【第7章 第26話】 二つ目の線
昨日の成功が、確かな手応えに変わっていた。
二箇所目は、四つ目よりも深く、遠い場所。
マナの糸を伸ばすその先に、レイは世界の「呼吸」をより鮮明に感じようとしていた。
朝。
ギルドの前。
レイが手を握る。開く。
マナの感覚を確かめてる。
「昨日より、上手くできるかな……」
セラフィナが隣に立つ。
「大丈夫ですか?」
「うん。疲れ、とれた」
レイが測定器を取り出す。
「もっと良くなってるかも」
エルネストが頷く。
「行くぞ」
「はい!」
レイが先に歩き出す。
港。
岩場を歩く。
波の音。
潮が引いている。
レイが塔を見る。
青い光。
脈動。
六秒。
昨日より、少し明るい。
「やっぱり……!」
セラフィナが測定器を向ける。
「濃度、昨日より低いです」
マルコが頷く。
「温度も、一度下がってる」
エルネストが呟く。
「一箇所で、これだけ変わるか」
レイが塔を見る。
「今日、もう一箇所」
「ああ」
海底。
扉を開ける。
通路を抜ける。
柱の部屋。
青い光。
脈動。
六秒。
音が、昨日より力強い。
レイが柱に近づく。
窪み。
手を当てる。
「開けます」
指を入れる。
記号をなぞる。
逆向きに。
マナを流す。
光る。
カチン。
扉が開く。
核石。
浮いてる。
脈動。
六秒。
昨日より、明るい。
レイが手を伸ばす。
石に、触れる。
視界が揺れる。
青い空間。
核石。
線。
螺旋状。
途切れてる。
二箇所。
七つ目と、十一個目。
四つ目は——つながってる。
『……来た』
声。
嬉しそう。
「うん。来た」
「今日、もう一箇所」
『……ありがとう』
『……楽になった。少し』
『……でも、まだ……』
「分かってる。あと二箇所、直す」
沈黙。
脈動。
六秒。
『……信じてる』
レイが深呼吸する。
呼吸を整える。
「二箇所目……七つ目」
手の中。
マナが、集まる。
温かい。
びりっとした感覚。
「伸ばす……」
マナが、形を持つ。
糸のように。
細く。
長く。
慣れてきた。
レイが手を動かす。
マナの糸が、伸びる。
線に、近づく。
七つ目。
下から。
途切れてる。
四つ目より——深い。
「遠い……」
もっと伸ばす。
マナの糸が、揺れる。
不安定。
「あ……」
集中が、途切れそう。
セラフィナの声が、聞こえた。
遠く。
でも——
確かに。
『レイ、呼吸整えて』
レイが息を吸う。
吐く。
ゆっくり。
マナの糸が、落ち着く。
「もう一回……」
伸ばす。
線に、近づく。
もう少し。
もう少し——
「届け……!」
マナの糸が、線に触れた。
ビリッ。
衝撃。
つながった。
「よし……!」
熱い。
マナが、流れ込んでくる。
核石から。
マナの糸が、光る。
青く。
線と、つながる。
流れる。
マナが、糸を通って。
線に、染み込む。
途切れた部分。
マナが、満ちる。
つながる。
光る。
『……あ』
『……つながった』
『……七つ目、つながった』
レイが笑う。
「うん……!」
マナの糸が、揺れる。
でも——
昨日より、安定してる。
呼吸を整える。
マナを、安定させる。
糸が、落ち着く。
光が、強くなる。
線に、マナが染み込む。
もっと。
もっと。
「……これで……」
マナの糸を、引く。
ゆっくり。
戻す。
手の中に。
視界が、戻る。
柱。
エルネスト。
セラフィナ。
レイが手を離す。
「できた……!」
セラフィナが駆け寄る。
「レイ!」
「大丈夫。二箇所目、つながった」
エルネストが頷く。
「疲れは?」
「昨日より、マシ」
「慣れてきたか」
「うん」
セラフィナが呟く。
「レイ、昨日より集中してました」
「そう?」
「はい。マナの糸、安定してた」
レイが笑う。
「セラが見ててくれたから」
岸。
岩場に座る。
マルコが測定器を見る。
「温度、三度下がった」
セラフィナが測定器を向ける。
「濃度も、もっと下がりました」
エルネストが呟く。
「二箇所で、計五度か」
「循環が、回復してる……」
レイが頷く。
「あと一箇所」
エルネストが手を置く。
「明日だ。今日は、ここまで」
「はい」
二人、顔を見合わせる。
「次は、最後」
「うん」
夜。
宿の窓から塔を見る。
青い光。
脈動。
六秒。
明るい。
昨日より、もっと。
「二箇所、つながった……」
セラフィナがドアをノックする。
「レイ、入ります」
「うん」
扉が開く。
隣に座る。
窓を見る。
「明日で、最後ですね」
「うん。三箇所目」
セラフィナが呟く。
「全部つながったら……塔は、どうなるんでしょう」
レイが振り返る。
「分からない」
「完全に修復されたら……何を、始めるか……」
セラフィナの声が、少し不安そう。
レイが手を取る。
「分からないけど、楽しみだ」
「楽しみ……?」
「うん。塔が、ちゃんと動くところ、見たい」
セラフィナが微笑む。
「……そうですね」
「明日、私も何かできることがあるかも」
「セラが一緒だから、できた」
「レイが、頑張ったんです」
「二人でやった」
セラフィナが頷く。
「はい。二人で」
窓を見る。
塔の光。
青い。
脈動。
六秒。
明るい。
「明日……」
レイが呟く。
「全部、つなぐ」
セラフィナが頷く。
「はい。一緒に」
「うん」
二人。
窓を見る。
塔の光。
脈動。
六秒。
その光が——
もうすぐ、完全になる。
でも——
その先に、何が待ってるか。
分からない。
だから——
楽しみだ。
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第7章 第26話 完
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核石の内部回路、二箇所目の修復完了。
七つ目は四つ目より深く、一度揺れるが呼吸を整え直して成功。
セラがレイの集中度を観察し、二人の協力がより深まる。
温度は計五度低下、循環機能の回復が進行。
明日、最後の一箇所。完全修復後の塔に何が起こるか、不安と期待が交錯する。
次に、塔は何を始めるのか。
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