【第4章 第2話】 制限解除の選択と新たな重圧
観測ノードの異常パターンが加速する中、レイはギルドマスターから依頼制限解除を提案される。
しかし、その条件は「家族同伴継続」に加え、魔法の仕様詳細報告や魔法協会への協力という、監視の色が濃い新たな重圧だった。
オープニング:朝の違和感
朝。
観測ノート。
```
異常パターン: 5回/週(増加)
送信周期: 9分52秒(短縮継続)
新規ノード検出: 3箇所(港湾区)
```
「……増えてる」
窓の外。
マナ視覚化。
観測ノードが——
昨日より、多い。
密度が上がってる。
「なぜ?」
ノック。
「レイ、ギルドから呼び出しだ」
父の声。
いつもと——違う。
緊張してる。
ギルドマスターの提案
ギルドマスター室。
革張りの椅子。
重厚な机。
「座れ」
ギルドマスター、ロナン。
五十代。
戦士上がり。
「単刀直入に言う」
書類を出す。
「制限解除を提案したい」
父が身を乗り出す。
「どういうことです?」
「君の息子は——優秀だ」
ロナンが僕を見る。
「週2回じゃ、もったいない」
「もっと活躍できる」
父が——
複雑な顔。
条件の提示
「ただし」
ロナンが指を立てる。
「条件がある」
「一つ」
「家族同伴は継続」
父が頷く。
「二つ」
「月1回、ギルドへ報告書提出」
僕が反応する。
「報告書?」
「魔法使用状況、マナ消費量」
「新しい魔法があれば、その詳細」
「……監視ですか」
ロナンが笑う。
「保護だ」
「君のような天才は」
「狙われる」
父の顔が引き締まる。
「三つ」
ロナンが真剣な顔。
「魔法協会との連携強化」
「セドリック支部長の要請だ」
「月2回、実演協力」
「……倍ですか」
「そうだ」
家族会議
帰宅。
食卓。
父、母、ガルム。
「どう思う?」
父が僕に聞く。
母が心配そう。
「無理しなくていいのよ」
「でも」
僕は——観測ノードを思い出す。
増えてる密度。
短縮する周期。
「受けたいです」
父が驚く。
「理由は?」
「……もっとデータが取れます」
母が不安そう。
「危なくない?」
「父さんとガルムがいます」
ガルムが笑う。
「任せとけ」
父が——頷く。
「分かった」
「でも、無理はするな」
アリエルの警告訪問
夕方。
ノック。
「アリエル様です」
マルタの声。
応接間。
アリエル・シルヴァ。
エルフの教育者。
「制限解除、聞いたわ」
彼女が座る。
「おめでとう」
「……でも?」
「でも——気をつけなさい」
彼女が真剣な顔。
「観測ノードに干渉するな」
「前にも言ったわね」
「はい」
「制限解除で、あなたの活動範囲が広がる」
「それは——」
彼女が僕を見る。
「監視対象としての価値も上がる」
「……デモンが?」
「そう」
彼女が立ち上がる。
「でも」
一瞬、表情が緩む。
「あなたは——まだ、許容範囲よ」
「……え?」
「気をつけなさい」
去っていく。
一人。
「……許容範囲?」
アリエルの言葉。
初めて聞いた——
肯定の響き。
条件付き受諾
翌日。
ギルド。
ロナンの前。
「受けます」
「ただし」
僕が条件を出す。
「報告書の内容は、僕が選びます」
ロナンが眉を上げる。
「どういう意味だ?」
「魔法の詳細は——全ては書きません」
「危険な部分は、伏せます」
父が驚く。
「レイ……」
「父さん、これは交渉です」
ロナンが——笑う。
「面白い」
「八歳が交渉するか」
「いいだろう」
「ただし」
彼が指を立てる。
「伏せた内容で事故が起きたら」
「責任は君にある」
「……承知しました」
契約成立。
握手。
「期待してるぞ、レイ」
初の制限解除後依頼
三日後。
依頼。
魔獣討伐。
ランクD。
森の外れ。
父、ガルム、そして僕。
「マナ視覚化」
敵の位置、特定。
「北東、30メートル」
父が剣を構える。
ガルムが弓を引く。
「行くぞ」
戦闘。
僕は——支援。
敵の動きを予測。
「右!」
父が回避。
「今!」
ガルムの矢が——命中。
五分で終了。
「……早いな」
父が笑う。
「お前のおかげだ」
夜の疲労と発見
帰宅。
ベッドに倒れ込む。
「……疲れた」
でも——
達成感。
ノートを開く。
```
初任務: 成功
制限解除: 効果大
観測ノード:
疲労度: 高
```
ペンを止める。
窓の外。
観測ノードが——
「……減ってる?」
マナ視覚化。
確認。
密度が——明らかに低い。
「なぜ……」
理由が分からない。
でも——
事実だ。
「偶然?」
ノートに追記。
```
観測ノード密度: -12%
原因: 不明
再現性: 要観察
```
目を閉じる。
意識が——
沈む。
翌週:連続依頼
一週間。
依頼、三件。
全て成功。
効率が——上がってる。
ギルドの評価も。
「すごいな、レイ」
受付嬢が笑う。
でも——
他の冒険者の視線。
