【第2章 第5話】 密航と最適解
父の船が海賊に狙われるという話を聞き、主人公は家族を守るため、積荷の影に身を潜め密航する。
襲撃を受け、護衛のガルムが傷つき、父の結界が破られそうになる窮地。
その時、主人公の目が捉えたのは、父の結界に潜む「マナの無駄な流れ」だった。
「とうさん、あぶない」
僕は荷物の影で、息を殺してる。
船が——揺れた。
数日前。
父が朝食で言った。
「今回は高純度結晶を運ぶ。海賊に狙われやすい」
「かいぞく?」
「ああ。でも護衛を増やしたから大丈夫だ」
父が僕の頭を撫でる。
「ガルムもいるしな」
(……危ない)
前世の海賊ドラマを思い出す。
狙われたら、どうなるか。
(父さんを——守らなきゃ)
出港の日。
「いってらっしゃい!」
僕は手を振る。
でも——足は動いてた。
積荷の隙間。
小さな空間。
(あそこなら……)
僕は荷物の影に潜り込んだ。
誰にも見つからないように。
息を殺す。
(見つかったら怒られる……でも)
船が動き出す。
(守りたい)
どれくらい経ったか。
船が——揺れた。
「海賊だ!」
ガルムさんの怒鳴り声。
「クソ!」
父の剣を抜く音。
僕はそっと覗く。
黒い服の海賊たちが乗り込んでくる。
「結晶を渡せ!」
「断る!」
海賊が魔法を放つ。
火球。
父が結界を張る。
ドン!
弾かれる——が、結界にひび。
(やばい)
父の結界——古い術式。
効率が悪い。
マナの無駄だらけ。
海賊がもう一度。
氷の槍。
父が間に合わない——
「旦那を守る!」
ガルムさんが飛び出す。
ドスッ!
氷の槍がガルムさんの肩にめり込む。
鮮烈な血の赤。
「ガルム!」
ガルムさんが倒れる。
(ダメだ……このままじゃ!)
僕は動いた。
荷物の影から飛び出す。
「坊ちゃん!?」
「まもる……」
僕は震える手を空中に伸ばす。
父の結界——術式が見える。
光の糸が絡まってる。
無駄な部分。
(ここと……ここ……直す!)
指を動かす。
手が震える。
3歳の体——でも、やるしかない。
結界が光る。
術式が変わる。
無駄が消える。
「何だ!?」
海賊が驚く。
「結界が強化された!?」
父も呆然。
「誰が……」
海賊が再び魔法を放つ。
火球と氷槍の連続攻撃。
でも——
結界が全て弾く。
ひび割れない。
「なんで!?」
海賊が焦る。
僕は——もう一つ。
結界に反射機能を追加。
(これで)
海賊が最後の魔法。
巨大な火球。
それが結界に当たる——
反射される。
「え!?」
火球が海賊船に向かって飛ぶ。
「逃げろ!」
ドカン!
海賊船が炎に包まれる。
「撤退だ!」
海賊が逃げる。
静寂。
父が僕を見る。
「……お前……」
「とうさん……だいじょうぶ?」
僕は笑う。
でも——
手がガタガタ震えてる。
足も。
(怖かった)
遅れて恐怖がドッと来た。
「密航したのか?」
「……うん」
「なんで!?」
「あぶないから……」
父が膝をつく。
「怖くなかったか?」
「……こわかった」
涙が止まらない。
「こわかった……でも……まもりたかった……」
父が僕を抱きしめる。
強く。
「ありがとう……でも、二度とするな」
「……うん」
僕は父の胸で泣いた。
遅れてきた恐怖と安堵が、涙になって溢れた。
ガルムさんが立ち上がる。
肩の傷を押さえながら。
「坊ちゃん……」
「ガルムさん……だいじょうぶ?」
「ああ。お前が守ってくれた」
ガルムさんが僕を見る。
「お前……何者だ?」
「え?」
「3歳で、あんな魔法……」
「……ふつうだよ?」
ガルムさんが苦笑い。
「普通じゃねえよ」
でも、その目は優しい。
「ありがとう。命を救ってくれた」
「えへへ」
(守れた……)
その安心感が、大きかった。
帰港
港に戻った時、母が待ってた。
「おかえり——」
母の言葉が止まる。
僕が船から降りてくる。
「……なんで!?」
「えへへ……」
「密航したの!?」
「……うん」
「なんで!!」
母が僕を抱きしめる。
強く。
「危ないじゃない!」
「でも……まもれたよ!」
僕は誇らしげに言う。
「とうさんと、ガルムさん、まもれた!」
母が黙る。
そして——泣き始めた。
「もう……この子は……」
母が笑いながら泣く。
「怒るべきか、褒めるべきか……」
「ごめんなさい……」
「分かってる……分かってるけど……」
母が僕の頭を撫でる。
「もう、無茶しないで」
「……うん」
その夜
父が部屋に来た。
「今日のこと、話そう」
父がベッドの横に座る。
「お前がやったこと——すごかった」
「えへへ」
「でも、危険だった」
「……うん」
「お前は、まだ3歳だ」
父が真剣な顔。
「守る側じゃない。守られる側なんだ」
「でも——」
「分かってる。お前は特別だ」
父が僕の頭を撫でる。
「でも、それでも……お前は俺たちの子供だ」
「……」
「だから、無理するな」
「……うん」
(でも、守りたい気持ちは変わらない)
エピローグ
その夜、ガルムの部屋。
彼は包帯を巻きながら呟いた。
「あの子は……何者だ?」
空中で術式を書き換える幼児。
反射機能を追加する魔法。
「3歳で、あんなこと……」
ガルムは震える。
「化物か……天才か……」
でも、同時に思う。
「俺を守ってくれた」
その事実が心に残る。
「……恩は返す」
ガルムが決意する。
「この子を……守ろう」
デモン監視システム。
新しいアラート。
```
【異常個体:緊急】
年齢:3歳
事象:実戦魔法使用
評価:極高→厳戒体制
監視:時間単位
対応:次回違反時は強制措置
```
水晶球が激しく脈動する。
そして——
遠くで、影が笑った。
「素晴らしい」
低い声。
「3歳で実戦投入とは」
影が揺れる。
「でも、世界は許さないよ?」
影が消える。
「次は……どう動く?」
翌朝、港の酒場。
冒険者たちが噂してた。
「聞いたか? 商人の船、海賊撃退したって」
「結界が突然強化されたらしい」
「誰がやったんだ?」
「……あの商人の息子」
「あの、コアを見抜いた子か?」
「ああ……」
噂が広がり始める。
《港町の天才児》
《3歳で海賊撃退》
僕は知らない。
自分の名前が——恐怖と共に広がり始めてることを。
-----
第5話 完
-----
密航した船上で、主人公は無意識のシステム干渉で結界を最適化し、さらに反射機能を追加して海賊を撃退する。
この実戦魔法使用により、監視システムは「厳戒体制」へと移行するが、救われたガルムは「恩返し」を決意し、天才児の噂は港に広がり始める。
最適化された選択は、次にどんな形で世界から返ってくるのか。
次回 第2章 第6話 警告:アクセス違反
よろしければ、
ブックマークで続きを追っていただけると嬉しいです。




