7章サブ話⑩: 『噂の連鎖』
主人公は、街の掲示板に書き込まれた「塔の光が変わった」という複数の証言を眺めていた。
それは住民たちの間で意見が割れているが、この場では単なる噂の一つとして流されている。
街の噂・掲示板的記録
◆ 酒場の声
「見たか?」
「何を?」
「あの子だよ」
「……測定器の?」
「そう。塔に入ったって」
「嘘だろ」
「本当だ」
「子供が?」
「ああ」
「……」
「調査団と一緒に」
「……マジで?」
◆ 市場の囁き
「あの子、何者なんだ」
「九歳でしょ?」
「九歳があんなこと——」
「何ができるの?」
「知らない」
「じゃあ、なんで怖がってるの」
「……分からない」
「でも、怖い」
「ね」
◆ 船着き場の会話
「東の塔、入れるのか?」
「入れるらしい」
「誰が?」
「調査団」
「……で?」
「子供も」
「は?」
「測定器の子」
「何しに」
「知らない」
「……怖いな」
◆ 宿の噂
「数時間後、帰ってきたって」
「全員?」
「全員」
「無事?」
「無事」
「……中で、何があった?」
「誰も言わない」
「言えないのか、言わないのか」
「分からない」
「でも——」
「でも?」
「何かが、変わった」
◆ ギルド前の立ち話
「あの子、何者なんだ」
「普通じゃない」
「普通じゃない、って?」
「分からない。でも、普通じゃない」
「……怖い」
「うん」
「助けてくれるのかな」
「……分からない」
「でも、頼るしかない?」
「……そうなのかも」
◆ 掲示板の走り書き
【塔に入った子供】
・誰か詳細知ってる??
・調査団と一緒らしい
・何を見つけたんだ
・光が変わった気がする
・気のせいだろ
・いや、確かに変わった
・変わってない
・どっちだよ
・あの子、普通じゃない
・神様?
・魔物?
・ただの子供?
・分からない
・誰も教えてくれない
・怖い
・でも、気になる
・近づくな
・頼るしかない
・どっちなんだよ!!
◆ 夜、窓辺の会話
「ねえ、見て」
「何?」
「塔」
「……ああ」
「前より、光ってる?」
「そう見える」
「あの子が、何かしたの?」
「分からない」
「怖い」
「うん」
「……」
「……」
「でも」
「でも?」
「何も、分からない」
◆ 翌朝、路地の立ち話
「昨日、塔に入った子」
「ああ」
「今日も行くらしいよ」
「また?」
「また」
「何をするつもりなんだ」
「知らない」
「教えてくれないの?」
「誰も教えてくれない」
「……怖いな」
「ね」
「でも——」
「でも?」
「止められない」
◆ 港、漁師の独り言
「塔の子、か」
「……」
「俺たちの海を、どうするつもりだ」
「……」
「助けてくれるのか」
「壊すのか」
「……分からない」
「ただ、見てるしかない」
「……神様なのか」
「……魔物なのか」
「……」
「どっちでもいい」
「ただ、終わらせてくれ」
◆ 酒場、深夜
「あの子、神様なのかな」
「神様?」
「だって、普通じゃないでしょ」
「普通じゃない、ってだけで神様?」
「じゃあ、何?」
「……魔物」
「え」
「冗談だよ」
「……冗談、だよね?」
「分からない」
「怖いな」
「怖いね」
「でも、頼りたい」
「……うん」
「でも、怖い」
「……ね」
◆ 街の声、断片
「塔の子」「光を見た子」「何者なんだ」「神様?」「魔物?」「助けてくれる?」「壊す?」「分からない」「怖い」「でも、頼るしかない」「近づくな」「教えてくれない」「誰も知らない」「塔が光ってる」「変わった」「変わってない」「どっちなんだ」「何が始まった」「終わるのか」「始まるのか」「分からない」
◆ 掲示板、最終書き込み
【結局、誰も分からない】
・塔に入った
・何かした?
・してない?
・光が変わった
・変わってない
・どっちだよ
・あの子は、何者?
・神様?
・魔物?
・ただの子供?
・分からない
・でも、確かに
・何かが、始まった
・終わった?
・始まった?
・どっちなんだよ!!!
・誰も教えてくれない
・ギルドも黙ってる
・調査団も黙ってる
・あの子も黙ってる
・誰も、何も、言わない
・ただ、塔が光ってる
・それだけ
— 記録終了 —
(何が始まったのか、誰も知らない。何が終わったのか、誰も知らない。ただ、噂だけが、街を駆け巡る。そして、塔は、光り続ける)
主人公は、周囲の視線を背に受けながら、再び塔へと向かう準備を整えた。
結果として、街の人々が抱く疑問に対して、ギルドも調査団も沈黙を守り続けることになった。
ただ、その光が何を告げているのかは分からない。
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