嫉妬。
羨望。
そして——
敵意。
「……気をつけろ」
ガルムが囁く。
「妬みは危険だ」
報告書作成
夜。
報告書。
```
依頼数: 3件
成功率: 100%
マナ消費: 中程度
新魔法: なし
特記事項: 持続時間が5分→8分に延長
```
ペンを止める。
(本当は——)
(観測ノードの減少も記録した)
(でも、書かない)
これは——僕の秘密。
世界の秘密。
封筒に入れる。
明日、提出。
セドリックとの実演協力
魔法協会。
セドリック支部長。
「月2回になったね」
「はい」
「今日は——マナ視覚化を見せてくれるか」
実演室。
観客——研究者たち。
「では」
マナ視覚化。
部屋中が——色で満たされる。
「おお……」
研究者たちが息を呑む。
「これが、マナの流れ……」
「美しい」
セドリックが笑う。
「君は、芸術家だな」
「……ただの観察です」
「謙遜するな」
実演終了。
拍手。
でも——
一部の研究者が——
複雑な顔。
父との対話
帰り道。
「疲れてないか?」
父が心配そう。
「大丈夫です」
「本当か?」
父が立ち止まる。
「お前、無理してないか」
「……少し」
父が頭を撫でる。
「無理するな」
「お前は、まだ八歳だ」
「でも——」
「でも、何だ?」
「……やらなきゃいけないんです」
「なぜ?」
言葉が——出ない。
(世界を理解したいから)
(家族を守りたいから)
「……分かりません」
父が——抱きしめる。
「分からなくていい」
「ただ」
「一人で抱えるな」
温かい。
観測ノードの不自然な変化
夜。
窓の外。
観測ノード。
密度が——
また減ってる。
「……おかしい」
ノートに記録。
```
制限解除後: ノード密度-8%
実演協力後: ノード密度-5%
相関: 負の相関?
結論: 予測と矛盾
```
「活動が増えれば——」
「監視も増えるはず」
「でも、減ってる」
理由が——
思いつかない。
「誰かが……」
「止めてる?」
考えすぎか。
でも——
この不自然さは、何だ。
母との朝食
翌朝。
朝食。
母が笑顔。
「レイ、元気そうね」
「うん」
「最近、少し楽になった?」
「……そうかも」
母が嬉しそう。
「良かった」
温かいスープ。
柔らかいパン。
「美味しい」
母の手料理。
この温度が——
僕を支えてる。
ガルムの訓練提案
午後。
中庭。
ガルム。
「レイ」
「はい」
「次の依頼に備えて——」
「身体、鍛えるか」
「でも、魔法使いは——」
「魔法使いだって、身体は大事だ」
ガルムが笑う。
「俺が教えてやる」
「基礎体力」
「それだけでも、生存率は上がる」
「……お願いします」
訓練開始。
腕立て伏せ。
十回で——限界。
「情けねぇ」
ガルムが笑う。
「でも、続ければ変わる」
「……はい」
エピローグ:銀髪の少女の判断
木の上。
銀髪の少女。
手のひらのデータ。
```
レイ・ルーミナス
活動量: 増加
観測ノード反応: [削除]
デモン評価: [保留]
```
「……」
彼女が——
データを見つめる。
```
修正提案: 保留
監視強度: 低下
理由: [空白]
```
理由の欄が——
空白。
「なぜ……」
彼女自身も——
分からない。
「排除すべき、なのに」
でも——
手が動かない。
「確率が——」
「収束していない」
風が吹く。
「もう少し」
「もう少し、様子を見ましょう」
彼女が消える。
データが——
削除される。
記録されない監視。
深夜:新たな発見
部屋。
月明かり。
観測ノート。
```
制限解除: 成功
負担: 増加
監視: 低下(理由不明)
仮説: 誰かが判断を保留している?
```
ペンを置く。
窓の外。
星空。
観測ノードが——
静かに光ってる。
「見てるんだろ」
呟く。
「デモン」
「でも」
僕は——立ち上がる。
「まだ、排除されてない」
「なら——」
「できることを、やる」
決意。
新しい一日が——
また始まる。
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『第4章 第2話 完』
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レイはデータ取得のため条件付きで提案を受諾するが、活動量が増加するにもかかわらず、観測ノードの密度は不自然な低下を示し始める。
この予測と矛盾するシステムの挙動は、レイの解析の限界を示唆すると同時に、彼を監視する別の存在が介入している可能性を暗示する。
最適化された選択は、次にどんな形で世界から返ってくるのか。
次回 第4章 第3話 新ダンジョンと『修正行動、確認』の声
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