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復讐の誓い

 ――――その夜。

 俺とグレイは廃屋に身を寄せていた。


「お兄ちゃん、今日もすごかったね!」

「いや、ちょっと使いすぎた。流石に疲労が溜まるなこいつは……」


 実際、《徳政令》のスキルは便利だが、使えば使うほど疲労が溜まる。

 なんというか38歳の身体には堪えるな……。


「お兄ちゃんってなんでそんなに人助けをすることができるの? 普通ならやらないよ」

「……そうだな。話しておくか」


 俺はグレイに語り始めた。




 ――自分に前世の記憶があること。


 ――前世の自分はこの世界の人間ではなく日本という国から来たこと。


 ――前世ではブラック企業に勤めていて、罵倒され、踏みにじられ、それでも生きていたこと。


 ――だからこそ同じ境遇の人を助けたいと思っていること。




「ふーん……お兄ちゃん、大変だったんだね」

「まぁな。いろいろあった。けど、今はもう、昔のことだ」

「でも、それでも頑張ってたんでしょ? えらいよ、お兄ちゃん!」


 ぽん、と肩を叩いてくるグレイ。

 ああ……救われるな、こういう言葉。



 ________________________________________



 次の日、俺はふと思い立って、街の『奴隷市場』を訪れた。


 この世界では『奴隷契約』は合法だ。

 戦争捕虜や罪人だけでなく、借金を返せない者も契約によって『商品』に変わる。


「うひひ……今日も上玉が入ったぜぇ……!」


 店主が品物のように扱う奴隷たち。

 だが、俺の目当てはそれではない。


「この中に『強制契約』を受けてるやつはいるか?」

「なんだテメェ。変なことを言ってんじゃねぇぞ」

「じゃあ、見せてもらうぞ。……《徳政令》、発動」


 対象を強制的に奴隷契約を結ばされた奴隷に限定する。


「なっ……⁉ ぐあっ⁉ な、なんだ、手が動かねえっ……!」


 バリバリバリッ、と音を立てて、奴隷たちの契約紋が剥がれていく。


 奴隷たちは呆然とし、そして膝から崩れ落ちた。


「……わ、わたし……自由に……?」

「お兄ちゃん、またすごいことしたね!」


 後ろでグレイが嬉しそうに笑っている。


「て、テメェなんてことを!」

「よし、逃げるぞ!」

「はーい!」



 ________________________________________



 ――――その日の夜。

 ガクは小さな教会の裏庭に座っていた。


 ガクは契約を解除することでたしかに感謝された。

 『ありがとう』と言われ、『助けてくれてありがとう』と泣かれた。


 でも……それでいいのだろうかと疑問に思う。 


「……お前はこれからどうしたいんだ?」


 自分自身に問いかける。


 ――奴隷を救って終わりか?

 ――借金帳消しにして満足か?


 違う。

 本当にやるべきことは――――。


 前世で自分を見下したヤツら。

 踏みにじり、搾取し、罵倒してきたヤツら。

 そいつらがこの世界でものうのうと生きてるなら自分がやるべきことは――――。



「復讐だろうが」



 そう。ガクには前世の記憶がある。


 前世の会社の同僚たちがこちらの世界に転生している可能性が脳裏をよぎる。



 ――――いや、可能性という次元ではない。

 彼の同僚は確実にこの世界に転生したり、転移したりしている。



 スキルを手に入れた。

 仲間もできた。

 過去の記憶も取り戻した。


 そして、この世界にはまだ彼が知らない“同僚”たちが転生している。


「だったら俺はこの力で証明してやる――俺を捨てたヤツら全員に“復讐”ってヤツをな」





 ――――一方そのころ。

 アグノス商人ギルド本部。


 追放されたガクの影響で、ギルドの経済活動は深刻な損害を受け始めていた。

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