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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
境界線の観測者 ―身分なき少女と、許可深度を超過した少年の2週間―
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【第10講:セラ先生の世界講座】上手くいかなかった時の話

レイ

「先生、さっきから黒板を叩く音がうるさいんですけど……。それ、わざとやってますよね?」


セラ

「うん。仕様の違いを音で表現してるんだよ。カツカツ鳴るのが『確定』で、カサカサ鳴るのが『揺らぎ』。ほら、わかりやすいでしょ?」


レイ

「いや、わかりにくいですよ。もっと普通の音で書いてください。耳に響くんです」


セラ

「そう? みんな気にしてないよ。ただ、確定したあとの静寂に耐えられないだけじゃないかな」

パチ、パチ、パチ。


「……」


またこの空間だ。


「よく来ましたね」


セラが教壇に立っている。


ちびキャラのまま、指示棒を持って。


「今日は何?」


俺は小さく呟く。


「今日は——」


セラが間を置く。


「上手くいかなかった時の話です」


「……上手くいかなかった時?」


俺は思わず身構える。


「失敗の話?」


「いいえ」


セラが即答する。


「失敗の話ではありません」


「……じゃあ何?」


「処理の話です」


セラが淡々と言う。


「……処理?」


「はい」


俺は小さく呟く。


「……嫌な予感しかしない」


「想定内です」


セラが即答する。


「早い!」


「では、第10講を始めます」


セラが俺を見る。


「拍手は——」


セラが指示棒を振る。


ピシッ。


「覚悟を決めてから、どうぞ」


「覚悟!?」


「……」


俺は深呼吸する。


パチパチパチ。


「よろしい」


セラが満足そうに頷く。


セラが黒板にチョークを取る。


カツッ、カツッ。


妙に強い音だ。


大きく文字を書く。


【上手くいかなかった時の話】


副題を追記する。


【処理の違い】


「……」


俺はその文字を見つめる。


「処理の違いって……」


「はい」


セラが俺を見る。


「同じ”失敗”でも」


セラが間を置く。


「処理が違います」


「処理って……」


俺は小さく呟く。


「何を処理するの?」


「結果です」


セラが即答する。


「では」


セラが黒板に追記する。


【Admin Magicで失敗した場合】


「……」


俺はその文字を見つめる。


「Admin Magicって、もう使えないんじゃ……」


「例です」


セラが即答する。


「……はい」


セラが黒板に図を描く。


カツッ、カツッ、カツッ。


音が強い。


【状況】


魔法陣を描いた

少し配置がズレていた

実行した


「……」


俺はその図を見つめる。


「状況は分かった」


「では」


セラが黒板を指す。


「Admin Magicで実行した場合」


セラが図を描く。


【結果】


魔法が発動した

でも、間違った結果が出た

それで終わり


「……」


俺はその図を見つめる。


「それで終わり?」


「はい」


セラが淡々と説明する。


「結果が確定しています」


「……」


「やり直せません」


セラが間を置く。


「それが、Admin Magicです」


俺は小さく呟く。


「……でも、もう一回やればいいんじゃ?」


「できます」


セラが頷く。


「……できるんだ」


「はい」


セラが続ける。


「ですが——」


セラが間を置く。


「代償が2回分です」


「……あ」


「1回目の結果は消えません」


セラが淡々と説明する。


「間違った結果は残ったまま」


「代償は支払ったまま」


「2回目を実行すれば——」


セラが間を置く。


「代償がさらに増えます」


「……」


俺は黙り込む。


「つまり——」


セラが続ける。


「失敗は、そのまま残ります」


セラが黒板に巨大な文字を書く。


カツッ、カツッ、カツッ。


【Admin Magic】


結 果 が 即 座 に 確 定 す る

変 更 で き な い


「……」


俺はその文字を見つめる。


「文字、でかくない?」


「視覚的補助です」


セラが即答する。


「12回目!」


「……」


俺は考える。


Admin Magic。


一発で決まる。


でも、失敗したら取り返しがつかない。


