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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
境界線の観測者 ―身分なき少女と、許可深度を超過した少年の2週間―
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【第9講:セラ先生の世界講座】魔法の種類について

レイ

「先生、前から気になってたんですけど。俺の魔法、最近ちょっと手触りが違うっていうか……」


セラ

「うん。切り替わったからね」


レイ

「切り替わった? 設定変更的なやつですか?」


セラ

「設定っていうか、名前が付いただけだよ。ほら、今まで使ってたのが『レンタル品』で、今使ってるのが『自分の道具』ってだけ」


レイ

「……いや、それって結構な大事件じゃないですか?」


セラ

「そう? みんな気づかずに使ってるよ。ただ、名前を知らないだけ」

同じ魔法に見えて、違うもの


パチ、パチ、パチ。


「……」


またこの空間だ。


「よく来ましたね」


セラが教壇に立っている。


ちびキャラのまま、指示棒を持って。


「今回は何?」


俺は小さく呟く。


「今回は——」


セラが間を置く。


「名前を付けるだけです」


「……名前?」


俺は思わず固まる。


「名前を付けるだけ?」


「はい」


セラが頷く。


「ですが」


セラが指示棒を振る。


ピシッ。


「大切な名前です」


「……」


嫌な予感しかしない。


「では、第9講を始めます」


「拍手は——」


セラが俺を見る。


「名前を覚える覚悟を決めてから、どうぞ」


「覚悟!?」


「……」


俺は戸惑いながら深呼吸する。


パチ、パチ。


「よろしい」


セラが満足そうに頷く。


「では、始めます」


セラが黒板にチョークを取る。


大きく文字を書く。


【魔法の種類について】


副題を追記する。


【同じ魔法に見えて、違うもの】


「……」


俺はその文字を見つめる。


「魔法の種類って……」


「はい」


セラが俺を見る。


「魔法には、種類があります」


セラが黒板に追記する。


【魔法の分類】


・Admin Magic

・True Magic


「……」


俺は黒板を見る。


「Admin Magic?」


「True Magic?」


「はい」


セラが頷く。


「すでに、使っています」


「え?」


「レイは」


セラが俺を見る。


「両方、使ったことがあります」


「……」


俺は考える。


両方?


「でも、俺が使ってる魔法って……」


「同じに見えます」


セラが即答する。


「……」


「ですが——」


セラが間を置く。


「違います」


セラが黒板を指す。


「違いは、性能ではありません」


「……」


「仕様が、違います」


「仕様……?」


「はい」


セラが頷く。


「名前が、違います」


「……それ仕様じゃなくて分類じゃない?」


「視覚的補助です」


「10回目!」


「では」


セラが黒板に新しい図を描く。


カツ、カツ、カツ。


妙に丁寧に、大きく文字を書く。


【Admin Magic】

完 成 品

代償が発生する

結果が安定している

再現性が高い


「……」


俺はその図を見つめる。


文字、でかくない?


「これは」


セラが説明する。


「レンタル品です」


「レンタル……?」


「はい」


セラが続ける。


「いつでも使える」


「誰が使っても同じ性能」


「便利です」


「……」


「即座に結果が出ます」


セラが間を置く。


「ですが——」


「返却必須です」


「返却?」


「代償です」


セラが黒板を指す。


「……」


俺は小さく呟く。


「つまり、借り物?」


「その通りです」


セラが頷く。


「強いじゃん」


「はい」


セラが淡々と答える。


「便利じゃん」


「はい」


「……」


「普通の魔法じゃん」


「……」


セラが何も言わない。


ただ、じーっと俺を見ている。


「……」


「では、次」


セラが黒板に新しい図を描く。


カツ、カツ。


今度は、妙に小さく文字を書く。


【True Magic】

育成型

代償が発生しない

結果が揺らぐ

毎回変化する


「……」


俺はその図を見つめる。


文字、小さくない?


