が、四本立ち昇っている。


「ダンジョンだ。三つ……いや、四つか」


ガルムが低く呟く。


(連鎖してる……本当に)


胸が詰まる。空気が重い。マナ密度は1.15——ルミナス港より高い。


「これ以上は危険です。ここから徒歩で」


御者の言葉に従い、全員が降りる。剣の重さが、腰に響く。


(使わない。使わせない)


森に入る。


展開1:魔物が、襲わなかった


十分ほど歩いた時——


「止まれ!」


ヴィクターが叫ぶ。前方の茂みが揺れ、スパイクウルフが三頭現れた。


でも、様子がおかしい。動きが遅く、こちらを見ているだけ。敵意が——ない。


「退け」


低く言葉を発し、マナを流す。わずかに。


狼たちの目が光り——踵を返して、森に消えた。


「……今の、何だ?」


リサが呆然としている。


「マナの圧力です。彼らは——襲う理由がなかった」


ガルムが僕を見る。


「レイ、魔物を制御したのか?」


「制御じゃありません。説得……かな」


(感情マナ相関の応用。攻撃性を、鎮めただけ)


ヴィクターが警戒を緩めない。


「次も、そううまくいくとは限らない」


先へ進む。マナ密度が、さらに上がる。1.18。


(システムが——何かを修正しようとしてる?)


展開2:町が、半分空だった


辺境の町に到着したのは、夕暮れ時。門が閉ざされ、見張りの兵士が槍を構える。


「止まれ! 身分を——」


「ルミナス港から来た。ダリウス・ストーンを探してる」


ガルムが前に出る。兵士の表情が変わる。


「ダリウスの……? 待て、今呼ぶ」


数分後——


「レイ!」


ダリウスが駆けてくる。顔に疲労の色。


「来てくれたのか……!」


抱きしめられる。


「手紙を読んで。大丈夫ですか?」


「ああ、でも——見てくれ。町が、半分空っぽだ」


門をくぐる。人影がまばら。店は閉まり、窓には板が打ち付けられている。


「避難したんですか?」


「ほとんどが。残ってるのは、冒険者と商人だけ」


ダリウスが宿へ案内する。扉を開けると——


「レイ!」


ロアナが飛びついてくる。


「心配したのよ、こんな危険な時に……!」


カイルが片腕に包帯を巻いて立っている。


「よく来たな、小僧」


「怪我は?」


「たいしたことない。でも——魔物が、おかしいんだ」


展開3:連鎖の法則——進化するダンジョン


宿の一室。地図が広げられている。


ダリウスが四つの印をつける。


「ここ、ここ、ここ、ここ——全部、一週間以内に出現した」


「最初はここ。五日前に発見、翌日討伐隊が入って三日でクリア。コアを破壊した」


「でも——その翌日、二キロ離れた場所に新しいダンジョンが出現」


背筋が冷たくなる。


「連鎖……」


「そう。そして、これが繰り返されてる」


ロアナが記録を見せる。


北部森林→討伐完了。東の丘→討伐完了。南の渓谷→討伐中。西の沼地→未着手。


「しかも、魔物の種類が似通ってる」


カイルが腕の包帯を触る。


ノートを取り出す。


「詳しく教えてください」


ダリウスが語る。


一つ目——スパイクウルフが主体。


二つ目——同じく狼系、でも毒属性追加。


三つ目——狼系、毒+火属性。


「……進化してる」


全員が僕を見る。


「進化?」


「同じ種類の魔物が、環境適応してる」


地図を見つめる。


「システムが、最適解を探してる。世界は自己修正する。マナの乱れを、修正するために。魔物は——その修正プロセスの一部」


「でも、単純な魔物では効果が薄い。だから——強化パターンを試してる」


沈黙。


ロアナが震える声で言う。


「じゃあ……次は、もっと強い魔物が?」


頷く。


「おそらく」


ダリウスが拳を握る。


「どうすればいい」


地図の中央を見る。四つのダンジョンが、円を描くように配置されている。円の中心——


「ここ、何がありますか?」


「古い祠だ。もう使われてない」


「行けますか?」


「行けるが……危険だぞ」


ガルムが立ち上がる。


「俺が同行する」


ヴィクターとリサも頷く。ダリウスが剣を取る。


「当然、俺たちも行く」


決断が、固まる。


「明日の朝、出発しましょう」


展開4:夜の対話——そして、覚悟


深夜。宿の部屋。


眠れずに、観測ノートを見ている。


辺境マナ密度:1.18。ルミナス港:1.06。平常値:0.95-1.05。乖離率:24%。LEI推定:0.058?


