【第7章 第31話】 待ち続けた答え
レイは、塔の脈動が「一秒」へと加速した事実に強い興味を抱いた。
──それが、世界を同期させる「合図」の秒読みになるとも知らずに。
朝。
窓を開ける。
測定器を取り出す。
北へ向ける。
——光ってる。
止まらない。
昨日と、同じ。
セラフィナが隣に立つ。
「波は……」
「まだ、ここに」
レイが測定器を東へ向ける。
塔。
光る。
三秒、三秒、三秒
「……待ってる」
セラフィナが頷く
「合図、来てません」
レイがノートを閉じる。
「……今日、そばで測ろう」
セラフィナが振り返る。
「塔の?」
「うん」
「もっと近くで」
セラフィナが微笑む。
「一緒に、行きましょう」
岸。
岩場。
塔が、目の前。
青い光の柱。
細く。
安定。
静か。
「……初めて、ここまで来た」
レイが測定器を取り出す。
北へ。
光る。
連続。
強い。
「……来てる」
次に、塔へ。
光る。
三秒、三秒
「塔は、変わらず」
セラフィナが測定器を受け取る。
東へ。
南へ。
「……全部、三秒です」
レイが頷く。
「北だけが……」
「違う」
二人、顔を見合わせる。
「合図……」
「いつ——」
測定器が、揺れた。
「……!」
光が、乱れる。
三秒じゃない。
不規則。
速く。
遅く。
また速く。
「セラ……!」
セラフィナが測定器を見る。
「北……?」
レイが測定器を北へ向ける。
光る。
だけど——
連続じゃない。
明滅。
不規則。
そして——
止まった。
「……え?」
光が、消えた。
「波が……」
セラフィナが呟く。
「消えた……?」
レイが目を見開く。
「いや……」
「これ……」
その瞬間——
塔が、震えた。
「……!」
地面が、揺れる。
足元から。
岩が、軋む。
音。
低く。
規則的だった音が——
速くなる。
三秒、二秒、一秒
そして——
止まった。
静寂。
完全な。
空気が、重い。
「……何が……」
セラフィナが呟く。
レイが塔を見る。
青い光の柱。
細く——
いや。
「……太くなってる……!」
光の柱が、膨らむ。
ゆっくり。
だけど、確実に。
そして——
色が、変わる。
青。
緑。
黄。
「……!」
測定器が、激しく光る。
マナ濃度——
上がってる。
急激に。
息が、詰まる。
「セラ、下がろう……!」
「はい……!」
二人、後ろへ。
岩場を駆ける。
足が滑る。
振り返る。
塔。
光の柱。
太く。
明るく。
そして——
音が、戻った。
低く。
力強く。
だけど——
三秒じゃない。
一秒、一秒、一秒
「……速い……!」
セラフィナが測定器を向ける。
「マナ濃度……」
「上がり続けてます……!」
レイがノートを開く。
書く。
時刻。
色の変化。
脈動の変化。
マナ濃度。
手が、震える。
だけど——
止まらない。
記録。
残す。
全部。
そして——
測定器が、また揺れた。
「……!」
光が、止まる。
いや——
止まったんじゃない。
「……振り切れた……!」
測定器の限界を、超えた。
セラフィナが呟く。
「これ……」
「塔が……」
「何かを、始めました」
レイが塔を見る。
光の柱。
太く。
明るく。
そして——
空へ。
まっすぐ。
「……すごい」
思わず、呟いた。
その時——
足音。
振り返る。
エルネスト。
マルコ。
リディア。
「……お前たち……!」
「大丈夫か?」
レイが頷く。
「はい……!」
「でも、塔が……」
エルネストが塔を見る。
光の柱。
一秒脈動。
マナ濃度、測定不能。
「……これは……」
マルコが測定器を向ける。
「……振り切れてる……!」
「こんなの、初めてだ……!」
リディアが呟く。
「光の色……」
「三色、同時に……」
エルネストが腕を組む。
「……合図が、来たんだな」
レイが振り返る。
「合図……?」
「ああ」
「お前たちが測ってた、北からの波」
「あれが、消えた」
「そして……」
「塔が、動き出した」
セラフィナが呟く。
「じゃあ……」
「波が消えたのが……」
レイが頷く。
「……そうか」
測定器を見る。
北。
反応、なし。
東。
振り切れ。
「本当だ……」
「波、消えた……」
「そして、塔が……」
セラフィナが呟く。
「波は……」
「どこへ?」
エルネストが地図を広げる。
螺旋。
十二の点。
東
南
西
北
指が、北を指す。
「……ここだ」
「波は、北へ行った」
レイが目を見開く。
「……北の塔……」
エルネストが頷く。
「ああ」
「そして、ここの塔は……」
「その準備をしてる」
マルコが呟く。
「準備……?」
エルネストが塔を見る。
光の柱。
一秒脈動。
空へ、まっすぐ。
「……分からん」
「だが……」
「確実に、次がある」
レイが測定器を向ける。
塔。
振り切れ。
北。
反応なし。
そして——
ノートに、書く。
時刻。
脈動の変化。
光の色。
マナ濃度。
波の消失。
「……記録、残そう」
「何が起きたか」
「全部」
セラフィナが頷く。
「はい」
「一緒に」
二人、ノートを見る。
グラフ。
曲線。
加速。
同期。
そして——
今。
波の消失。
塔の反応。
「……つながってる」
セラフィナが呟く。
「はい」
「全部」
エルネストが呟く。
「……お前たち」
「明日も、測れ」
「北の塔が、何をするか」
「それが、ここに戻ってくるか」
「確かめろ」
レイが頷く。
「はい……!」
夜。
窓辺。
測定器を向ける。
北へ。
——反応、なし
「……消えたまま」
セラフィナが隣に座る。
「はい」
「波は、北へ」
レイがノートを開く。
グラフ。
七日間の記録。
加速。
同期。
そして——
消失。
「……この後、何が来るんだろう」
セラフィナが呟く。
「分かりません」
「でも……」
「きっと、すごいことです」
レイが頷く。
「うん……」
「塔が、こんなに変わった」
「次は……」
窓の外。
青い光の柱。
太く。
明るく。
一秒脈動。
まだ、動いてる。
「……北で、何かが始まってる」
セラフィナが手を取る。
「はい」
「もう……」
レイが頷く。
「うん」
「明日も、測ろう」
二人、手を取る。
そして——
塔を見る。
何かが、始まった。
確かに。
そして——
北で、今。
もっと、大きい何かが。
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第7章 完
第7章 第31話 完
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北からの波が消失した瞬間、塔が反応を開始。
光の柱が太く明るくなり、脈動が一秒間隔へ加速。
波は北の塔へ向かった——
そして今、北で何かが始まっている。
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