<Episode.09 隠者(2)> 無価値観の連鎖を断ち切る
「 私の知らない時代の人だったけど、どう受け取ったらいい? 」
パスワーキング中に英霊が登場したことについて、メーガスに尋ねた。
隠者のそばにいたケルベロスは黄泉の国の番犬だから、隠者の世界はあの世なのだろうか。
「 何か思いあたることはないか?」
「 昔から戦争や日本の歴史に意識が向くことは、なんとなく多いかも。
最近では水星座の季節になると、戦争で亡くなった人に意識が向くんことが多いんだよね。さっきみたいに、身近に感じると、涙が出ることも多くて」
他の人に『 大切にしているものは何か 』と訊かれると、本当の深い理由は誰にも話したことがない。話そうとしても、本当に魂に触れるのか、涙で喉が詰まって、誰にも話した事がない。
「何でもない私がひとつでも達成したいと思う理由は、自由な選択肢がなかった先祖たちなら、子孫が成功したら喜ぶだろうなあなんて、何となく感じるからなんだ。あ、初めて言えた!
そういう風に思うのが何故かも、もう一度隠者のところへ行って、探ってみる」
そう言って、もう一度隠者の近くへ行ってみる。
稲穂の中でもう一度観察してみた。
今度は丁寧に扱ってもらえなかった過去が出て来た。
鉄道オタクだった幼い長男を連れて、就園予定の幼稚園の夏祭りに行ったときのことだ。
ダンボールの輪っかに入り電車になりきるかけっこで、辛抱強く順番待ちしていた長男が、さあいよいよ自分の番がきた、と目を輝かせた瞬間、時間切れでたった一人ポツンと取り残されてしまった。
先生は真夏の熱い炎天下でクタクタだったのか、フォローの一言もなく立ち去ってしまった。
置いてけぼりになった子どもを目の前にして、先生それはあんまりだろうと腹が立ったと同時に、瞬間的に私の無価値観が影響しているとしか思えなかった。
自分ごとでも辛いのに、子どもにまで同じ寂しさを背負わせたくない、と自分ごと以上に申し訳なさが溢れて、涙を堪えたあのときの不甲斐なさは、きっと一生忘れない。
「あぁ、私でこの寂しさは終わらせたい」
思い出したくない虚しさ。
いつも引っ込み思案だった私は、存在感がなさすぎて時々大人たちから無視に近い仕打ちを体験してきた。
頑張っても、誰にも気づかれない。けれども無視されるのはもっと辛い。
「あぁ、この報われない虚しさが、英霊と繋がったのかも」
なんとなくわかってきた。
この虚しさとは、是非とも今日お別れしなくては。
「今までありがとう。私は今この瞬間から私を宝もののように扱います」
自分の心のドブが、少しだけ綺麗になった。
一度でドブさらいが終わるわけではない。
隠者に聞いてみると、
「これる時は度々ここへ来ると、どんどん綺麗に、軽やかになる。また来るといい」
なんだか近所のおじいちゃんの言葉のようだ。
また、何度でもこようと心に決めた。