ドアがノックされる。


「入って」


ガルムだった。


「眠れないのか」


「少し」


彼が隣に座る。


「レイ、お前は——本当に行くのか? 明日、祠に」


「はい」


「危険だぞ」


「分かってます」


ガルムが窓を見る。


「お前は優しすぎる。自分の安全より、他人を優先する。それは——いつか、お前を殺す」


胸が痛む。


「でも……放っておけないんです」


「知ってる」


ガルムが笑う。


「だから、俺がついてる。お前が死なないように」


涙が、にじむ。


「ありがとうございます」


「礼はいい。寝ろ」


ガルムが部屋を出る。一人になる。


窓から、月が見える。四つの黒い靄が、遠くに見える。


(明日——何が起きる?)


ノートを閉じる。目を閉じる。


(システムが、試してる。なら——僕も、試してみる)


クライマックス:祠が、脈動していた


翌朝。六人で出発。


森を抜け、丘を越え——正午前に、祠に到着した。


古い石造り。苔むした壁。でも——


「マナが……濃い」


密度計を確認する。1.25。


「ここが中心だ」


祠の前に立つ。扉は半開き。中から、微かな光。


「入るぞ」


ダリウスが先頭に立つ。一人ずつ、中へ。


祠の内部——中央に古い石碑。その周りに、マナが渦巻いている。


「これは……」


近づく。石碑に、古代文字が刻まれている。でも、読める。


「“ここに眠るは、古き守護者”」


「“世界の均衡を、永遠に見守る”」


「……観測ノードだ」


全員が僕を見る。


「ノード?」


「世界を監視する装置。デモンシステムの一部」


石碑に手を触れる——瞬間、視界が変わった。


マナの流れが、見える。四つのダンジョンから、マナが——ここに集まってる。そして、ここから——


「送信されてる……」


遠く。どこか、遥か彼方へ。データが、流れている。


座標:[35.2, -12.8]。マナ密度:1.25。ダンジョン数:4。ステータス:テストモード。


テストだ!


「システムが、実験してる」


石碑から手を離す。視界が戻る。


「どういうことだ?」


ダリウスが問う。


「この祠は——観測装置です。周囲のマナを集め、データを送信してる。ダンジョンは——その実験の一部」


カイルが剣を抜く。


「じゃあ、これを壊せば——」


「待って! 壊したら、システムが暴走するかもしれない」


「じゃあ、どうする!」


ロアナが叫ぶ。


(選択肢は——三つ)


石碑を破壊する→即座の効果、高リスク。


マナ密度を下げる方法を探す→時間がかかる。


システムに介入する→未知の結果。


手が震える。ガルムが僕の肩に手を置く。


「お前の判断を信じる」


深呼吸。


「……介入します」


「何?」


「システムに、直接——」


石碑に、再び手を触れる。マナを流す。わずかに。


(観測ノード……聞こえますか?)


沈黙。そして——意志のない声が、頭の中に響いた。



状態確認要求を受信。

テストモード実行中。

目的:最適な生態系修正パターンの探索



やっぱり……テストだ。なら——


(テストを、中止できますか?)



権限不足。

中止要求は、管理者レベルが必要



くそ……別の方法を考える。


(テストの目的は?)



マナ密度の安定化。

現在の手法:ダンジョン生成による消費促進。

効果:不十分



不十分……なら、アイデアが浮かぶ。


(より効率的な方法を、提案できますか?)



提案可能。

代替案を入力してください



これは——チャンスだ!


