【第7章 第27話】 最後の線
最後の線が、つながる。
世界が、動き出す。
レイは、まだ知らない——この修復が、何を始めるのかを。
朝。
ギルドの前。
レイが測定器を取り出す。
手を握る。開く。
マナの感覚を確かめる。
「今日で、全部つながる……!」
セラフィナが隣に立つ。
「楽しみですね」
「うん!」
エルネストが頷く。
「準備はいいか」
「はい!」
レイが先に歩き出す。
セラフィナが続く。
「やっと、試せます」
「最後の一箇所」
港。
岩場を歩く。
波の音。
潮が引いている。
レイが塔を見る。
青い光。
脈動。
六秒。
明るい。
「待っててくれてる……」
セラフィナが測定器を向ける。
「濃度、また少し下がってます」
「温度も安定してる」
レイが笑う。
「今日で、完璧にする」
海底。
扉を開ける。
通路を抜ける。
柱の部屋。
青い光。
脈動。
六秒。
音。
力強い。
規則的。
レイが柱に近づく。
窪み。
手を当てる。
「開けます」
指を入れる。
マナを流す。
光る。
カチン。
扉が開く。
核石。
浮いてる。
脈動。
六秒。
明るい。
レイが触れる。
視界が揺れる。
青い空間。
核石。
線。
螺旋状。
四つ目と七つ目——光ってる。
マナが、流れてる。
十一個目。
途切れてる。
『……来た』
声。
嬉しそう。
「うん。最後、直すね」
『……ありがとう』
『……最後……これで……』
『……お願い』
レイが深呼吸する。
「十一個目」
手の中。
マナが、集まる。
温かい。
びりっとした感覚。
「伸ばす」
マナが、糸になる。
細く。
長く。
レイが手を動かす。
線に、近づく。
十一個目。
途切れてる。
一番、深い。
「……届け」
マナの糸を、伸ばす。
揺れる。
呼吸を整える。
セラフィナの声。
『レイ、大丈夫です』
落ち着く。
もう一回。
伸ばす。
もっと。
「届いて……!」
マナの糸が、線に触れた。
ビリッ。
衝撃。
強い。
「うっ……!」
つながった。
熱い。
マナが、流れ込む。
線に、染み込む。
光る。
『……あ』
『……つながった』
『……全部……!』
核石の声が、震えてる。
レイが笑う。
「やった……!」
視界が、戻る——
柱が、震えた。
「あ……?」
光が、強くなる。
青。
緑。
赤。
黄。
色が、変わる。
早く。
脈動が、速くなる。
六秒。
五秒。
四秒。
三秒。
「レイ!」
セラフィナが手を取る。
「下がって!」
二人、後ろに下がる。
エルネストも。
柱の光が、白くなる。
眩しい。
音が、大きくなる。
低く。
力強く。
部屋全体が、震えてる。
マルコが叫ぶ。
「マナ濃度……!」
「上がった! 下がった!」
「循環してる……!」
エルネストが叫ぶ。
「外に出るぞ!」
全員、走る。
通路を抜ける。
階段を上がる。
岸。
岩場に出る。
振り返る。
塔。
光ってる。
白く。
強く。
脈動してる。
規則的。
美しい。
音が、聞こえる。
低く。
力強く。
レイが呟く。
「動いてる……」
マルコが測定器を見る。
「温度……十度下がった!」
レイが驚く。
「十度……!?」
「マナ濃度も……半分以下!」
セラフィナが測定器を向ける。
「本当です……」
エルネストが頷く。
「循環が……」
「完全に、回復した」
レイが塔を見る。
光。
白から——
青に。
柔らかい、青。
脈動。
三秒。
規則的。
「ちゃんと、動いてる……」
ガルムが呟く。
「静かになった……」
「落ち着いてる」
父が手を置く。
「よくやった」
レイが笑う。
「ありがとう」
でも——
塔を見る。
光が、変わった。
細い、光の柱。
青い。
真っ直ぐ。
空に向かって。
「あれ……!」
セラフィナが測定器を向ける。
「マナが……」
「上に、向かってます」
エルネストが呟く。
「信号……?」
レイが測定器を向ける。
光の柱。
マナの反応。
強い。
「これ……」
「何かに、送ってる?」
セラフィナが頷く。
「かもしれません」
光の柱が、空に届く。
そして——
広がった。
薄く。
広く。
空全体に。
青い光。
レイが呟く。
「すごい……」
「世界全体に……?」
セラフィナが測定器を見る。
「マナ濃度……」
「塔から離れた場所でも、下がってます」
エルネストが頷く。
「塔が、マナを……」
「世界に、戻してる」
レイが振り返る。
「じゃあ、これが……」
「塔の、役目……」
「世界を、支えてる」
セラフィナが頷く。
「はい……」
レイが測定器を見る。
マナの流れ。
塔から。
空へ。
世界へ。
「でも……」
「これ、他の塔にも届いてる?」
セラフィナが呟く。
「……かもしれません」
「信号、なら……」
レイが笑う。
「試したい」
「他の塔も、反応してるか」
「確かめたい」
夜。
宿の窓から塔を見る。
青い光。
脈動。
三秒。
空に、伸びてる。
広がってる。
「ちゃんと、動いてる……」
セラフィナがドアをノックする。
「レイ、入ります」
「うん」
扉が開く。
隣に座る。
窓を見る。
「すごかったですね」
「うん」
レイが測定器を取り出す。
スケッチを開く。
「ねえ、セラ」
「はい?」
「この光……」
「他の塔にも、届いてると思う?」
セラフィナが呟く。
「……届いてるかもしれません」
「信号、なら……」
レイが頷く。
「だよね」
「じゃあ、他の塔も……」
「何か、変わってるかも」
セラフィナが測定器を見る。
「確かめたいですか?」
「うん!」
「明日、ギルドに聞いてみる」
「他の塔の情報、あるかも」
セラフィナが微笑む。
「レイは、諦めませんね」
「だって、面白いじゃん」
「塔が、全部つながってたら……」
「世界中のマナが、循環してるってことでしょ?」
「見てみたい」
セラフィナが頷く。
「はい……」
「私も」
窓を見る。
塔の光。
青い。
脈動。
三秒。
空に、伸びてる。
「でも……」
セラフィナが呟く。
「この光……」
「何かを、呼んでるかもしれません」
レイが振り返る。
「呼んでる?」
「はい」
「信号、なら……」
「どこかに、届いてる」
レイが笑う。
「なら、もっと面白い」
「何が来るか、見たい」
セラフィナが手を取る。
「危ないかもしれません」
「大丈夫」
「セラが一緒だから」
「一緒に、見よう」
セラフィナが微笑む。
「はい」
「一緒に」
窓を見る。
塔の光。
青い。
脈動。
三秒。
空に、伸びてる。
広がってる。
世界が、動き出した。
この光が、何を呼ぶのか。
二人は、まだ知らない。
でも——
知りたい。
試したい。
確かめたい。
それが、レイだから。
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第7章 第27話 完
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核石の内部回路、最後の修復完了。
塔が本来の役目を取り戻し、青い光が空に伸びて世界にマナを循環させ始める。
しかし、この光は信号——何かを呼んでいるかもしれない。
レイは他の塔の反応を確かめたいと、次の探究へ目を向ける。
次は。何が来るのか?




