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転生プログラマーが魔法をデバッグしたら、世界OSから監視される件 ―6歳幼児が異世界の仕様をハックし始めた  作者: プラナ
境界線の観測者 ―身分なき少女と、許可深度を超過した少年の2週間―
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【第5講:セラ先生の世界講座】世界が騒がない理由

レイ

「先生、前から気になってたんですけど……。港町の塔にあれだけ異常が出てるのに、なんでギルドも国も動かないんですか?」


セラ

「ああ、それね。世界がまだ『異常だ』って確定させてないからだよ。ほら、パソコンのウイルススキャンだって、判定が出るまでは普通に動くでしょ?」


レイ

「いや、動かしちゃダメなやつですよ、それ。放置してたら手遅れになるじゃないですか」


セラ

「そう?世界にとっては、誤爆して正常なデータを消す方がリスクなんだよ。だから今は、みんなで『様子見』してるだけ。平和だね」



副題:確定していない異常


パチ、パチ、パチ。


「……あ、これ絶対続くやつだ」


気がつくと、また講座空間だった。


さっき「楽しみだね」って思ったばかりなのに。


「正解です」


セラが教壇に立っている。


ちびキャラのまま、指示棒を持って。


「当てても嬉しくない!」


「では、第5講を始めます」


「待って! 安心する時間をください!」


「拍手」


「……はい」


俺は諦めてパチパチと手を叩く。


セラが満足そうに頷く。


「でもさ……」


俺は手を挙げる。


「港町の塔、明らかにヤバくない?」


セラが指示棒を止める。


「……」


「マナの測定器、飽和するレベルだよ?」


俺は続ける。


「光は出てるし、海は暖かいし、魚は逃げてるし……」


「それなのに」


俺は黒板を見る。


「誰も調べに来ないの、おかしくない?」


セラがじーっと俺を見る。


「……怖っ」


「ギルドも」


俺は指を折る。


「国も」


「教会も」


「魔法研究機関も」


「誰一人、調べに来ない」


俺はセラを見る。


「これって……」


セラが指示棒を振る。


「正常です」


「え?」


セラが黒板にチョークを取る。


大きく文字を書く。


【世界は、異常を即座に排除しない】


「……」


俺はその文字を見つめる。


「いや排除して!?」


俺は思わず叫ぶ。


「なんで観察するの!? ウイルスでしょ!?」


「質問は後で」


指示棒がピシッと鳴る。


「またこのパターン」


俺は小さく呟く。


セラが黒板に新しい文字を書く。


ゆっくりと、丁寧に。


【確定していない異常】


「……なにそれ」


俺は思わず声を上げる。


セラが俺を見る。


「本日の核心概念です」


「……」


「今から説明します」


セラが指示棒を振る。


「質問は後で」


「まだ何も言ってない!」


セラが黒板に追記する。


【確定していない異常とは】


・危険かどうか判断できない

・世界にとって敵か味方か不明

・観測データ不足


「世界は」


セラが俺を見る。


「分からないものをすぐには叩きません」


「……」


俺は黙り込む。


「それって……」


「質問は後で」


ピシッ。


「これ質問じゃなくて悲鳴!」


「質問は後で」


無慈悲。


「……はい」


「比喩を使います」


セラが黒板に簡単な図を描く。


妙に丁寧に。


【セキュリティソフト】


「概念的に」


セラが俺を見る。


「世界は、ウイルススキャナです」


「……」


俺は呆然とする。


「その概念的に、もう5回目だからね!?」


「……」


セラが無言で指示棒を構える。


「……はい」


「世界は、巨大な監視システムです」


セラが図を指す。


カツ、カツ、カツ。


【ウイルス検出 → 即削除】


妙に丁寧に矢印を描く。


「なんでそこだけ本気なの!?」


「視覚的補助です」


真顔。


「またそのパターンか!」


「確定したウイルスは、即隔離されます」


セラが黒板を指す。


「ですが——」


セラが間を置く。


「未知の挙動は、しばらく観察されます」


カツ、カツ、カツ。


【未知の挙動 → 観察 → 判定待ち】


またしても丁寧な矢印。


「……それ、めっちゃ怖くない?」


俺は思わず呟く。


「あー」


俺は気づく。


「未知の脅威を様子見するやつ!」


「正確です」


セラが頷く。


「褒められても嬉しくない!」


セラが黒板に新しい図を描く。


【世界の異常対応フロー】