頭の中で、プランを組み立てる。ダンジョン生成は、高コスト。なら——


(植林プログラム。森を増やせば、マナは自然に吸収される。魔物を減らし、生態系を安定させる)


データを送信する。


提案:植林による自然吸収。効率:ダンジョン生成より高効率。コスト:低。リスク:低。実装期間:6ヶ月。


沈黙。長い、長い沈黙。そして——



提案を評価中……評価完了。

提案を採用。

テストモード終了。

ダンジョン生成を停止。


植林プログラムを開始



石碑から、光が消える。手を離す。全員が固唾を呑んで見ている。


「……終わりました」


「え?」


ダリウスが呆然としている。


「テストモードが、終了しました。ダンジョンは、これ以上出ません」


外を見る。四つの黒い靄が——ゆっくりと、薄れていく。


「消えてる……」


ロアナが震える声で言う。マナ密度計——1.20。わずかに、下がった。


ガルムが笑う。


「お前、また——世界と交渉したのか?」


頷く。


「多分」


全員が、笑い出す。緊張が、解ける。カイルが僕の頭をぐしゃぐしゃにする。


「化け物だな、お前」


「すみません……」


でも、笑顔になる。


システムと——対話できた。これは——大きな一歩だ。


エンディング:帰路、そして新たな謎


翌日。町を出発する。


町の人々が、見送ってくれる。


「ありがとう、レイ!」


「また来てくれよ!」


手を振る。馬車が動き出す。ダリウスたちが、最後まで見送ってくれる。


「また会おう!」


「留学、頑張れよ!」


窓から、手を振り続ける。町が、遠ざかる。


ガルムが言う。


「良い仲間だな」


「はい」


胸が、温かい。馬車が森を抜ける。


ヴィクターが言う。


「レイ様……あなたは、何者なんです? 普通の子供じゃない」


リサも頷く。


「世界と、対話する……」


「僕は——」


言葉を選ぶ。


「ただの、好奇心の塊です」


二人が笑う。


「それは分かってます」


三日目の夜。ルミナス港に戻る。家族が、迎えてくれる。


「おかえり!」


母が抱きしめる。


「無事で良かった……」


父が頷く。


「よくやった」


部屋に戻る。ノートを開く。


観測ノードとの対話:成功。システムへの提案:採用。学んだこと:世界は、対話可能。


でも——管理者レベルって、何? 誰が、本当の管理者? デモンシステムは——AIじゃなく、誰かが操作してる?


窓から、月が見える。マナ密度計——1.07。わずかに上がった。


そして——観測装置が、反応する。三つの光点が、同時に脈動する。その中心に——新しい光点が、現れた。四つ目。


これは……光点が、メッセージを送ってくる。


観測対象:レイ。行動:システム提案。評価:有益。追加監視:承認済み。


首筋に、冷たい汗が伝った。


僕が——監視対象として、認識された。


窓を閉める。カーテンを引く。でも——光点は、消えない。画面の中で、静かに脈動している。


世界は——僕を見てる。でも、それでも——


ノートに書く。


「理解を、止めない」


遠く。シルヴァン・イーヴンリース。


アリエルが報告書を読んでいる。


「レイが——観測ノードと対話した。しかも、システムに提案を通した」


傍らのエルフが驚く。


「九歳で……?」


「彼は特別だ」


アリエルが報告書を閉じる。


「でも——それゆえに、危険でもある。システムが、彼に気づいた。監視が、強化される」


窓の外、森が広がる。


「一年後——彼がここに来る。その時、全てを教える。そして——守る」


風が吹く。葉が揺れる。古代遺跡が、遠くに眠る。月が、静かに昇る。

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第5章 第3話 完

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観測ノードを通じて世界のシステムと「交渉」し、異常事態を収束させたレイ。

しかし、その独創的な介入は、同時にシステム側へ自らの存在を「監視対象」として明確に認識させる結果を招いてしまう。


最適化された選択は、次にどんな形で世界から返ってくるのか。


よろしければ、

ブックマークで続きを追っていただけると嬉しいです。

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