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おっさんを恨む冒険者たちに襲撃されたので返り討ちにする

 チュラスの朝は喧噪と光に満ちていた。





 昨日のドラゴン騒動と謎のおっさんが伝説級の存在を手懐けたという噂が街中に広まり、まるで祭りのような空気が漂っている。


「ガク・グレンフォードさま……お時間よろしいですか?」


 宿のロビーで俺に声をかけてきたのは神殿の使者だった。

 純白の法衣に身を包み、背筋を伸ばした女性司祭。


「王都神殿からのご連絡です。実は正式に聖女セラさまがガクさまにご随行することが認められました。これからはずっと一緒にいてもらって構いません」

「……随行?」



 俺が聞き返すと司祭はうなずいた。



「ええ。セラさまがご自分の意思であなたと共に旅を続けたいと申し出られました。神殿もそれを認めると。世界を根底から覆すそのお力を持つあなたさまの隣に立つのは聖女がふさわしい。そう神殿も認めたのです」


 そうか、ついに……。

 セラは俺の“唯一の味方”だった。前世でも、転生後のこの世界でも。


 そして、あのときも言っていた。




 ――『あなたの力は世界を変えられる』――




 その言葉を彼女は本気で信じているのだろう。


「神殿に感謝すると伝えてくれ。あと聖女は必ず俺が守ることも」

「はい、確かに」


 使者が去ったあと、俺は深く息を吐いた。




 ________________________________________



「もう昼か」


 年を取ると時間の流れが早く感じるな。

 老化する自分を笑っていると宿にセラがやってきた。


「――――ん? セラか。っていうか街の外うるさいな」

「すみません。どうやらわたしが正式にガクさんと行動をともにすることが街に広まっているようで」



 なるほど。

 どうりで騒がしいわけだ。



「聖女さまが! あの“徳政の英雄”の元へ!?」

「まさか恋仲か? いや、そうに違いない!」

「ガクさまって、やっぱりとんでもないお方だ……!」


 街の女たちの嫉妬と男たちの羨望と落胆が渦巻く中、セラは柔らかな微笑を浮かべて宿の扉をくぐった。


「ガクさん。ご一緒してもいいですか?」


 彼女のその一言に、なにも言わずうなずく俺。

 そして、なぜかその瞬間。


「当然、あたしも行くわよ?」


 背後から当たり前のようにアリシアが現れた。

 お仕事は大丈夫なのかな?


 続いてグレイがぴょんと飛び出す。


「あたしもー!」


 最後にリリーナが伸びをしながら付け加える。


「あたしも一緒に行く〜。ガクのごはん、美味しいからね!」


 こうして、旅の仲間は俺を入れて5人に。


 俺を除いて全員が美少女だという、異常すぎるパーティが誕生してしまった。



 ________________________________________



 その日の夕方、冒険者ギルドに立ち寄るとどうも妙な空気だった。

 受付の若い男が俺を見た瞬間に顔をしかめた。


「お前か。……あの“聖女を連れたおっさん”ってのは」


 なんだその呼び名。ちょっとひどくないか。


「なんだよ。文句あるのか」

「別に。でもな、あんたみたいに力だけで目立つヤツってのは、いずれ痛い目を見るもんさ」


 鼻で笑うその男。

 その背後では別の冒険者たちがヒソヒソ話をしていた。


「女ばっか連れて、チートスキルで調子に乗ってるんだろ」

「見た目はただの中年じゃねえか」

「冒険者ってのはな……地道にコツコツやるもんだよ。まったくそこらへんをわかってないんだな」


 嫉妬に次ぐ嫉妬。

 こういうのは前世でもたくさん見てきた。


 地味に働く人間が少しでも評価されると叩かれる。


 『調子に乗るな』、『身の程を知れ』と言われる。


 俺がなにか悪いことをしたか?

 命がけで人助けして、契約の地獄をぶっ壊して、仲間を守っただけだ。



 ……なのに。



「気にしないで、ガクさん」


 セラが俺の袖をそっと握る。


 ……ああ。大丈夫だ。



 ________________________________________





 ――――その夜のことだった。





「全部、あのおっさんのせいだろ!」

「そうだよ。全部あいつが悪い!」

「追放すべきだ。このギルドから!」


 ギルドの酒場で騒動が起きた。

 嫉妬に狂った一部の冒険者が俺を追放すべきだと騒ぎ始めたのだ。


 俺がスキルで契約を破棄して回ったことで、“うまい仕事”を潰された連中がいたらしい。


 ギルド幹部も見て見ぬふりだった。


(ギルドからすれば俺は不都合な存在なんだろうな)


 そして、とうとう俺の宿泊していた宿の前で抗議の一団が集まりはじめた。


「出てこい、ガク!」

「お前のせいで、俺たちの仕事が!」

「チートスキルで好き放題しやがって!」

「冒険者を馬鹿にするな!」


 迷惑の極みであった。

 街の治安隊もこの異様な空気に動けずにいるようだ。




 ――――そのときだった。




「なーにしてんのかなー、キミたち?」


 門前に現れたのはリリーナ。

 その背後には、アリシアとセラ。

 さらに俺とグレイも並ぶ。


 まさに噂の俺たちが揃って登場した瞬間だった。


「俺の話を聞きたいヤツは聞け。……今から真実を暴く」


 俺は静かに目を閉じ、スキル《徳政令》を発動した。


 光が走る。


 次々に、群衆の中に隠れていた「扇動契約」や「偽情報契約」が解除される。


「な、なにをするんだ……!」

「うわ、うわああああ!」


 その場にいた十数名が頭を押さえて叫び出す。


 契約が破棄され、意識が正常に戻った彼らは自分が騙されていたことに気づく。


 そして、暴徒の中心にいた男――街の市長がその場で震えていた。

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