表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
境界線の観測者 ―身分なき少女と、許可深度を超過した少年の2週間―
104/142

7章サブ話⑧: 『調査団初日報告』

主人公は、調査団のリーダーから観測ノートの内容について問いかけられていた。

専門家たちは、記録の体系性とその作成者の年齢が一致しない点にだけ引っかかっている。

調査団初日報告


機密区分:

レベル3(配布範囲:本部管理部・支部長級以上)


報告日時:

Cycle 3 Year 1500 / Day 33 / 19:00


報告者:

エルネスト・ヴァレンス(古代遺跡調査官・第一級)


調査地:

自由都市連合・港町東方海域『███████』


報告種別:

緊急・第一次接触記録


§1 — 前提の、崩壊

本調査団は、Day 26に編成された。

当初の想定。

「局所的マナ異常。おそらくダンジョン封印の不全。住民の不安を鎮めるため、専門家が『安全宣言』を出す」

———そういう、予定だった。

港町支部で、資料を見るまでは。


§2 — ノート

提出者:レイ・███(9歳・男児)

ノートは、三冊あった。


一冊目。測定記録。

全33日間。一日も、欠かさず。

方向別測定(8方位)。時刻別変化(6時間刻み)。天候との相関。


二冊目。証言記録。

漁師10名以上。日時・場所・内容を分類整理。


 三冊目。図表整理。

発光パターンを記号化(●と_)。時系列グラフ化。


私は、ノートを見た。


——すごい量だな。


いや。


量ではない。


質だ。


これは、ギルド本部の調査官が書く報告書と、同等かそれ以上の体系性を持っている。


私は、表紙を二度見た。


9歳


……九歳で、これを?


§3 — 測定器

設計者:同上(レイ・███)


二層構造の魔法陣。

内層(集約・変換)。

外層(増幅・制御・安定)。


記号間隔の調整により、遠距離測定を実現。

出力(光の強度)とマナ濃度の相関を可視化。


マルコ(測定専門)が、無言でノートを取り始めた。

リディア(記号専門)が、呟いた。

「……配置が、完璧ですね」

私は、何も言えなかった。


この魔法陣は、独学で到達できる領域ではない。

少なくとも、ギルドの初等課程(3年間)を修了した者が設計するレベルだ。

だが、提出者は9歳。

ギルドへの登録記録も、魔法学院への在籍記録も、一切存在しない。


……どうやって?


§4 — スケッチ

記録者:同上(レイ・███)

水深3mの潜水により、塔外壁の記号を写し取り。

螺旋状配置。

12個の記号。

3つずつのグループ化。

記号の向きの違いまで、正確に再現。


リディアが、声を上げた。

「……よく描けてます」

彼女は、古代魔法陣の専門家だ。


各国の遺跡から出土した記号を、数百種類暗記している。

その彼女が、言った。


「でも、意味は分からない」


———初めて見る形だと。


§5 — 6時間

全ての資料の中で、最も重要なのはこれだった。

Day 24〜28における、塔の光の揺らぎパターン。

白色の中に、一瞬だけ他の色が混ざる現象。

その発生時刻が、朝6時、昼12時、夜7時で固定されている。

私は、即座に理解した。


「……規則的すぎる」


リディアが頷いた。


「そうです。これは、何かが制御している証拠です」


マルコが、静かに言った。


「マナ濃度の変化も、同じ時刻に集中しています」


———この瞬間、私たちは理解した。


この塔は、生きている。


§6 — 外周調査(Day 33 / 13:00〜16:00)

距離30m地点で、マナ濃度測定器が飽和。


我々の測定器(ギルド標準型)でも同様。


海水温:周囲より3度高い。

水流:塔の周囲で乱れている。中心に向かって流れている。

記号確認。スケッチの正確性を検証。

———完全一致。


螺旋状配置。12個。3つずつのグループ化。


全て正しい。


低く、規則的な振動音。

周期:約2秒。


ガルム(獣人・護衛)の証言。

「中の動き、まだ速い」


§7 — 何者なのか

私は、彼に問うた。

「君は、どうやってこれを?」

彼は少し考えて、こう答えた。


「……毎日、測ってました。それだけです」

それだけ?

それだけで、ここまで到達できるのか?

いや。

違う。

何かが、おかしい。

この子は、何者なのか?


9歳の子供が、ギルドの専門家が数年かけて設計する魔法陣を、独学で、数週間で作り上げる。


9歳の子供が、古代施設の記号を、水深3mの潜水で、完璧に写し取る。


9歳の子供が、33日間、一日も欠かさず、系統的に記録を続ける。


これは、人間の子供がすることなのか?

それとも——


§8 — 明日

私は、決めた。

彼を連れて行く。

理由は、単純だ。

彼がいないと、何も分からない。


塔の記号。


内部の構造。


6時間の意味。


全て、彼が鍵だ。

だが、私は知っている。

この子を連れて行くことは、何かを、起動させることになる。

塔が、彼を待っているように見える。

まるで、呼んでいるように。


報告者署名:エルネスト・ヴァレンス

次回報告予定:Day 34 / 内部侵入結果


[本部管理部・内部メモ(非公開)]


子供が、ここまで?


いや。


問題はそこではない。


問題は、この子が塔と「何か」を共有している、という事実だ。


9歳の子供が、古代施設の記号を読める。

9歳の子供が、マナ濃度を測定できる。

9歳の子供が、塔の挙動を予測できる。


これは、偶然なのか?


それとも——


塔が、この子を選んだのか?


調査団の報告を待つ。


だが、悪い予感がする。


何かが、始まろうとしている。


そして、私たちは止められない。



[End of Report]

主人公は、明日から調査団に同行して塔の内部へ入ることになった。

結果として、専門家たちが持ち込んだ標準的な測定器ではこれ以上の解析が困難であると判断された。

ただ、観測データが示す規則性が何を意味するのかは分からない。


よろしければ、ブックマークで続きを追っていたいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