「……」


俺は小さく呟く。


「……それ、Admin Magicの方が良くない?」


「……?」


セラが俺を見る。


「だって」


俺は続ける。


「一発で決まるなら」


「即座に結果が出るなら」


「便利じゃん」


「……」


セラが何も言わない。


ただ、じーっと俺を見ている。


「……」


「場合によります」


セラが静かに言う。


「場合って!?」


「育成順です」


セラが即答する。


「また!?」


「では」


セラが黒板を消す。


サッ、サッ。


「次」


セラが新しい図を描く。


カサ……カサ……


音が弱い。


「……音まで演出してる!?」


「視覚的補助です」


セラが即答する。


「13回目!」


セラが黒板に文字を書く。


【True Magicで失敗した場合】


今度は極小の文字だ。


「……」


俺はその文字を見つめる。


「文字、小さくない?」


「視覚的補助です」


セラが即答する。


「14回目!」


「……もう何も言わない」


「同じ状況です」


セラが説明する。


「魔法陣を描いた」


「少し配置がズレていた」


「実行した」


セラが続ける。


【結果】


魔法が発動した

でも、間違った結果が出た


「……」


俺はその図を見つめる。


「……同じじゃん」


「はい」


セラが頷く。


「ここまでは、同じです」


「……ここまでは?」


セラが黒板に追記する。


【その後】


魔法が揺らいだ

結果が少し変わり始めた


「……え?」


俺は思わず前のめりになる。


「揺らいだ?」


「はい」


セラが淡々と説明する。


「True Magicは不安定です」


「結果が、揺らぎます」


「揺らぐって……」


俺は考える。


「……勝手に変わるってこと?」


「いいえ」


セラが首を振る。


「観測しているから、です」


「……観測?」


「はい」


セラが続ける。


「レイが見ている」


「だから、世界も見ている」


「……」


「見ているから——」


セラが間を置く。


「調整できます」


俺は小さく呟く。


「調整って……」


「リアルタイムで、です」


セラが即答する。


「……!」


「Admin Magicは——」


セラが黒板を指す。


「レンジでチンです」


「……は?」


「実行したら終わり」


セラが説明する。


「失敗したら焦げたまま」


「やり直せば代償が2回分」


「……」


俺は黙り込む。


「True Magicは——」


セラが続ける。


「フライパンです」


「……は?」


「火加減を調整できます」


セラが説明する。


「焦げそうなら火を弱める」


「足りなければ火を強める」


「……」


「でも——」


セラが間を置く。


「不安定です」


「……」


俺は小さく呟く。


「……でも、完璧にはならないんでしょ?」


「はい」


セラが即答する。


「不安定だからです」


「……」


「でも——」


セラが続ける。


「もう一度、試せます」


「……!」


セラが黒板に追記する。


【2回目】


配置を少し直した

魔法が発動した

前より良くなった

でも完璧ではない


「……」


俺はその図を見つめる。


「完璧じゃない?」


「はい」


セラが淡々と説明する。


「でも、前より良くなりました」


「そして——」


セラが続ける。


【3回目】


配置をさらに調整した

魔法が発動した

ほぼ成功した


「……」


俺は黙り込む。


「……何回もやってる」


「はい」


セラが頷く。


「True Magicは成長します」


「やるたびに——」


セラが間を置く。


「少しずつ、良くなります」


俺は小さく呟く。


「……代償は?」


「ありません」


セラが即答する。


「……」


「何回やっても?」


「はい」


セラが頷く。


「自分のものだからです」


セラが黒板に極小の文字を書く。


カサ……カサ……


【True Magic】


結果が揺らぐ

変更できる

失敗が情報になる

代償がない


「……」


俺はその文字を見つめる。


「……違いすぎない?」


「仕様です」


セラが即答する。


「では」


セラが黒板に図を描く。


カツ、カツ。


【Admin Magic】


入力 → [完成品BOX] → 出力(確定)

代償徴収


【True Magic】


入力 → [揺らぎ空間] ⇄ 観測・調整

↓ ↑ ↓

出力(変動)