「サイズで印象操作してない!?」


「視覚的補助です」


即答。


「11回目!」


「これは」


セラが説明する。


「自分の道具です」


「自分の……?」


「はい」


セラが続ける。


「使い込むほど馴染む」


「最初は不安定」


「でも、成長します」


「……」


「代償は、ありません」


セラが間を置く。


「自分のものだからです」


「……」


俺は小さく呟く。


「……使いにくくない?」


「はい」


セラが即答する。


「え?」


「不安定です」


セラが淡々と説明する。


「結果は保証されません」


「時間がかかります」


「……」


「弱くない?」


俺は思わず聞く。


「……」


セラが何も言わない。


ただ、黒板を見ている。


「……」


「では」


セラが俺を見る。


「質問です」


「レンタル品と自分の道具」


「どちらが良いですか?」


「……え?」


俺は考える。


レンタル品。


いつでも使える。


便利。


でも返却必須。


自分の道具。


最初は不安定。


でも、成長する。


代償なし。


「……」


「答えは——」


セラが間を置く。


「聞きません」


「え!?」


「質問しただけです」


セラが淡々と言う。


「……」


「では、次」


セラが黒板に追記する。


【現在のレイ】


・Admin Magic → 使用不可

・True Magic → 使用中


「……」


俺はその文字を見つめる。


「……え?」


「待って」


俺は手を挙げる。


「俺、Admin Magic使えないの?」


「はい」


セラが頷く。


「……」


俺は小さく呟く。


「じゃあ俺、課金解除された?」


「……」


「無料版に戻された!?」


「……」


セラがじーっと俺を見る。


「……違うって言ってよ!」


「奪われたわけではありません」


セラが静かに言う。


「切り替わっただけです」


「……」


「元に戻った、とも言えます」


「元に戻った……?」


「はい」


セラが頷く。


「仕様的には、いいえ」


「……」


俺は考える。


元に戻った。


切り替わった。


「……」


意味が分からない。


でも、セラは続ける。


「第1講から第8講まで」


セラが俺を見る。


「すべて、True Magicの話でした」


「……え?」


「育成型の魔法」


セラが説明する。


「代償が発生しない魔法」


「揺らぐ魔法」


「毎回変化する魔法」


「……」


「これらは全て」


セラが間を置く。


「True Magicの特徴です」


「……」


俺は小さく呟く。


「……じゃあ、あの光球も」


「True Magicです」


セラが即答する。


「測定器も?」


「True Magicです」


「第7章11話で使った魔法も?」


「True Magicです」


「……」


「では」


セラが黒板を指す。


「質問です」


「第1章から第6章で使っていた魔法は?」


「……」


俺は考える。


あの頃の魔法。


代償があった。


安定していた。


「……Admin Magic?」


「正解です」


セラが頷く。


「第7章からは?」


セラが続ける。


「……True Magic」


「正解です」


「……」


俺は小さく呟く。


「いつ切り替わったの?」


「……」


セラが間を置く。


「本編を読み返してください」


「講座で教えてよ!?」


「分類上、そうなります」


セラが淡々と言う。


「……」


俺は黙り込む。


知らずに使ってた。


ずっと、True Magicを。


「今さら言われても……」


俺は小さく呟く。


「はい」


セラが頷く。


「ですが、大切な名前です」


「では」


セラが黒板を指す。


「もう一つ、質問です」


「……まだあるの?」


「はい」


セラが俺を見る。


「第7章11話」


「漁師さんに見つかりそうになった時」


「……」


俺は思い出す。


あの時、測定器を咄嗟にしまった。


何も言い訳しなかった。


「あの時、レイは」


セラが続ける。


「測定器を即座にしまいましたね」


「……うん」


「あれは——」


セラが間を置く。


「True Magicの判断です」


「……え?」


「Admin Magicでは」


セラが説明する。


「あの判断はできません」


「……」


「なぜなら——」


セラが黒板を指す。


「Admin Magicは、完成しています」


「成長の余地が、ありません」


「……」


「True Magicは——」


セラが俺を見る。


「まだ、完成していません」


「……つまり?」


「成長します」


セラが微笑む。


「……!」


セラが黒板に大きく文字を書く。


【まとめ】


・魔法は同じに見えて、違う

・違いは性能ではなく、仕様

・Admin Magicは完成品

・True Magicは成長型


「……」


俺はその文字を見つめる。


性能じゃなくて、仕様。


