第二話
私が、転生した世界での生活を始めて数日が経った。
銀色の使者から与えられた場所――「神の教会のような場所」で彼は、ここでの“役割”について学ぶことになった。
教会の中には、奇妙な装飾が施された大理石の柱や、輝く光の断片が浮かぶ祭壇があった。
だが、その空間は静かで神聖というより、どこか冷徹で無機質な感じを受けた。
使者がゆっくりと歩み寄り、言った。
「この世界では、信仰こそがすべてだ。人々の心の中にある思いが、力に変わり、その力が世界を動かす。」
私は、まだその意味がよく理解できていなかった。
「でも、信仰って……俺には神を信じる心なんてなかったし、そもそも信仰ってのは神を信じることだろ?」
「違う。信仰とは、必ずしも神への信仰だけを意味するわけではない。」
「ここでは、思いそのものが力になる。信仰とは、最も純粋で強い『思い』だ。」
私は黙ってその言葉を受け入れる。
信仰が力になる――それは理解できる。しかし、なぜ自分のような「無信仰な人間」にも力が与えられたのか、という疑問がどうしても消えなかった。
「でも、なぜ俺の祈りが力になったんだ?」
「お前の力は、その純粋さにある。お前はただ他者を助けたいという、何の見返りもない『善意』だけを持っていた。」
「その心が、神々の法則に影響を与えたのだ。」
私は目を見開いた。
「神々の法則?」
「この世界には、無数の神々が存在する。しかし、すべての神々は信仰によって力を得ている。信者が多ければ多いほど、その神は強くなり、支配力を持つ。」
「そして、神々は信仰の力を元に、世界の法則を維持している。信仰を集めた神々は、平和や秩序を守る一方で、信者を増やすために争いを起こすこともある。」
私はしばらく黙って考え込んだ。
「つまり、信仰が力を持つ――ってことは、この世界には神々のために信仰を集める争いがあるってことか?」
「その通り。信仰戦争と呼ばれるものだ。神々は信者の数を競い合い、自らの領域を拡大するために戦いを繰り広げる。」
「信仰を集めることで力を増し、その力で他の神々や勢力と争う。それが、この世界の法則だ。」
私は改めてその「法則」を実感する。
争い、支配、拡大――まるで現実世界で見た政治的な戦争のようだ。だが、ここではその戦争の根本が、「人々の信仰」による力の争いだという。
「でも、俺の力は無信仰な思いから生まれたものだ。これはどういうことなんだ?」
「それこそが、お前が異端の存在である理由だ。」
使者が語った言葉は、しばらくの間彼の耳に残った。
「お前の力は、信仰ではなく純粋な思いから生まれた。そのため、お前は神々の枠組みに収まらない存在だ。」
「神々はそれぞれの信仰の数によって力を得るが、お前のような存在は、信仰を集めずともその心の強さだけで奇跡を起こす。」
「でも、それじゃ俺は、神と同じ存在ってことか?」
「それが問題だ。お前が力を使えば、世界の均衡が崩れる。」
私はその言葉に驚きながらも、なんとか冷静を保とうとした。
どうして、ただの「善意」から生まれた力が、そんなにも危険なのか――その理由が、どうしても理解できなかった。
「俺がそんな力を使うと、世界が崩れる?」
「そうだ。信仰が力を生むこの世界において、お前のような力が存在すれば、神々の支配に干渉することになる。」
「お前の力は、神々の支配を脅かすものだ。だからこそ、神々はお前を放置できない。」
その時、主人公はようやくその意味を少しだけ掴みかけた。
自分の力が、他の神々の信仰を集める力と対立することになる――つまり、自分がこの世界に存在すること自体が既存の秩序を乱すことになるのだ。
「じゃあ、俺は……どうすればいいんだ?」
「それはお前次第だ。」
「お前の力を使うことで世界を救うか、壊すか、それはお前が決めることだ。」
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