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前世で自分を見下し続けてきた後輩との再会

 冒険者ギルドの壁に貼られた掲示板。

俺ことガク・グレンフォードはそこに視線を走らせていた。



依頼内容の中には魔物討伐や素材回収、盗賊掃討といったテンプレ依頼も多いが、今日目を留めたのは《遺跡調査》という項目だった。



「ほう……この辺りに遺跡なんてあったか?」


 彼が呟くと背後から耳慣れた声がした。


「お兄ちゃん、遺跡ってお宝あるの?」


 グレイが興味津々に俺の横顔を覗き込んでくる。

義妹のような……養子のような存在である少女は最近ますます俺に懐いていた。


「ある場合もあるし、ない場合もあるな。ただ、なにがあるかわからないってのはロマンだろ」

「ロマン! なんかかっこいい!」


 そのやり取りを聞いていたセラが微笑む。


「では、行きましょうか。ちょうど私も神殿関係者として、古代の祭祀場について調査したかったのです」

「あたしも行くわよ、もちろん!」


と、アリシアも声を上げる。


「団長業務は部下に任せてあるし、ガクさんの護衛はあたしの役目だもの」

「本当に大丈夫なのか騎士団……」


 俺は仕事を部下に任せっきりのアリシアを心配する。


 そんなことをしていればいつか部下に嫌われてしまうぞ、と忠告しつつも俺たち4人は王都郊外のチュラス近郊にある《フォレスタ遺跡》の調査に向かった。



________________________________________




 遺跡は鬱蒼とした森の中にひっそりと佇んでいた。

苔むした石柱、半ば崩れた神殿の跡。

そこには既に先行調査隊が到着しており、依頼主と名乗る男が俺に近寄ってきた。


「よォ……あんたが今話題の《徳政令》のガクか?」

「そうだが、あんたは?」


 男はニヤリと笑ってフードを脱ぐ。

その顔を見た瞬間、俺の顔はちょっと強張っていたかもしれない。



 茶髪で中途半端な髪型。

どこかいけ好かない軽薄な笑み。



「よォ、係長……いや、村上さん? 覚えてるか、俺だよ、小林。小林亮太っすよ」

「……お前か」




 ――――忘れもしない顔だった。




前世で自分を「クソ老害」と罵り、会議中にスマホをいじっては報告書を丸投げしてきた若手社員。上司である俺に対してあからさまに舐めた態度を取ってきたあの男。



「なんだ、奇遇っすねー。まさかこの世界で再会するとは」

「田永から聞いたのか」

「そっすね。あいつも失敗したもんだなー。せっかく幹部までのし上がったのに、おっさんに全部持ってかれてよ」



 小林は乾いた笑いを浮かべる。



「で、俺のことは怒ってないっすよね? ほら、前世のことだし?」

「……まあな」


こいつがまともに生きてるとは思ってなかったが……予想通りだ。


 俺は心中でそっとため息を吐いた。

小林の態度に反省の色はない。むしろ、昔よりも増長している。


「そういや、そのロリガキと聖女さま、あと騎士団長も一緒なんすね? モテモテじゃないっすか~係長? いや、ガクさん?」

「ロリガキってなに?」

「ちょっ、あんたね!」

「グレイ、気にしなくていいから――――おい、小林。言葉には気をつけろ。お前のその軽口は昔から直ってないな」

「おおっと、怖い怖い。けど、あんま調子に乗らない方がいいっすよ」



 そう言って、小林はスキルカードを見せつけるように掲げた。



「俺のスキルは《剣技強化》。この世界じゃかなり強い方っす。係長なんかに負けるわけがない」



グレイが憤慨して叫ぶ。



「お兄ちゃんは神さまなんだから! そんなやつに負けるわけないよ!」

「グレイ……いいんだ」



 俺は落ち着いた声で諭した。



「口で言っても通じないなら、実力でわからせるしかない」

「おっ、やりますか? マジで? じゃあ、死んでもらおうかな――――」


 そのとき、背後の茂みが揺れた。

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