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223  作者: Nora_
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07

「結構本格的で驚いたよ」

「他のお祭りのことはテレビでぐらいしか見ないから大してわかっていないけどね」

「でも、静君とも一緒に見たかったな」

「まさか静があんなことで遠慮をするなんて思わなかったけどね」


 ずっと見てきたからこそ僕よりも気になる、というところか。


「ま、今年も見られたから満足できたよ、ありがとう」

「ううん、こっちこそありがとう、一人で楽しめるような強さはないから助かったよ」


 来年もこうして楽しめているといいな、力を貰えるとまではいかなくても見て楽しめるのがいい。


「で、どうする?」

「もう時間的に葭葉さんを家まで送って解散、かな」


 大人みたいな空気の読み方をして家に帰ったけど静君は彼女に早く帰ってきてほしいと思っているはずだし、いまも言ったように遅い時間に異性を連れ出しているということが不味いだからそうするしかないと言うのが正しかった。


「なんか静から色々と聞かれそうで嫌だな、帰りたくない」

「なら家の前まで移動しよう、葭葉さんが満足できるまで付き合うよ」


 その前に顔を見せておけば問題もなくなるうえにまだ一緒にいられる。


「はぁ、いちいち言わせないでよ、わかるでしょ?」

「でも、危ないから……」

「はい、鹿山君の家に移動ね、そうすれば危なくないよね?」

「それなら葭葉さんの家にいかないと、ご両親に許可を貰えたら……まあ」


 この調子なら時間が経過した後に彼女がなにかを言ってくることはないだろう、が、ご両親や静君なんかは別だからちゃんとしておきたいのだ。

 引っかかってしまうようなことをとにかくなくして堂々と仲良くしたい、それができれば……。


「え、私が泊まると思っているの?」

「違ったとしてもだよ」

「はは、わかった、じゃあいこう」


 あまり効果はないかもしれないけど上がらせてもらって隣にいさせてもらった、その結果、あっさりと許可を貰えてしまったことになる。

 でも、流石に二人きりは避けたかったみたいでリビングで先程買った焼きそばを食べていた静君も彼女は連れてきた。


「主ちゃんとこんな時間までいられるのは初めてだ」

「周君とはこういうことも多いの?」

「ううん、一回だけしかないんだ」

「ああ、お姉ちゃんが距離を置いていたからか」


 周君も遠慮をした結果、悪い……とまでは言わないけどなにもない日が続いた、と。

 ただ、三時間ぐらい時間をかけてちゃんと聞きたいところではあった、一つ出せばこれまで抑え込んでいたものが一気に出てきそうだからだ。

 今後に影響が出ようとも遠慮をしてほしくないというそれがある、これも友達なら当然の考えではないだろうか?