①②③④を、妙に丁寧に四角で囲む。


カツ、カツ、カツ、カツ。


「……」


俺は見守る。


① 観測

② 分類

③ 確定

④ 対応


「なんでそこだけ本気なの!?」


「視覚的補助です」


真顔。


「2回目!」


「今、港町の塔は①と②の途中です」


セラが図を指す。


「まだ敵って確定してない……?」


「そうです」


セラが頷く。


「だから、誰も来ないのです」


「……」


俺は呟く。


「俺の人生、ウイルススキャン中だったのかよ……」


セラ「……」


じーっ。


「……はい」


「ちょっと待って」


俺は手を挙げる。


「それって、危なくない?」


「危険です」


セラが即答する。


「……」


「でも、世界は誤爆を嫌います」


セラが黒板に追記する。


【誤認識のリスク】


・無害な現象を潰す危険

・世界の自己修復機能の破壊

・人間の可能性の芽を刈り取る


「世界は」


セラが俺を見る。


「無害な芽を、敵として刈り取ることもあるからです」


「……」


俺は黙り込む。


「具体例を使います」


セラが指示棒を振る。


「君のTrue Magicも、世界から見れば異常です」


「え?」


「代償なしで魔法を使う」


セラが黒板を指す。


「これは、世界標準から外れた挙動です」


「……」


「でも、世界はすぐには叩きません」


セラが俺を見る。


「なぜでしょうか?」


「……分からない」


「確定していないからです」


セラが微笑む。


「君が危険かどうか、まだ判断できていません」


「つまり」


セラが黒板を叩く。


「世界がコイツ敵だって決める瞬間が、来ていないのです」


「……」


「ギルドは」


セラが黒板に追記する。


【組織の対応】


・ギルド → 世界の通知を待つ

・国家 → 世界の確定報告を待つ

・教会 → 世界の警告を待つ


「世界がまだって言ってるから、誰も来ない?」


俺は呟く。


「その通りです」


セラが頷く。


「世界が騒がないのは」


セラが黒板を叩く。


「優しさではありません」


ピシッ。


「まだ決めていないだけです」


セラが黒板に大きく文字を書く。



【世界が静かな時】



【まだ確定していない】


「……嵐の前の静けさ?」


「正確には」


セラが俺を見る。


「判断待ちです」


「……」


セラが指示棒を置く。


ゆっくりと、俺の方を向く。


間がある。


「……」


静かな圧。


「そして」


セラが低い声で言う。


「世界が一番危険だと判断するのは——」


間。


「確定した瞬間です」


「……え」


セラが黒板に新しい図を描く。


左右に分けて。


【確定前】

・静か

・観察

・猶予


【確定後】

・騒ぐ

・排除

・容赦なし


セラが真ん中に境界線を引く。


「この線を超えた瞬間です」


セラが俺を見る。


セラが黒板に追記する。


【確定後の世界対応】


・全力排除

・例外なし

・個人の事情考慮なし


「その時、世界は騒ぎます」


セラが俺を見る。


「遅いのではありません」


「今は、まだ来ていないだけです」


「……」


俺は黙り込む。


「じゃあさ」


俺は声を震わせる。


「確定したら、俺も……?」


セラが俺を見る。


「対象になります」


即答。


「……」


「だから、育成期間なのです」


セラが黒板を指す。


「確定される前に」


「人間としての正当性を積み上げる必要があります」


セラが黒板に新しい図を描く。


【観測 → 分類 → ★レイはココ → 確定 → 対応】


「君は今、ここにいます」


セラが★を指す。


「確定まで、あとどれくらい?」


俺は思わず聞く。


「……それは、次回の講座で」


セラが微笑む。


「今教えて!?」


セラが黒板に追記する。


【現在のレイ】


・未確定

・観測対象

・要注意


「要注意って……」


「優しい表現です」


セラが真顔で答える。


「……」


「では、港町の塔に話を戻します」


セラが指示棒を振る。


「なぜ、調査が来ないのでしょうか?」


「……確定してないから?」


「そうです」


セラが頷く。


「塔は、確かに異常です」


「でも、まだ何の異常かが確定していません」


セラが黒板を指す。


「だから、世界は観察を続けています」


「……」


「そして、組織は世界の判断を待っています」


「でも」


俺は手を挙げる。


「ギルドに報告したよね?」


「しました」


セラが頷く。


「でも、ギルドは動きませんでした」


「……なんで?」


「ギルドは」


セラが黒板を指す。


