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最強スキルが進化!これも聖女さまのおかげです

「わたし、女神さまから……あなたに《聖女》の力の一部を授けるよう、言われてきました。あなたの《徳政令》に神聖の力を重ねるのです」



 女神の聖域から直接授かる“祝福の重ね掛け”。



 もしそれが可能になれば──《徳政令》はさらに次元を超える力を得る。



「セラ……お前、どこまで……」

「わたしは、あなたのために生きてきました。生まれ変わったこの世界で、もう一度出会うために。わたしの力、全部、あなたのために使ってください……!」


 そして彼女は、俺の額にそっとキスを落とした。




 ――――その瞬間。




 世界が輝いた。

 額に落ちたセラのキスはほんの一瞬のことだった。


 だが、その瞬間、体の奥底から震え上がるような熱がこみ上げてきた。




 ――――スキル《徳政令》が、進化する。




 視界の端に女神のメッセージが浮かび上がる。






【スキル進化】

 《徳政令》+《聖女》により、スキル強化が発動されました。

 契約時の疲労が軽減されます。





 優しいセラらしいスキル進化だ。



 五臓六腑に染み渡る優しさ……。



「……ありがたい。スキルを使うたびにぞっと疲れが出ていた。セラのおかげでおっさんの身体にも余裕が出てきた」

「ふふっ。ガクさんはまだまだ若いですよ――――でも、感謝のお言葉。素直に受け取っておきます」



 呆然とつぶやいた俺にセラが微笑んでみせる。



「女神さまはあなたにこの世界を変えてほしいと願ってるんです。だから、わたしはそのお手伝いがしたい。ガクさんの隣にいたいんです……!」


 その言葉には、嘘がなかった。


 そして、まるでそれを祝福するように――――空に天使の羽を思わせる光が瞬いた。


「今のは……」

「女神さまが、祝福してくれたのです。ガクさんが選ばれた者だと――――」


 セラはそう断言した。


 俺はなにも言えなかった。

 ただ、黙って、彼女を見つめていた。




 だがそのとき、ギルドの方向からざわめきが響いてきた。




「大変です! ギルドの掲示板に新たな依頼が……!」

「な、なんだって!?」

「セラさまが危険だっていう噂が流れています!」


 騎士団の兵士が慌てて駆け込んできた。


「どういうことだ?」


 俺が問いかけると兵士が汗を拭いながら答える。


「王都から来た某貴族が“聖女を連れ去った男”がいると主張していまして……」

「…………」

「その名は、“ガク・グレンフォード”だと……!」



 街の空気が一気に凍りついた。



「ふざけてるわ……! たぶん今のやり取りを見たクソ貴族が主張した感じよね」


(行動が早いな……そのクソ貴族)


 アリシアが剣に手をかける。

 グレイが『お兄ちゃんが悪い人なわけないでしょ!』と叫ぶ。

 それに応えるようにアリシアは「戦うわ」ともはや喧嘩腰で牙をむいた。


「えっと――――ひとまずアリシアは落ち着け」

「で、でも……」

「まぁまぁ。なんとかなるはずだから」

「――――ガクさんがそう言うなら……」


 セラは震えながら、俺の袖を握る。


「ガクさん……ごめんなさい、わたしのせいで……」

「違う」



 俺は静かに言った。



「お前のせいじゃない――――俺がここにいる理由はそもそも“間違ってる世界”を変えるためなんだ。これでちょうどいい。俺のスキルがどれだけのものか、ヤツらに思い知らせてやる」



 力強く言い放つ俺にセラの瞳が光を取り戻した。



「はい……!」


 そのとき、ギルドの掲示板に張り出された“指名手配書”を、街の人間が破り捨てた。


「馬鹿言ってんじゃねえ!」

「ガクさまが悪い人なわけねえだろ!」

「俺たちを救ってくれた人を、貴族の都合で追放できると思うなよ!」


 街の民たちが一斉に声をあげ、俺の名前を叫んだ。


「ガクさま万歳!」

「聖女さまとお似合いだ!」

「街の英雄だ!」


 その声の波はチュラスの街全体を包み込んでいた。




 ――――そう、俺はもう『スキル無しの追放おっさん』じゃない。




 この世界を変えうる力を持つ、《徳政令》の使い手――――。

 女神が選び、民が称え、女の子たちに惚れられる、“英雄”なのだ。


「俺たちが直接貴族の屋敷に乗り込んで手配書を撤回してもらえないか直談判して来ます!」

「わたしも行きます! ガクさんのおかげで契約を破棄できたんです。その恩返しを!」


 そう主張するチュラスを訪れていた冒険者たち。


「お、おい……貴族相手にそんな臆することなく突撃するのはやめておけ」


 まぁ、アリシアを守るために俺も貴族の屋敷に突入したから人のことは言えないか。


「大丈夫です!」

「今度は俺たちの番だ! ガクさんを守るぞ!」

「おー! 絶対に負けない!」


 一致団結した冒険者や街の人たちはそのまま貴族の屋敷に向かってしまった。


「うぇぇ……」


 ________________________________________



「俺の手配書が取り下げられたと……」

「当然よ! あんなの貴族の思いつきで貼られたものよ。取り下げられて当然よ!」


 あれから貴族の屋敷に直談判しに行った冒険者たちのおかげで俺の手配書は取り下げとなった。


 一致団結した冒険者を敵に回すとかなり面倒。

 とにかく戦闘面では冒険者の方が上なので、弾圧したくてもある程度被害を受けることは確実だろう。

 そこらへんをしっかりと考えられる貴族さまだったらしく、すぐに手配書を取り下げてくれたらしい。


(割とまともな思考しているんだから、最初から手配書を貼るなんて行為やめてほしかったんだが)


 ともあれ、騒動は無事解決された。





 夕暮れ時。

 市場での騒動を乗り越えた俺たちは、宿へ戻っていた。

 宿の一室。セラと2人きりで向き合って座っていた。


「ガクさん……わたし、本当に嬉しいんです。こうして、またあなたと出会えて……」

「俺もだ。――――セラ転生して別人にはなってしまったが、前世と同じく美人だな」

「や、やだっ……!」


 真っ赤になってうつむくセラ。

 その様子を見て、俺も自然と笑みがこぼれた。


「セラ。前世でも、今世でも……お前は、俺にとって特別な存在だ」

「……!」


 セラの瞳が揺れる。


「お前の気持ち、ちゃんと受け取ったよ」

「……ガクさん……」


 涙をこらえるように唇を噛むセラ。

 その手がそっと、俺の手の上に重なる。


「これからも、ずっと……一緒に戦わせてください。あなたの隣であなたの力になりたい」

「頼りにしてるぞ、セラ」




 ――――こうして、聖女セラとの絆は確かなものとなった。




 この瞬間、俺の中でなにかが変わった気がした。

 もう、誰にも否定されない。

 誰にも理不尽な契約に苦しめられない。


 俺の《徳政令》がこの世界の“間違い”を断ち切る。




 そして――――。




 この世界でようやく見つけた“仲間たち”と共に俺は歩き続ける。




 ――――夜。




 セラの眠る姿を見ながら、俺は静かに決意を新たにした。




 ――――セラ、アリシア、グレイ。




 この3人を絶対に守る。




 それが俺――――村上岳ガク・グレンフォードの、新しい人生の“答え”だ。

ようやく20話目まで来れました!


ここまで続けられたのも読者のみなさんのおかげです。

ありがとうございます。


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