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トートの精霊とパスワーキングで始める魂の錬金術探訪  作者: ごぼう星人のまさか


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Episode.00 フールチャイルド

暗闇を進むと、ほんのり空がピンクがかってきた。夜明け前の空のようだ。


ガヤガヤと楽しそうなざわめきとともに、優雅な音楽が聴こえてきた。透き通ったピンク色の花びらが風に舞う中、あちこちで話に花を咲かせながら酒を楽しむ人の輪に辿り着いたらしい。


会った事もないのに、フールチャイルドはひと目でわかった。


まるで王族の宴会かと思う金色の美しい調度品に、豊かな自然界の恵み、贅を尽くした料理が器から溢れんばかりに盛られている。

漫画でしか見ることのなさそうな料理の数々に、思わず唾液が溢れてくる。

スラリと身長のある彼は、フワリと舞うようにこちらへ向かって来て、近くのテーブルからグラスとワインを手に取り、ソムリエのように注いでこちらへ差し出してくれた。

ほんのり甘い花の香りが彼から漂ってきた。


「やあ、うまい酒はどうだい」


「有難う、でも今はいいです。あなたは時々私の前に現れてくれてましたよね。今よりももっと、道化師のような姿をして私にユーモアを忘れるなと諭してくれていた。私をあれは、貴方ですよね……?」


彼はフフンと笑い、何も言わずにグラスのワインを飲み干し、軽々と空へ舞い上がった。

私は空に向かって呼びかけた。


「私はこれからパスワーキングでトートタロットの精霊たちに会いにいきます。一緒に来てくれませんか?」


そう言って、私は昔自分が好きだった小さな甘酒饅頭二つを差し出した。小麦と甘酒のふくよかな香りがほんのりと空間に広がる。


懐かしい良い香りにフフン、と彼は嬉しそうに笑い、饅頭をひとつ受けとって私の目を覗き込んだ。


「あの時の道化師が私だと思いたいんだったらそういう事にしておいて。さあ、もうひとつこれを渡す相手に会いに行こうか」


私はフールチャイルドとは「再会」しに来たような気がするので、同一人物だと思う事にした。


「昔から君を導いているのはあいつだろう。案内しよう」


フールチャイルドと私は、タロットの精霊たちとの通訳をしてくれる、メーガスという叡智の精霊を探しにでかける事にした。

フールチャイルドは彼の居場所を知っているらしい。


少し進んだところで、再びフクチーぬが現れた。


「 もう見つけたんだ、よかったよ。ところであんた、さっきは慌てていなくなったけど、フールチャイルドに聞くべき事はきいたのかい。」

 

「 慌てて? いや、(アナタが)先に消えたような…… 」


と、先程の状況を頭の中で振り返る。


「 なに言ってるんだい、あたしゃ神様だよ。

姿は見えなくても、いなくったりしない。あんたがどこで何してんのか、何考えてんのか、全部丸っとお見通しってこと 」


確かにただの賢者ではないということだけはわかる。

ところで聞くべき事って何だ?はてな......という思考は、顔に漏れていたらしい。


「フールチャイルドというのはトートタロット最強の精霊であり、まず今手放さなきゃいけないものが何なのか、それを教えてくれる存在なんだ。あんた、それをききにきたんじゃあなかったのかい?」

フクチーぬは目をひんむいてみせた。


フールチャイルドは全てを兼ね備えた気ままな守護存在だとしか認識がなかった。彼自身にアドバイスをもらうことは、全く頭になかった。

「 ついてきて欲しい 」と頼む事以外、彼とは雑談のようなことしか話していない。

フールチャイルドの目を見て聞いてみた。


「わたしが今手放す必要があることって何でしょう。アドバイスをお願いします。」


「君はどう思うんだい?」


フールチャイルドは先程も、「そう思いたいなら、そういう事にして」と言っていた。

パスワーキングの旅ではトートタロットの精霊に出会ったら、自分について質問をする流れだが、フールチャイルドは自分で考える流れを作り、まるでコーチングしてくれているようだ。


神様が人間に求めるものは、いつも至ってシンプルだ。自分で感じ、考え、体験することそのものが、神様の分け御霊として重要だということ。


「 やるべき事を優先して時間に追われるのをやめる。......あとはどうしても寝るのが遅すぎる生活でしょうか 」


程度の低い答えに、自分で言っていて恥ずかしくなる。


「 そんなとこだね、まあ。要は、君は自分の人生を主役として生きていないってことさ。

いつも周囲の世話にばかり時間を費やして、自分の時間が足りずに夜更かしになる。君の人生はみんなの隙間を埋めるアメーバなのかい?君は何を体験しに生まれてきたんだい?


君の人生は君を軸に進んでいくものだ。

君が今すぐ手放すべきことは、自分の心や体がどうしたいのか訴えている声を無視する習慣、頭で全てをコントロールしようするクセそのものさ 」


全ての豊かさを携えた無敵の精霊フールチャイルドの言葉は、あまりに図星すぎた。


バツの悪い顔をしていると、フクチーぬが続けた。

「 いつも言っているじゃないか。『 なに言ってんだ、あたしゃ神様だよ 』って。

あんたも神様の分け御霊。もう少しシャキッとしなさい。

あんただけでなく、皆におんなじことがいえるのさ。君は誰の人生を生きているんだいって。

親の期待、世間の目、社会的集合意識の抑圧......


今の大人たちに必要な言霊。自分勝手とは、全く訳がちがうのだからね。

なぜなら神様は自分だけでない。みんなそれぞれに八百万の神様だからさ。


『なに言ってんだい!あたしゃ神様だよ!』

さぁ、言ってごらん 」


「 何言ってんだい、あたしゃ神様だよ!」

両手を空へ向かって推し広げ、ゴールしたマラソンランナーかのようにポーズをとってみた瞬間。


「 おや素直ですねぇ」


突然目の前に、顎に手を添えた裸の男が現れた。

メーガスだった。


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