「世界の通知を待つからです」


「世界がこれは危険と確定するまで、組織は動きません」


「……」


「なぜなら」


セラが俺を見る。


「誤爆を恐れるからです」


「具体例を使います」


セラが黒板に追記する。


【過去の誤爆事例】


・新しい魔法の発見 → デモン派遣 → 研究者削除

・古代施設の修復試行 → 異常判定 → 都市ごと消去

・未知の生物の発見 → 脅威認定 → 生態系破壊


「これらは全て」


セラが黒板を叩く。


「確定を急いだ結果です」


「……」


「だから、世界は慎重になりました」


セラが俺を見る。


「まだ分からないものは、観察します」


「でも」


俺は呟く。


「それって、危険を放置してるのと同じじゃない?」


「そうです」


セラが即答する。


「……え?」


「世界は、安全を保証しません」


セラが黒板を指す。


「ただ、誤爆を避けているだけです」


「……」


「だから、静かなのです」


セラが俺を見る。


「静けさは、安全ではありません」


セラが黒板に大きく文字を書く。


【まとめ】


・世界は異常を即排除しない

・確定していないものは観察される

・静けさは安全ではない

・確定した瞬間が最も危険


「復唱」


セラが指示棒を振る。


「……世界が静かな時ほど危険」


「続けて」


「……確定していないだけ」


「よろしい」


セラが微笑む。


「では、復唱の後に拍手をお願いします」


「順番変えた!?」


「……」


セラがじーっと俺を見る。


「……はい」


パチパチ。


「本日の講座はこれで終了です」


セラが指示棒を置く。


「お疲れ様でした」


目がしいたけになっている。


「……」


俺は黙り込む。


確定していない異常。


世界が静かなのは、まだ決めていないから。


そして——


確定した瞬間が、最も危険。


……


気がつくと、また宿の部屋に戻っていた。


ノートは機の上。


時間は一秒も経っていない。


「……」


俺はノートを見つめる。


世界が静かな理由。


確定していない異常。


「……静かなのは、まだだからか」


俺は小さく呟く。


港町の塔。


あれは、今まさに観察されている。


世界が、何の異常か判断しようとしている。


「……猶予期間なんだ」


俺は窓の外を見る。


東の方角。


塔がある方向。


「そういえば」


俺は思い出す。


「ギルドの受付の人も……」


なんか、歯切れ悪かったんだよな。


「あれ、世界の通知を待ってるからか」


俺は納得する。


「確定のトリガーって……」


俺は呟く。


「塔の中に入ったら、それが引き金になったりしない?」


「……」


でも、怖くはなかった。


「じゃあ、確定する前に」


俺は拳を握る。


「育てきらないと」


True Magicを。


自分自身を。


確定される前に、人間としての正当性を積み上げる。


「……時間制限、あるんだな」


俺は小さく笑う。


やることは分かってる。


育てる。


試行錯誤して、失敗して、学ぶ。


「塔の中でも」


「どこまで育つかな」


俺はノートを開く。


確定していない異常。


世界が静かな理由。


静けさは、安全じゃない。


「……嵐が来る前に、準備しないと」


俺はペンを取る。


測定器の改良案を書き始める。


静かな時間を、無駄にしないために。


-----

【第5講・終】

-----

次回予告(?)


セラ「次回は、確定のトリガーについて解説します」


レイ「トリガー……?」


セラ「はい。何が世界を確定させるのか」


レイ「……それ、めっちゃ重要じゃない?」


セラ「その通りです」


レイ「じゃあ早く教えて!」


セラ「次回をお楽しみに」


レイ「今教えて!?」


セラ「……」


指示棒がピシッと鳴る。


レイ「……はい」



レイ

「……先生、さっき『確定した瞬間が一番危険だ』って言いましたよね。それって、俺たちが塔の深層に踏み込んだ瞬間、世界が『あ、これ敵だわ』って判定する可能性もあるってことですか?」


セラ

「そうかもね」


レイ

「そうかもで済まさないでくださいよ……。その瞬間、具体的に何が起きるんですか?」


セラ

「長く仕様を見てるとさ。『判定』が下った瞬間に空の色が変わるのも、ただのアップデート告知みたいなものだって思えるようになるんだよ」


レイ

「……」


(キーンコーンカーンコーン……)


セラ

「気になるなら、あとで見返せばいいよ」


レイ

「……はい」

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