「……」


俺はその図を見つめる。


「BOXって!?」


「完全にプログラムじゃん!」


「視覚的補助です」


セラが即答する。


「15回目!」


「……」


「では」


セラが俺を見る。


「質問です」


「Admin MagicとTrue Magic」


「どちらが良いですか?」


「……」


俺は考える。


Admin Magicは即座に結果が出る。


でも失敗は残る。


True Magicは揺らぐ。


でも何度も試せる。


「……」


「答えは——」


セラが間を置く。


「聞きません」


「またか!」


「では」


セラが黒板を指す。


「具体例です」


「……まだあるの?」


「はい」


セラが頷く。


「大切な例です」


セラが黒板に新しい図を描く。


【第6章のレイ】


Admin Magicで戦闘魔法を使った

代償が発生した

でも、一発で決まった


「……」


俺は固まる。


「……あれ、Admin Magicだったの?」


「はい」


セラが頷く。


「代償がありましたね」


「……そういえば」


「第7章のレイ」


セラが続ける。


【測定器を作った時】


最初は揺らいだ

でも何度も試した

少しずつ安定した


「……」


俺は気づく。


「……あれ、True Magicだったんだ」


「はい」


セラが頷く。


「True Magicだから、できました」


「Admin Magicでは——」


セラが説明する。


「あの調整は、できません」


「……」


「なぜなら——」


セラが間を置く。


「Admin Magicは完成品です」


「成長の余地が、ありません」


「……!」


俺は小さく呟く。


「……じゃあ、俺は——」


「はい」


セラが頷く。


「True Magicに切り替わりました」


「……」


「だから——」


セラが続ける。


「成長できます」


セラが黒板に大きく文字を書く。


【まとめ】


Admin Magic → 結果が即座に確定する

True Magic → 結果が揺らぎ続ける


「……」


俺はその文字を見つめる。


「確定と揺らぎ……」


「Admin Magicは」


セラが説明する。


「結果を保証します」


「でも、変更できません」


「……」


「True Magicは」


セラが続ける。


「結果を保証しません」


「でも、変更できます」


俺は小さく呟く。


「……どっちがいいの?」


「……」


セラが何も言わない。


ただ、黒板を見ている。


「……」


「答えは——」


セラが俺を見る。


「ありません」


「どちらも」


セラが続ける。


「仕様です」


「良し悪しではありません」


「……」


「ただ——」


セラが間を置く。


「処理が違います」


「復唱」


セラが指示棒を振る。


ピシッ。


「……同じ失敗でも、処理が違う」


「続けて」


「……Admin Magicは結果が確定する」


「続けて」


「……True Magicは結果が揺らぐ」


「続けて」


「……揺らぎは、調整できる」


「最後」


「……調整は、成長になる」


「よろしい」


セラが微笑む。


「では」


セラが俺を見る。


「理解できなくても、問題ありません」


「……」


「今は」


セラが続ける。


「処理の違いを知っていれば、十分です」


「……」


「意味は——」


セラが間を置く。


「順番通りです」


俺は小さく呟く。


「……またそれ」


「はい」


セラが頷く。


「育成順です」


「……」


「では、拍手は——」


セラが俺を見る。


「処理の違いに感謝を込めて」


「……」


パチパチパチ。


「次」


セラが続ける。


「揺らぎに励ましを込めて」


「……え?」


パチパチパチ。


「最後」


セラが指示棒を振る。


「確定に哀悼を込めて」


「哀悼!?」


「……」


セラがじーっと俺を見る。


「……はい」


パチパチパチ。


「本日の講座はこれで終了です」


セラが指示棒を置く。


「お疲れ様でした」


目がしいたけになっている。


気がつくと、また宿の部屋に戻っていた。


ノートは机の上。


時間は一秒も経っていない。


「……」


俺はノートを見つめる。


Admin Magic → 結果が即座に確定

True Magic → 結果が揺らぐ


「処理が違う」


俺は小さく呟く。


「……」


俺は考える。


間違った結果が出た時。


Admin Magicなら、そのまま確定。


True Magicなら、揺らいで調整できる。


「……」


「揺らぎって、つまり——」


俺は気づく。


「リアルタイムで直せるってこと?」


「でも」


俺は考え込む。


「一発で決まる方が強いよな……」


「確定する方が、便利だろ」


「……」


「揺らぎって、言い方変えただけで——」


「不安定ってことじゃないか」


「……でも」


俺は小さく呟く。


「セラはそう言わない」


「……」


「ってことは——」


俺は気づく。


「まだ、何か隠してる」


俺はノートを開く。


第7章。


測定器を作った時。


最初は揺らいだ。


でも、何度も試した。


少しずつ、安定した。


「……」


「あれ、True Magicだったのか」


「そして——」


俺は気づく。


「第6章までは、Admin Magic」


「一発で決まった」


「でも、代償があった」


「……」


「揺らがなかった」


「調整できなかった」


俺は窓の外を見る。


東の方角。


塔がある方向。


「……」


「塔の中で、何か上手くいかなかったら——」


「Admin Magicなら、一発で詰む」


「でもTrue Magicなら——」


俺は小さく呟く。


「何度でも、調整できる」


「つまり」


俺は考える。


「これから先——」


「揺らぎが、必要になる」


「一発で決められない状況が、来る」


「……」


「だから、今True Magicなのか」


俺は拳を握る。


「True Magicは不安定」


「でも——」


俺は小さく呟く。


「諦めなければ、少しずつ良くなる」


「……」


「それが、True Magicなんだ」


-----

【第10講・終】

-----

次回予告


セラ「次回は——」


レイ「次回は?」


セラ「戻れなかった場合の話です」


レイ「……それ、今より嫌なんだけど」


セラ「想定内です」


レイ「便利な言葉すぎない?」


セラ「理解できなくても問題ありません」


レイ「またそれ!」


セラ「育成順です」


レイ「順番ほんと信用ならない!」


セラ「……拍手は?」


レイ「……俺、安定版から体験版に戻された!?」


セラ「……」


セラ「視覚的補助です」


レイ「何が!?」


セラ「……拍手は?」


レイ「……はい」


パチパチパチ。


レイ

「……先生、もし俺がこれから先、フライパン(True Magic)の火加減を間違え続けて、調整すら間に合わなくなったらどうなるんですか?」


セラ

「そうかもね」


レイ

「“そうかも”じゃないですよ! その時は、もう二度と食べられない黒焦げ(確定失敗)が残るだけなんですか?」


セラ

「長く仕様に浸ってるとさ。どこまでが失敗で、どこからが成長の過程か、分からなくなるんだよ。完璧に焦げたなら、それはそれで一つの『完成品』かもしれないしね」


レイ

「……」


(チャイムが鳴る)


セラ

「気になるなら、あとで見返せばいいよ」


レイ

「……はい」

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