「お姉ちゃんが素直になれなかっただけなのもあるし、周ちゃんがそもそもこういうことをしないからだよ」

「周君って積極的にいきそうでいかないよね、前からそうなの?」

「うん、周はそうだよ」

「学校にいるとき以外の周君をほとんど知らないからなぁ」


 せめても少しぐらいは知りたいところではある。

 ただまあ、放課後になったら部活がない限りすぐに帰るというのは普通のことというか、小学生時代の僕がそうだったからどうこう言えることではないけども。


「私だってそうだよ」

「え、それは……不味いんじゃない?」

「前々から一緒にいてもそんなものでしょ。その点、鹿山君は格好つける癖があるとか、こそこそ影から見ているとか、たまに子どもっぽいところがあるって最近わかったよ」

「か、格好つけてはいないけどね」


 いまの僕が格好つけていることになるのなら小中学生時代のことを考えると震える。

 僕だってなにも動かずに諦めていたわけではないのだ、一緒にいられる存在を求めて動いていた。

 少し抑えて求めすぎないようにしているいまとは違うからそのときに彼女がいたら言葉でボコボコにされているところだったという……。


「どうだか、静はどう思う?」

「主ちゃんはお姉ちゃんといっしょにいたいんだと思う」

「でも、鹿山君の方から来てくれることはほとんどないんだよ?」


 多分、積極的に誘えば今度はそれについても言われるだろうから難しいのだ、難しいとか言い訳をして動かないでいる分、いまみたいに言われても言い訳はできないけど。


「ならお姉ちゃんがいっしょにいたいんだね」

「別に否定しないけど、格好つけているかどうかって話からなんでそうなったの?」

「主ちゃんは格好つけてなんかいないからだよ」


 これはこれで無理やり擁護してもらっているように見えるから情けないところではある。

 もっとしっかりしていれば彼女から言葉で刺されることも、静君がこんなことを言う必要もなかったのだ。


「わかった、格好つけているのは静だよね」

「成長して色々とわかってきただけだよ」

「ね、ねえ鹿山君、なんか最近の静っておかしくない?」

「もう来年は中学生だからね」

「それにしたって『楽しいねっ!』とか言っていた子が急にこれじゃあおかしいでしょ……」


 大好きなお姉ちゃんにしっかりしているところを見せたいのだ。

 こういうのは誰でも経験があることだし、仮に装っているだけだとしてもおかしなこととは言えないから多分、延々平行線になってしまう話だった。




「ふぁ……あんまり寝られなかった」

「それは残念だったね」

「やっぱりベッド派だってわかったよ、静は朝まで爆睡だったけどね」

「それで元気良く遊びにいっちゃったね」

「ま、こっちに変な遠慮をするよりはよっぽどいいよ」


 それもそうか。

 お祭りのときだからなんとか対応することができていただけでなにもないときにやられたら困ってしまう。


「ちょっと歩こうかな」

「参加していい?」

「いちいち聞く必要はないでしょ、一人でやろうとしているなら鹿山君もいるところで口にしないよ」

「そっか、じゃあいこう」


 普段だって運動量が足りていないから長期休みのときは暑くても動くしかない。


「鹿山君の名前ってなんだっけ?」

「主だよ」

「……って、わざとだよ、そろそろ名前呼びでもいいんじゃないかと思うんだけどどう?」


 彼女の方から言ってくれるとは思っていなかった……って、お祭りのときからなかなか積極的な発言とかもしていたから大袈裟だったかと片付ける。

 でも、嬉しいな、仲良くなれていることは確かだからこれまでとは全く違うのだ。


「いいの? それなら慈さんって呼ばせてもらうよ」

「呼び捨てでいい、私も主って呼ぶから」

「わかった」

「で、歩くことなんだけどお腹が空いたから家に帰ってもいい?」


 え……と思ったけど作ろうとしなかったのはこちらだからあまりわがままも言えない、


「え、解散は寂しいよ」


 などと考えつつも少し欲張ってしまう自分がいた。


「主が大丈夫なら外で待っていてもらう感じかな」

「ならそうしよう、ゆっくりでいいからね」

「そういうわけにもいかないでしょ」


 一緒にいたいとわがままを吐いたのはこちらなのだからそういうわけなのだ。

 とにかく外で待っていると遊びにいっていた静君が帰ってきて挨拶をした、なかなかに不思議な気分だった。

 どうやら遊ぶ約束をしていたけど親に友達が怒られて帰ることになったらしい。


「お待たせ――あれ、静だ」

「遊べなくなっちゃった」

「それは残念だったね、静がいいならお姉ちゃん達と遊ぶ?」

「でも、まだ僕も宿題が終わっていないからやらなきゃ、お姉ちゃん達と遊ぶのは今度にしておく」

「そ、そっか」


 うーん……なんか寂しい感じがする、でも、来年になったら中学生だということを考えると安心できるというそれもある。


「来年になったら『おいババア!』とか言われそう……」

「そんなことは言わないだろうけどお姉ちゃん離れをする可能性はあるね」


 本人がやりたくなくても周りを気にして変えてしまうなんてこともあるかもしれない。

 なにをどうしたって周りの目というのは気になるものだ、だからそうなっても過剰に反応してしまわないように対応できるようにしておく必要がある。


「え、そんなことになったら吐くよ?」

「はは、静君のことが好きなんだね」

「そんなの当たり前でしょ、お姉ちゃん! って嬉しそうな顔で来てくれるんだよ? 主だって弟か妹がいてそうやって近づいてきてくれたら嬉しいでしょ」

「そうだね」


 少し羨ましくもあるし、いなくてよかったと考える自分もいる。


「ま、主の場合は妹の方が嬉しいだろうけどねぇ」

「拘っていないよ、家族には優しくするだけだ」


 そのつもりで動いていても相手にいい影響を与えられるかどうかは別だからだ。


「どうだか、女の子が相手ならすぐに格好つけるからなぁ」

「いつやったの?」

「私が相手のときでもそうだし、杏先輩のときなんかはもっとわかりやすいよね」

「二人にやっているなら友達だったらそうするんだな、とはならないの?」


 首を振られてしまった、どうやらならないらしい。

 まあ、こうなってくるとこれまでの僕は、こうなってしまうから避けたい話ではあった。

 また、そう見えてもこちらからすれば相手のために動こうとできているということだからいい面と微妙な面があって忙しい。


