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トートの精霊とパスワーキングで始める魂の錬金術探訪  作者: ごぼう星人のまさか


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<Episode.09 隠者(1)> 英霊の声

「 自分のダメっぷりが思ったより酷くて、いい年して恥ずかしい。いい人ぶってた内面がこれだからね 」


調整のカードから離れ、フールチャイルドたちの隣でため息をついた。


「 なんでそんなにいい人でいようとするの? 」

いっさい出し惜しみの無い姿の賢者メーガスが、不思議そうに尋ねた。


「 うーん、物心ついた時から、それが当たり前だったからなぁ。

私がなんでも遅いから、先に誰かの作った流れがすでにある中を生きてきて、流れを壊すのが怖かったんだと思う。


家族の中でも発言力が無いばかりか、家族みんなが頑張り屋さんだったから、一生懸命すぎて壊れないように、私はいつも自分が調整しなくては、と当たり前のことのように、みんなが困らないように動いてきた。


人から見たら、なんだそんな事、て言う程度で誰も覚えて無いけれどね。

いかにスムーズに事が流れるかを見てばかりで、じゃあ自分は何を頑張ったの?っていうと、人の世話ばかり焼いて、何もしてない。


情けないなぁ。まぁ、情けないまま死ななくてよかった。2人と案内してくれたフクチーぬに感謝 」


「 情けないことなんかないさ。誰だって、気づかないところで誰かを支えているもんだ。

これまでの話を聞くに、君は自分の現状はある程度理解できたわけだ。そんな君に、次の精霊はきっとぴったりのテーマだ。『 隠者 』のところへ行こう。君があんな風に堂々と、自分をを見せる日が楽しみだな 」


フールチャイルドがメーガスを見た。


「 服は脱ぎませんけどね 」


「 女はどんどん強くなる。心配するな 」


心配するなとは服のことを言っているのかな、とつまらぬことを思っていたら、だんだんと辺りが暗くなってきた。真っ暗で足元が危ないな、と足元に目をやると、気づけば一面に稲穂が広がっている。


「 わあ 」


そよそよと風が吹き抜ける田園風景の中、少し先を、左手にランプを下げた老人らしき影が見える。

3つの頭を持つケルベロスがそばにいる。


「 さあ、隠者が見えた。ここは君の心の闇の広がりだ。自分の闇の中をしっかりと見つめてごらん 」

メーガスが優しく背中を押す。


自分の闇かぁ。

もうここまで来たら、とことん闇を暴いてやる。あれだけ感情を置き去りにしていい人ぶってきた、ヘタレのありのままの心のドブを。


しばらくたわわに実った一面の稲穂をぼんやりと眺めていると、風とともに声が聞こえてきた。



「 私たちの命は、役に立ったのだろうか 」


報われるのだろうか、とも言いたげに聞こえる寂しそうな声と共に、自分の中に何とも言えない感情が湧き上がってきた。



「 私たちは、守れたのだろうか 」



「 皆は、幸せなのだろうか 」



「 どうか......達者で 」



姿は見えないが、昭和の大戦で命を賭した英霊の声なのだと確信する。

自分の過去性なのか、あるいは田園風景を介して繋がった他者の魂なのか。



思考をなんとか保ちながら、ただその悲痛な思いと崇高な慈愛を全身で感じ、涙が止まらない。


自分の心のドブさらいに来たのだけれど。

おそらくこれは、風景を介して、他者の残留思念と繋がってしまったのだろう。


「 ありがとうございます。

あなた方のおかげで子孫の私たちは、達者に暮らせています。


でも、こんなに頼りない日本にしてしまって本当にごめんなさい。

小さな力ですが、自分にできることで精一杯あなたたちからいただいた国土という財産を、大切にします 」


過去の日本人なら恐らく当たり前に持っていたであろう、「 確固たる我 」を感じる一本筋の通った意識。

揺るぎない精神、深く大きな慈愛。


全身で味わい、軸のブレブレな自分が一番求める姿だと感じた。

核家族化が進み、しがらみからはずいぶん解放された便利な今の日本社会は、精神を育む文化という貴重な財産の多くを失ってしまった。


「 2人とも。今日はごめんなさい。

自分のドブは綺麗になってないけれど、一旦ここまでにさせて。感謝と申し訳なさで涙が止まらない。


みんなが今当たり前に暮らせている世界が、本当にたくさんの尊い命の上に成り立ったものだと思い知って、頭ではわかっていたんだけれど、全然わかっていなかった。


なんとか自分の意識と別のものだと切り分けて見ていたのだけれど、今は彼らへの想いがいっぱいだから、気持ちの切り替えの時間をちょうだい 」


「 それは構わないが、私はそれは、君の心の闇へのヒントでもあると思うぞ。しっかりリフレッシュして、またチャレンジしよう 」

メーガスが優しく肩をポンポンと叩いた。


もう少しだけ、先祖の声に耳を傾けて寄り添いたいと思った。

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