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第一話

本編開幕、と行きたいですがまだギリ前座です。お楽しみください。

 目を開けた瞬間、彼の視界はまったく見たことのない光景に包まれていた。

 冷たい雪が舞い散るわけでも、見慣れた街並みが広がっているわけでもない。

 そこは、どこか遠くの――異世界のような場所だった。

 空は紫色に染まり、虹色の光が不自然に弧を描いて地平線へと消えていく。

 大地には幾本もの巨大な柱が立ち並び、まるで空と大地を繋ぐ“神の道”のように見えた。

 異常なまでに静かなこの空間に、彼は身じろぎもできずに立ち尽くしていた。

 ――どうして、ここにいるんだ?

 その問いが脳裏をよぎった瞬間、背後から声が響いた。

「ようこそ、“信仰がすべて”の世界へ」

 彼は振り返った。

 そこに立っていたのは、銀色の衣を纏った存在――それは人とも、神とも言い難い不思議な雰囲気を纏っていた。

 「お前……誰だ?」

 声を震わせながら尋ねると、銀色の存在は一歩前に出て、微笑んだ。

「私はこの世界の“法”を司る者。お前のことを見守っていた者だ。」

 その言葉に、彼は頭が混乱した。

 見守っていた? ということは、自分は死んだはずでは――?

「死んだ……? 俺、確かに――」

「ああ、確かにお前は死んだ。」

 その言葉を聞いて、彼はようやく自分が死んだことを理解する。

 だが、それでも納得がいかなかった。

「それじゃ、俺は一体どうして……?」

「お前の祈りが、届いたのだ。」

 その言葉に彼は首をかしげた。

「祈り?」

「お前が最後に抱いた思い――『この子を守りたい』というその強い願いが、確かにこの世界に届いた。」

 ――ああ、そうか。最後に助けた孤児のことか。

 彼の心に、かすかな暖かさが広がった。

 死んだ時のことを思い返すと、その瞬間だけは生きていてよかったと心底思った。

 だが、それがなぜ異世界に繋がるのか、まだ理解できなかった。

「お前が死んだことにより、お前の強い思いはこの世界の『法則』に影響を与えた。」

「この世界では、信仰――人々の思いの強さが力を生む。お前のように、純粋な祈りの力を持つ者は極めて稀だ。」

 その言葉を聞いて、彼は自分の立場をようやく実感した。

「――つまり、俺が転生させられた理由は、俺の祈りが“力”になるから、ってことか?」

「その通り。お前の力は、この世界で極めて貴重なものだ。だが、それは単なる力に過ぎない。」

 銀色の存在は、ゆっくりと手を差し出し、宙に浮かぶ光の粒子を掴んだ。

「この世界では、信仰が力となり、力が支配する。神々はその力を基に、世界を動かす者たちだ。」

「そして、信仰が強ければ強いほど、神々はその力を増す。」

「――じゃあ、信仰を集めて神になれば、強くなるのか?」

「その通り。しかし、お前の力は――神々のように信仰を集める力ではない。」

 その言葉に、彼はますます混乱した。

 信仰を集め、神となることはできるのか? それとも、逆に何か異質な存在になるのか?

「お前の力は“純粋な祈り”だ。そのため、神々のように他者を支配することはできない。だが、お前は――」

 銀色の存在は、その言葉を一度区切り、次の言葉を静かに紡いだ。

「お前は、この世界の均衡を乱す可能性がある存在だ。」

 その瞬間、彼の心に、言い知れぬ不安が広がった。

 信じられないほど強い光が自分の中に宿っていることに気づいたが、それが良いことなのか、悪いことなのか、全く見当がつかなかった。

「この世界には、すべてを支配する法則がある。その法則を破る者がいれば、この世界は崩壊する。」

「お前は、その破壊のきっかけとなるかもしれない。だが――それをどうするかは、お前次第だ。」

 彼は静かに目を閉じ、深く息を吐いた。

 自分に課せられた運命が、まるで暗闇のように迫ってきていることを感じていた。

「――俺が、どうにかしなきゃならないのか?」

「その通り。」

 銀色の存在が笑みを浮かべた。

「お前には、まだその力を使いこなす方法を教えよう。だが、その力が何を生むか、それをどう使うかはお前の心次第だ。」

 ――そうか。

 心次第――。

 

彼の中で、何かが決まった瞬間だった。

 ここでどんな道を選ぶのか。

 それが、今後のすべてを決めることになるだろう。


ーー主人公の視点からは次からです。ブックマークして見逃さないようお願いします!

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