完成品と成長型。


「……」


何か、引っかかる。


でも、何が引っかかるのか分からない。


「復唱」


セラが指示棒を振る。


ピシッ。


「……魔法は同じに見えて、違う」


「続けて」


「……違いは性能ではなく、仕様」


「続けて」


「……Admin Magicは完成品」


「最後」


「……True Magicは成長型」


「よろしい」


セラが微笑む。


「では」


セラが俺を見る。


「理解できなくても、問題ありません」


「……え?」


「今は」


セラが続ける。


「名前を知っていれば、十分です」


「……」


「意味は——」


セラが間を置く。


「順番通りです」


「……」


俺は小さく呟く。


「……よく分かんないけど」


「はい」


「使えてるなら、いいか」


「はい」


セラが頷く。


「それで十分です」


「では、拍手は——」


セラが俺を見る。


「Admin Magicに敬意を込めて」


「使えないのに!?」


「……」


セラがじーっと俺を見る。


「……」


パチパチパチ。


「次は——」


セラが続ける。


「True Magicに励ましを込めて」


「弱いやつに!?」


「……」


セラがじーっと俺を見る。


「……はい」


パチパチパチ。


「本日の講座はこれで終了です」


セラが指示棒を置く。


「お疲れ様でした」


目がしいたけになっている。


「……」


俺は黙り込む。


Admin Magic。


True Magic。


完成品と成長型。


「……」


「これだけ?」


俺は思わず呟く。


「はい」


セラが即答する。


「名前を付けただけ?」


「はい」


「……」


「なんか、拍子抜け」


「……」


セラが何も言わない。


ただ、微笑んでいる。


気がつくと、また宿の部屋に戻っていた。


ノートは机の上。


時間は一秒も経っていない。


「……」


俺はノートを見つめる。


Admin Magic = 完成品 / レンタル / 代償あり

True Magic = 成長型 / 自分のもの / 代償なし


「名前が付いただけ」


俺は小さく呟く。


「……でも」


俺は考える。


「なんで今、教えたんだろう」


セラは順番にこだわる。


育成順。


必要な順番。


「……」


「今、必要だから教えた」


俺は気づく。


「つまり、これから——」


俺は窓の外を見る。


東の方角。


塔がある方向。


「この名前が、必要になる」


俺はノートを開く。


第7章11話。


漁師さんに見つかりそうになった時。


測定器を咄嗟にしまった。


「あれ、True Magicの判断だったのか」


俺は小さく呟く。


「Admin Magicでは、できない判断」


「……」


俺は考える。


Admin Magicは完成品。


成長の余地がない。


True Magicは成長型。


まだ完成していない。


「……」


「つまり」


俺は気づく。


「……なんか、引っかかる」


「でも、考えても分からない」


「……」


「……待って」


俺は黙り込む。


元に戻った。


切り替わった。


「元に、戻った……」


俺は小さく呟く。


「つまり、Admin Magicの方が——」


「……」


考えても分からない。


でも、何か引っかかる。


「……まあ、いいか」


俺はノートを閉じる。


「セラが言うなら、順番通りなんだろう」


俺は窓の外を見る。


東の方角。


塔がある方向。


「Admin MagicとTrue Magic」


俺は小さく呟く。


「この名前が、必要になる時が来る」


「……」


俺は拳を握る。


「その時、意味が分かる」


-----

【第9講・終】

-----

次回予告


セラ「次回は——」


レイ「次回は?」


セラ「上手くいかなかった時の話です」


レイ「え、また失敗の話?」


セラ「……」


セラ「想定内です」


レイ「何が想定内なの!?」


セラ「すべてです」


レイ「抽象的!」


セラ「理解できなくても問題ありません」


レイ「それ毎回言ってない!?」


セラ「育成順です」


レイ「順番に納得いかない!」


セラ「……」


セラ「拍手は——」


レイ「もう帰る!」


セラ「帰れません」


レイ「……はい」



レイ

「……先生、さっき『元に戻った』って言いましたよね。それって、俺が最初からこっち(True Magic)を使うはずだったってことですか?」


セラ

「そうかもね」


レイ

「そうかもって……じゃあ、今までのAdmin Magicは何だったんですか」


セラ

「長く仕様に触れてるとさ。どこまでが借り物で、どこからが自分なのか、分からなくなるんだよ。名前を付けたところで、何かが劇的に変わるわけじゃないしね」


レイ

「……」


(チャイムが鳴る)


セラ

「気になるなら、あとで見返せばいいよ」


レイ

「……はい」

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