「うわ、杏先輩だ」

「うわって……」


 まさか仲がいい子からこんな反応をされているとは思わないだろうな先輩も。

 静君のときと同じように挨拶をして出しゃばらないようにする、話を振られたら反応する程度が複数人でいるときにいい過ごし方だと思う。


「なるほどなるほど、それなら私のことも名前呼びでお願いします」

「前も拘っていましたよね、自分の名前が好きなんですか?」

「仲良しに見えるからです、杏という名前が好きなのもありますが」

「だって、呼んであげたら?」


 ここで抵抗するよりも呼んでしまった方が楽だからそうさせてもらおうか。

 この前となにかが変わったというわけではないけどね、それでも暑い中、ごちゃごちゃしてしまうよりはいいということだ。


「それなら杏先輩――」

「杏でいいですよっ」

「流石にそ――近いです、わかりましたから離れてください」

「ふぅ、今度は大丈夫そうですね、安心できましたっ」


 勢いで行動してしまうところだけは直してもらいたいところではあった。




「この前、なんとなくお部屋の床に転んでみたんですけど、急に現れた慈さんが背中に乗ってきて困りました」

「なんで慈は乗ったの?」


 そもそも急に現れたとは……ということには触れずに前に進める。

 答え次第では結局、慈はSだということになるから気をつけた方がいい。


「座布団かな……って、嘘だよ、なんとなくそうしてほしそうに見えたからやっただけ」

「「うわあ……」」


 気をつけなければならないのはこちらだ、さらっとそういうことをされたら困る。

 そしてこちらが困っていても笑みを浮かべて「どうしたの?」などと聞いてきそうな怖さがあった。


「いやいやっ、杏先輩なんて乗られているくせににこにこ笑みを浮かべていたんだよっ?」

「杏先――」

「杏ですよ?」


 ぐ、どうしてもスルーができないみたいだ。

 正直、慈がS属性であることよりも先輩の方が手強いかもしれないとすぐに上書きすることになった。


「あ、杏……だからでしょ」

「まあ、いっつもにこにこしているけど乗られたときにもそうだってことは別にいいってことでしょ」


 いや、やっぱり問題なのは彼女の方だ。

 どう言えばいいのかわからなくて固まっていると「別に乗られても構いませんけどね」と先輩が、それ見たことかとでも言いたげな顔でこちらを見てくる彼女、まあ、本人達がそれでいいならこちらからはなにも言う必要はないか。


「主さんも乗りますか?」

「そういう趣味はないです」

「そうですか、なら私は静君に乗ってもらいたいですね! 静君のためだったらそのままお外を歩いてもいいぐらいです」

「変な趣味に弟を巻き込むのはやめてください」


 守ろう、先輩から遠ざけるぐらいなら僕にだってできる。

 家の方は慈になんとかしてもらえばいいからそんなに難しいわけでもない、あの笑みが曇ってしまわないように動くのだ。


「あ、今日はここまでみたいです、残念ですがもう帰らないと」

「静がそこで寝ているのに大人しく帰るなんて逆に怖いです」


 八月後半に焦らなくて済むように最近は頑張っていたから寝たくなっても仕方がないと思う。

 ただ、少しもったいない感じもするし、まだまだ余裕はあるから緩めてもいいと考える自分もいる――というのは言い訳で、本当は最初みたいに自分が来ても嬉しそうにしてくれないことが寂しいだけだった。


「元々、そんなに遅くならない内に帰らなければいけなかったんです、あなた達といられないのは残念ですが帰らないといけません」

「はい……って、全然動く気配が伝わってこないんですけど?」


 あまりこういうことは考えたくないけど先輩のときと対僕のときで露骨に変わっていたりはしないということがまだ救いだった。


「主さんが『送るよ杏』と言うまでは動けません」

「主、そういうことらしいからさっさといこ」

「はは、わかった」

「だから『送るよ杏』と言われるまで――ああ!」


 目を擦りながら「僕もいく」と静君が言ってきたので四人で先輩の家に向かうことに、押し付けたわけでもなくおんぶをしてほしいということだったからそうしながらだったけど疲れたりはしなかった。

 寧ろ求めてくれてありがたいというそれが強い、結局、僕の中にも頼ってもらいたいというそれがあることがわかって喜んでいいのかどうかがわからなくなってしまったけど。


「はぁ、杏先輩って静より子どもだから困るよ」

「楽しい人ではあるけどね、たまにぶっ飛んだ発言をするときがあるよね」

「でも、お姉ちゃんとちがって素直だからいいよ、あんずちゃんは」


 す、すぐに言葉で刺すけど……どうしてお姉ちゃんに対してだけ厳しいのだろうか?


「余計なお世話、それに最近は素直になれていないときはないでしょ」

「そうかな? 朝なんて『今日は主が来るから勉強に集中できないだろうね』とか言っていたよ?」

「じ、事実でしょ」


 残念、最初は勉強をしていたし、途中からは寝てしまっていたからこちらのことはほとんど意識の中になかった。


「ねちゃったけど集中できないなんてことはないよ?」

「はい嘘だね、寝てしまった瞬間に説得力がないんだよ」

「でも、お姉ちゃんよりは素直になれているからだいじょうぶだよ、ね、主ちゃん?」


 き、聞いてくれるな。


「あー……」

「ちょっと主、答え次第でぶっ飛ばすから――な、なに?」

「そういうところだよ、お姉ちゃんはだめだね」


 なんか可哀想になってきたから止めておいた。

 帰りたいということだったから家まで送って、流石に今回は上がらせてもらわなかった。


「ちょっと待って」

「うん」

「……今日はまだ二人きりでは過ごしていなかったからもう少しぐらいはいいでしょ?」

「それなら他のところにいく?」


 一対一のときなら静君が言っていたようにはならないから僕からしても彼女からしてもいいというのが一つ、後は解散にしようとしておきながら考えるのもおかしいけど可能なら僕も二人きりでいたいというやつが二つ目のそれだ。

 まあ、後者の方が八割ぐらい占領している時点で、うん。


「他のところ……それなら暑いから主の家かな」

「なにもないけどそれでもいいなら」

「主がいればいいよ」


 こちらがわがままを言っているわけではないということが楽でよかった。

 だから気にせずにいられた。

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