木枯らしが運ぶオルゴール
「なろうラジオ大賞」への応募作品です。
〜あらすじ〜
久しぶりに帰省をして、日が暮れ始めた商店街を歩いていると、ふと聞こえてきたオルゴール。
それは、卒業制作で作ったオルゴールのことと、当時初恋で両片思いだった彼のことも思い出させた。
必然か偶然か、同じ曲を選んでいた彼。
そんなことを思い出していると、滅多に鳴らないスマホから、タイミングよくメッセージの通知が届き…。
木枯らしが運んでくる儚いラブストーリー。
〜登場人物〜
橋宮 杏菜
丸矢 陽汰
「…ふぅ。」
実家の最寄り駅に着いて小さく伸びをする。
久しぶりの帰省で、地元の景色に懐かしさを覚えながら実家へと向かう。
人通りがまばらな商店街を歩いていると、ふとオルゴールの音が聴こえた。
「この曲…」
小学校の卒業制作でオルゴールを作る時も、即決したくらい好きな曲。
そういえばその頃好きだった彼も、必然か偶然か同じ曲を選んでいた。
お互いの家がすぐ近くで、笑顔が印象的だった彼、丸矢 陽汰くん。
4年生でより仲良くなり、友達から好きな人を聞かれると、お互いの名前を挙げて両片思いだった。
卒業まで気持ちは変わらなかったけれど、特に進展はなく、中学校が離れてからは、近所とはいえ会わなくなってしまって、気持ちは自然消滅…。
そんな淡い気持ちを思い出していたら、突然スマホの通知が鳴る。
ポケットから取り出すと送信主は母だった。
"杏菜、今日帰ってくるんでしょ?"
"夜ご飯いるの?"
"友達と食べてくるの?"
"どっち?"
圧のあるメッセージに、一旦画面を消して深呼吸をする。
その時、ヒューと風が吹き、目を閉じる。
そういえば今日は木枯らしが吹いているらしい。
風の冷たさに肩をすくめながら、角を曲がる。
「あの…!」
突然後ろから声を掛けられ振り向く。
「ICカード、落としましたよ!…って、はっしー?」
苗字が橋宮だから、はっしー。小学生の頃呼ばれていたあだ名に驚いて顔を上げると、あの彼が面影のある笑顔でICカードを差し出していた。
「陽汰…くん…?」
「あ〜!やっぱりはっしーだ!久しぶりだね!」
変わらない雰囲気に、心の奥底に仕舞っていた気持ちが疼き出す。
「家向かうの?キャリーケース持つよ。この上り坂大変だよね〜!」
彼に言われて先を見ると、ちょうど長い上り坂が続く所だった。
「いいよ。大丈夫。ありがとう。」
昔と変わらない優しい彼に、蓋をしていた気持ちが少しずつ顔を出し始める。それを誤魔化すかのように歩き始めようとしたら、引き止められた。
「俺…が、もっとはっしーと話したいんだ…!あとあの頃より力もついてるから任せて!」
そういって笑顔で強引に進んでいく彼に慌ててついて行く。
10年ぶりの叶うはずもない気持ちが蘇り、チクリと胸が傷んだ。
「タイトルは面白そう」で採用していただき、せっかくの機会なので投稿してみました。
登場人物の名前はもちろんフィクションです。
・小学校4年生頃から両片思いだったこと
・卒業制作のオルゴールで同じ曲だったこと
・家が近所だったこと
・彼の笑顔が印象的で、苗字のあだ名で呼ばれていたこと
は事実です…。
お2人の「通知はお母さんでは!?」も取り入れてみました(笑)
拙いところは大目に見ていただければと思います。
楽しんでいただければ幸いです!




