7章サブ話①③: 『機密通達 No.447-E』
主人公は、ギルドが過去200年間にわたって一貫して「異常なし」と記録してきた事実にだけ引っかかっていた。
それは長らく組織の定説とされてきたが、この場では特に問題視されていない。
機密通達 No.447-E
分類: 第3級機密
発信元: ギルド中央評議会
発信日: ██月██日
宛先: 全大陸支部長(最高機密扱い)
件名: 古代海洋施設に関する緊急観測指示および情報統制命令
前文
各支部長殿
標記の件につき、以下の通り緊急指示を発する。
本通達は、閲覧後直ちに施錠保管すること。
副本作成、写本持ち出しを禁ず。
違反者には懲戒処分を科す。
1. 事案の概要
本部管轄外の港町支部管内において、説明不能な現象が確認された。
当該地域に存在する古代海洋施設(通称:沈黙の塔)が、理由不明のまま内部状態を変化させている。
当該施設は第2サイクル末期の遺構であり、稼働停止状態にあるはずだった。
※ 過去200年間、本部記録に「異常」の報告は一切ない。
しかし、現在、何かが動いている。
2. 観測された現象
港町調査団より以下の報告を受領した。
∙施設内部温度の██度低下
∙周辺マナ濃度の段階的██
∙発光パターンの質的変化(詳細:██)
∙内部から規則的な██音
上記の変化は、施設が本来の機能を部分的に回復しつつある可能性を示唆する。
ただし、「なぜ」「どのようにして」という問いに対する答えは存在しない。
3. 原因に関する所見
調査団の報告によれば、当該施設の状態変化は██の結果である可能性が指摘されている。
ただし、██、██、██については現在調査中であり、本通達では詳細を記載しない。
※ 本部判断:当該情報は別紙(██ページ)に記載。支部長のみ閲覧可。
我々は、何が起きたのかを理解していない。
ただ、「何かが変わった」という事実だけが存在する。
4. 緊急指示事項
各支部は直ちに以下の対応を実施せよ。
(1) 管轄内古代施設の全数調査
∙過去100年以内に「異常なし」と報告された施設であっても再観測を義務づける
∙観測項目:発光の有無、温度変化、マナ濃度、振動音、周辺環境への影響
∙報告期限:本通達受領後7日以内
重要: 「異常なし」という報告を信用するな。港町も、つい先月まで「異常なし」だった。
(2) 住民からの情報収集
以下のような証言があった場合、速やかに本部へ報告すること。
∙「古い塔が光った」
∙「海(または湖、川)の様子がおかしい」
∙「昔からある石造りの建物が音を立てている」
∙「子供が何かしていた」
※ 最後の項目については、年齢・性別・外見を詳細に記録すること。
(3) パニック防止のための情報統制
∙一般市民への説明は「定期点検」の範囲に留める
∙「古代施設の再稼働」「世界規模の異変」などの文言は絶対に使用しないこと
∙報道機関への情報提供は本部の承認を経ること
理由: 住民のパニックは、ギルドの統制力を失墜させる。本部の威信を守るため、情報は厳重に管理せよ。
5. 本部の見解
現時点において、本事案が他地域へ波及する可能性は██である。
ただし、過去の記録を鑑みるに、古代施設群は何らかのネットワークを形成していた可能性があり、一箇所の変化が連鎖的影響を及ぼすことも██できない。
各支部は最悪のシナリオを想定し、住民避難計画の再確認を行うこと。
「最悪のシナリオ」とは何か?
我々は、それを定義する情報を持たない。
ただ、「前例がない」という事実だけが存在する。
6. 追加情報の取り扱い
本件に関する追加情報は、随時本部より発信する。
各支部長は週次報告の際、古代施設に関する項目を必須記載とせよ。
記載がない場合、「報告漏れ」ではなく「隠蔽」と見なす。
結語
本事案は、我々の理解を超えた事象である可能性を含む。
各支部長の冷静な判断と、迅速な報告を期待する。
ただし、「冷静」であることと、「理解している」ことは別である。
我々は、何も理解していない。
ギルド中央評議会議長 ██████(公印省略)
【未解決事項】
以下の問いに対し、本部は答えを持たない。
1.他の11基の塔は、今後どのような挙動を示すのか?
2.港町の事例は、再現可能なのか?
3.そもそも、誰が? 何を? なぜ?
我々は、問いを持っている。
しかし、問いを持つことと、答えを得ることは別である。
ただ、観測を続けるのみである。
【緊急追記】
本通達作成中、北方支部より緊急報告を受領した。
「北の塔、光が強くなってます」
詳細は不明。
調査中。
—— 通達終了 ——
主人公は、北方支部からも同様の報告が届き始めたことを知らされた。
結果として、各地の古代施設を再観測するという緊急指示が大陸全土へ発信されることになった。
ただ、観測を続ける以外に何ができるのかは分からない。
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