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「そこでありがとうはおかしくないですか? 普通は『僕も好きだよ』などと返すと思いますが」
「主だから仕方がないよ」
ぐは、良くも悪くもなかなか真っ直ぐに刺してくれる子だ。
でも、今回で言えば杏からおかしくないかと言われたことの方が気になった、最近はよくにこにことしていてくれていた分、いきなり背後にナイフを突きつけられた――なんてね。
「ありがとうじゃ受け入れたことにならないかな? 慈はどう思う?」
「だから主だから仕方がないって、それにあそこで『僕も好きだよ』とか言われたら走り去っていたからよかったよ」
「え、その慈さんを見てみたいです、最近は私に対して可愛気のない慈さんしか見られていませんからね」
僕にだけではなく慈に対しても続けていくみたいだった。
にこにこと笑みを浮かべていても内もそうとは限らないというのはわかりきっていたことだけど普段がそうである分、怖くもある。
下手に言葉を重ねると余計にやられてしまいそうなこの感じ、おかしいな、友達と話しているはずなのに対応次第で変わってしまうゲームみたいな状態だった。
「な、なかなか言いますね」
「事実ですよね?」
「あーもうその目で見ないでください」
多分、こういうことが続く度に杏に対する態度は変わっていかないと思う。
だから変えてほしいなら少し抑えておくべきだ、そうすれば慈だって意地悪ではないからちゃんと相手をしてくれる。
僕が相手でもそうなのだから前々から一緒にいる杏が相手なら間違いないと断言することができた。
「主さんも気をつけてくださいね」
「な、なにをですか?」
「慈さんにばかり意識を向けていたら駄目だということです、わかりやすく言うなら私達の相手もしてくださいということです」
そのことなら問題ない。
「ああ、それなら大丈夫ですよ、そもそもこの時点でそうならないってわかりますよね?」
何故ならこうして一緒にいるからだ、言葉だけよりも信じられるだろう。
「慈さんが誘ってくれただけですけどね」
「や、逆に積極的に主が杏先輩を誘っても嫌なんだけど」
まあ、そもそも僕が積極的に誘っているところが想像できない、だから慈が言っているようなことにはならないから安心してもらってよかった。
「お友だちなんですよ? お付き合いをしていても関係ありまえんよ」
「いやいや、対異性の場合なら気をつけなければならないところでしょ」
「そうですかね、慈さんは悪く考えすぎですよ、ねえ?」
「まあ、これからはちゃんと確認をしてから誘わせてもらいますよ」
「お誘いしてくれるならそれでいいです、少し残念ですけどね」
あっちもこっちもと求めたい人間だから距離を置くことはできないけどちゃんと守りたかった。
だからそのことを言うと「ちゃんとこっちに言ってくれればいいよ」と慈が言ってくれたから助かったのだった。




